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謎の気持ち、始まりました。

一人きりの部屋は、いつも静かすぎる。

黒いカーテンが閉め切られ、卓上ランプの薄い光だけが、私の机を照らしている。

眼鏡を外して、机の上に置く。

パジャマのままじゃ落ち着かないから、制服に着替える前に……まず、モカちゃんに会う。

ポケットから、ピンクの小さなクマを取り出す。

首のリボンが少しほつれているけど、それがまた愛おしい。

モカちゃんを胸にぎゅっと抱きしめて、頰をすり寄せる。

ふわふわの感触が、冷えた肌に温もりを伝えてくれる。

「モカちゃん、今日もよろしくね」

声に出すと、少しだけ心が軽くなる。

誰もいない部屋で、こんなことしてる自分が、ちょっと恥ずかしい。

でも、モカちゃんがいないと、本当に怖いんだもん。

この前のことが、まだ胸に残ってる。

「あのね、モカちゃん。この前、会長の仮面遊びで……漏らしちゃったの……」

思い出すだけで、顔が熱くなる。

みおの胸に飛び込んで、温かい液体が広がった感触。

タオル一枚で、みおに抱きついてあんなに近くで、みおの匂いを感じて、恥ずかしくて、怖くて、でも、どこか安心して。

「……みおに……見られちゃった……アリスのこんなに弱いところ……見せちゃった……みおの服に……アリスの……お……おしっこが……染みて……」

声が震える。

私の涙が、モカちゃんの頭にぽたぽたと落ちる。

モカちゃんのボタンの目に、涙がにじむ。

胸が締め付けられるように痛い。

「ごめんね、モカちゃん……アリス、いつも強がってるのに本当は、怖がりで、甘えん坊で、みおの前で、そんな姿見せちゃって、みお、きっと、引いちゃったよね。アリスみたいな子、嫌いになっちゃったかも……」

モカちゃんを抱きしめて、声を殺して泣く。

誰もいない部屋で、モカちゃんだけに、全部さらけ出せる。

涙が止まらない。

嗚咽が漏れる。

体が震えて、頬が少し濡れる。

「モカちゃん……アリス、どうしたらいいの、みおのこと考えちゃう。みおは、女の子なのに、なぜかこんなに、胸が苦しい、みおの胸とても温かかった。でも、アリスは、漏らしちゃった子で、もう、顔合わせられない……」

泣き疲れて、モカちゃんの頭を撫でながら、深呼吸。

涙を拭いて、鼻をすする。

鏡を見ると、目が腫れてる。

眼鏡をつけて、少しだけ隠す。

「もう、泣かない。アリスは、闇の帳簿を司る者だもん。強くないと」

モカちゃんをそっと胸に押し当てて、制服に着替える。

白いブラウスに、黒いスカート。

ネクタイをきっちり結ぶ。

スカートのポケットに、モカちゃんを入れる。

ポケットの内側で、モカちゃんが温かく感じる。

「モカちゃん、今日も一緒にいてね。アリス、がんばるから……みおに……顔向けできないけど、ちゃんと、クールに……」

気合を入れて、部屋を出る。

寮の廊下は静か。

人目がないところで、壁の出っ張りを掴んで、高いところに登る。

梁の上を渡って、窓から外の景色を見る。

風が気持ちいい。

モカちゃんがポケットで揺れて、くすぐったい。

「……ふふ……モカちゃん、楽しいね」

梁の上を歩きながら、みおのことを考える。

みおは、優しかった。

「大丈夫!」って、強く抱きしめてくれた。

あの温かさが、まだ体に残ってる。

女の子同士なのに……こんなに、胸がざわつくなんて……おかしいよね。

教室に着く頃には、いつものクールなアリスに戻ってる。

眼鏡を押し上げて、席に座る。

誰も、私のポケットにモカちゃんがいるなんて知らない。

授業中、先生の声が遠く聞こえる。

ノートを取る手が、止まる。

頭の中は、みおのことばかり。

みおの胸、温かかった。

タオル越しに感じた、体温。

優しい声で「大丈夫!」って言ってくれたこと。

「……っ」

頰が熱くなる。

慌ててノートに目を落とす。

でも、文字が頭に入らない。

(みおは……女の子なのに……アリス、こんな気持ちになるなんて……みおは、アリスみたいな子、嫌いになっちゃったかも、漏らしちゃったこと……忘れられないよね……)

