表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/47

07話 そういえばお風呂

ノエルはいつものように、鳥のさえずりでも朝陽の眩しさでもなく、どこか“ドロッ”としたような、“ぬるっ”としたような感覚と、布団以上の重みに目を覚ました。


「ん……うぅ……」


うめき声を漏らしながら瞼を開くと、目の前にはぷるんとした淡水色の物体が、まるで掛け布団のように広がっていた。


「……モボン?」


声をかけると、モボンは嬉しそうにぷるん、と軽く跳ねた。


「お、おはよう……って、ちょっと待って……」


ノエルは寝起きのぼんやりした頭で、目の前のスライムを見つめる。


「モボン!元気になったんだね!」


そう、なぜ上に乗っているかはさておき、昨日まで気怠そうにしていたモボンが、以前のように活発に跳ねている。それだけでノエルは胸があたたかくなった。


モボンは誇らしげにぷるぷると横に揺れる。……なんだか、ちょっと美味しそう。齧ってもいいかな?という誘惑が一瞬よぎったのは内緒だ。


次にノエルは、素朴な疑問をモボンにぶつけた。


「モボン、どうして私の上にいるの?」


普段は、ノエルが起きるまで自分のベッドでおとなしくしているモボン。今日は目を覚ますと、自分の上に――まるで毛布のように乗っかっていたのだ。


だが、次の瞬間――さらに奇妙なことに気がついた。

身体が、すべすべしている。


「……あれ?」


昨日は疲れて、夕飯もお風呂もすっ飛ばして寝てしまったはず。それなのに、汗も泥もまったく感じない。肌はさらさらで、髪も絡まっていない。


「……え、モボン。もしかして、キレイにしてくれたの?」


またぷるん、と跳ねるスライム。

上で飛び跳ねられるとちょっとだけ苦しい。でも、それ以上に驚きが優っていた。


「うわ、すごい!そんなことできたんだ!」


ノエルは素直に驚いた。身体はまるで朝風呂を済ませたように爽やかだ。モボンがそんなことが出来るなんて知らなかった。いつもはそんな状態で寝ることなんてなかったので、モボンがそんなことが出来るなんて知らなかったのだ。


そして、思い出したように部屋の端に目をやると、魔素入りの瓶が―― すべて空になっていた。


「あれ? 1本しかあげてないはず……全部飲んだの!?」


モボンは先ほどとは打って変わってしれっとしている。


(元気になってる……)


ノエルは嬉しそうに微笑む。

でも、ふと昨日のことを思い出す。


「そうだ……あの子、どうなったのかな……」


ママに聞かなくちゃ……


そう思ったノエルは、モボンの重さからすり抜け、スリッパも履かず、寝間着のままバタバタと部屋を飛び出した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