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46話 スライムと眠る夜



「……もしかしてモボン、今日は一緒に寝たいの〜?」


ノエルは胸の上でぷるんと乗っているモボンに顔を寄せ、くすりと笑った。モボンは、人族であるノエルの言語を直接理解は出来ないが、ある程度の意思疎通であれば、従魔の証を通じて理解することができる。おそらく、一緒に寝たい、という意味が伝わったのだとモボンは安堵した。




(で…… でもこれ、やっぱりちょっと恥ずかしいです……!)


ノエルはそんな心の葛藤も知らず、むしろ嬉しそうに目を細める。


「じゃあさ、今日はここで寝よ? ほら、リーヴもおいで!」


ノエルは、ポロの予想通りに行動をした。隣の寝床にいたリーヴに声をかけ、ひょいっと持ち上げる。そして、ノエルの枕元へ優しく置いた。


ノエルの視界の左にリーヴ、胸元にはモボン。ノエルはうっとりとした顔で、幸せそうに言った。





「こうして寝るの、初めてだね〜…… リーヴもモボンもひんやりしてて気持ちい〜…… はっ! 夏はむしろ、こうして寝るのが快適かもっ」


モボンは、やや緊張気味にノエルの上にぺたっと広がる。形を変え、ほんのり薄く、“スライム布団”のようになった。以前、ノエルに浄化をしていた時と同じ状態である。



「うーん……ちょっと重いけど……気持ちいいかも……」




ノエルは目を閉じながら、ぽつりぽつりと今日のことを思い出して語り始める。


「今日の石、キラキラしてて綺麗だったなぁ……なんて名前だっけ……“聖属性に反応してた”って言ってたよね……」


まどろみの中で、声が少しずつゆっくりになる。


「明日は……魔法、出るかな…… スクロース……えへへ……」


ほの暗い部屋の中、ノエルの寝息が少しずつ静かになっていく。右と上にリーヴとモボン── ひんやりスライムに囲まれ、まるで護られるように、ノエルは夢の中へ沈んでいった。





---





── 夜更け。


部屋の中は静かに、静かに、時を刻んでいた。


ノエルの寝息は穏やかで、まるで小鳥のさえずりのように、規則正しく響いている。その胸元で、ゆっくりと動き始めたスライム…… モボンは、計画に移ろうとしていた。ノエルを起こさぬよう、慎重に、ほんの数センチずつ、ゆっくりと──


にじり、にじり。


まるで寝床のシーツのしわに紛れるように、音もなく身体を移動させていた。





目指すは、ノエルの顔のすぐそば。

そこに、何も言わず佇んでいるもう一体── リーヴの位置である。モボンの心中は、まるで忍者の任務のような緊張感に満ちていた。


しかし、その対象── リーヴはモボンが動いていることを視認しており、警戒していた。動かぬまま、じっとモボンの動きを注視している。


── 対象:モボン 状態…… 低速で移動中

── 目的:不明

── 目標…… リーヴであると推測





それに気付かず、モボンはぐにゃ、と形を緩めながら、ほんの一呼吸分の距離までリーヴに迫る。そして、リーヴに"何か"をしようとした……




── その瞬間




「……リーヴぅ……それ、わたしのだよぉ……」


むにゃむにゃと、寝言が聞こえた。




突然のノエルの寝言に、モボンは全身を震わせる。しかし、退くことはない。だが、それをきっかけとしてか、どういうことかモボンはその位置で止まってしまった。



── 停止理由…… 不明

── 思案中と判断



リーヴはそんなモボンへの警戒を緩めない。そのままいくときか過ぎ、何事もないまま、モボンは元いたノエルの胸元へと戻っていった。




静寂が再び部屋に戻る。

窓の外では、月明かりを照り返す木の葉を風がやさしく揺らしていた。スライムたちの、小さな夜の攻防は── 何ごともなかったかのように、静かに幕を閉じた



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