胸が痛い。

スカートのポケットに手を入れて、モカちゃんをそっと握る。

モカちゃんのふわふわが、指先に伝わる。

午前はみおのことがずっと頭に浮かんでいた。

お昼になったから食堂に向かう。

中で、みおとエレナが並んで座ってるのが見えた。

二人が笑い合ってる。

みおがエレナの髪を直してあげてる。

なんか、胸が痛い。

(行ったら……だめだよね。みおに……顔向けできない……漏らしたこと、覚えてるよね……恥ずかしい……みおとエレナ、仲良さそう……アリスは……邪魔だよね……)

私は踵を返して、隅の席に座った。

一人で、ご飯を食べる。

味がしない。

モカちゃんをポケットから出して、みんなに見えないように、膝の上で撫でる。

(モカちゃん……みおとエレナ、仲良さそう……アリスは、邪魔者だよね……みおに……会いたいのに……会えない……)

納豆を一口食べても、味がしない。

ご飯を箸でつつきながら、視線が自然とみおたちのテーブルにいってしまう。

エレナがみおに何か囁いて、みおが笑う。

その笑顔が、胸を刺す。

私は急いでご飯を済ませ、トレイを持って立ち上がった。

隅の席から出るとき、みおと目が合った気がした。

……気のせいだよね。

私は慌てて視線を逸らし、食堂を出た。

午後の授業も、いつも通りクールに振る舞った。

でも、頭の中はみおでいっぱいだった。

放課後、生徒会室。

私はいつものように、帳簿を広げる。

クールに、淡々と仕事をこなす。

ルナが騒いでる。

「ねえねえ、アリスちゃん! こないだの、温泉の話、もっと聞かせてよ~!アリスちゃん、びっくりしてたよね!会長の仮面、超怖かったでしょ~!」

「……静かにしなさい、ルナ。仕事の邪魔」

私は冷たく言う。

ルナが「えー!」と膨れる。

会長と副会長の仕事も、ちゃんと確認する。

「会長、副会長。予算の計算、ここがずれています。修正をお願いします」

リリスが微笑む。

「ありがとう、アリス。君がいると助かるよ。闇の帳簿は、君の手にかかれば完璧だな」

セレスティアが鎖を鳴らしながら、にやりと笑う。

「ふふふ……アリスは本当に優秀ね。闇の仮面遊びの後遺症もなく、今日もしっかり仕事してるなんて、さすが帳簿の守護者」

私は眼鏡を押し上げて、淡々と答える。

「……当然です。闇の儀式の余興など、私の帳簿に影響を与えるものではありません」

でも、心の中では違う。

あの仮面の笑い声が、まだ耳に残ってる。

そして、思い出してしまう。

みおの胸に飛び込んだ感触。

漏らしてしまった恥ずかしさ。

「……っ」

手が少し震えた。

帳簿の数字が、ぼやける。

ルナが近づいてきて、肩を叩く。

「アリスちゃん、なんか顔赤いよ?熱でもあるの~?」

「……ない。仕事に集中しなさい」

私は冷たく言い返す。

でも、ルナは笑いながら続ける。

「でもさ、アリスちゃん、温泉でみおちゃんに抱きついてたよね! あれ、超可愛かった~!みおちゃん、優しく抱きしめてくれてたし!」

「……黙りなさい、ルナ」

声が少し震えた。

ルナは「えー!」と膨れて去っていった。

私は帳簿に目を落とすが、数字が頭に入らない。

(みお……あのとき、嫌がらなかったよね……アリスのこと……嫌いにならなかったよね……)

ポケットに手を入れて、モカちゃんをそっと握る。

ふわふわの感触が、指先に伝わる。

モカちゃんのボタンの目が、私を見つめる。

生徒会室の扉が閉まる音が、静かに響いた。

アリス・シャドウは、今日も闇の仮面をかぶって、心の奥のぬくもりを、誰にも見せない。

でも、ポケットの中のモカちゃんだけは、アリスの本当の姿を知っていた。

十一話です!ありがとうございました!

今回はアリス視点で今の気持ちを書きました!

アリスは書いてるうちに好きになったので、登場回数が多くなっちゃうかと思います、、

十二話ではエレナとみおの関係を深めていきたいと思うのでお楽しみに!

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