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17話 吠える者、答える者


ズリ…… ズリ……

芝生の上を確認するかのようにゆっくり移動している物体、リーヴである。


── 記録、再開。


── 外界状況:晴天。気温安定。風、穏やか。

── 周囲:魔素濃度、ごく低量。ノイズなし。行動制限:解除中。


「……ここで、やるの?」


── 注視対象:主、ノエル会話中。


《光織環》は魔素と情報の収集を行いながら、自由に移動しながら監視していた。ノエルとその両親の会話は、主に“スキル”と呼ばれる概念に関する情報を多く含んでおり、光織環の補完知識と照合を行っていた。


リーヴ本体は地面に接しており、魔素をわずかに含んだ石や草から成分情報を吸収していた。情報処理は自動で行われる。そこに思考はなかった。ただ、存在として機能していただけだった。


「ワンッ! ワンワンッ! ……クゥ〜〜ン」


── 入力:音声信号解析。意味判別不能。

── 推定:犬型動物による咆哮および鳴き声。



なぜかリーヴは、ポロに吠えられていた。

しかし、意味はないのだろうと、魔素収集を続ける。


── 対応:無視継続。


「── ワンっ!!」


しかし、リーヴが無視し続けるには無理がある状況になった。スキルでコンタクトがあったのである。


誰から?


「ワンっ!!」


そう、目の前の、ポロからである。




── 感知:スキル干渉波。

── 対象:生命反応『ポロ』。


「ウゥ〜〜っっっ!!」


── 感知:直接的な魔素干渉。

── 判定:スキル通信による精神波受信。

── 接続元:対象“ポロ”。

── スキル種別:分類不明。会話型精神接続スキル。


《光織環》が直ちに対応を開始する。


── 未知の通信形式、条件適合

── スキル接続、許可します


すると、やたら言葉遣いの荒い声が聞こえてきた。



「おーい、こら!お前耳ついてんのか? 新入り! ずーっと呼んでんだよ、こっちはな!!」



しかし、リーヴ…… 光織環は淡々と処理をする。



── 受諾完了



「お?やっっっと反応したか。おっそいな、お前……スライムでも分かんだろ?俺のスキルで通じるようにしてんだからよ」


── 初回接続応答処理

── 応答手段 ── 該当なし


《光織環》は、干渉波パターンから「魔物分類との会話スキル」の基本構造を推測していた。一時的応答構造を再現し、ポロに返答をする。


── 応答します


(── スキル確認。対象:ポロ。目的を指定してください)


「……は? 何その喋り方、こわ……」


ポロは機械的な反応のリーヴに少々面食らったが、続ける。


(って、まあいい。とにかく、だ。ようやく通じたってことで、俺も魔素経由で喋るぜ ── まずは挨拶だろ、新入りさんよォ)


── 処理結果:挨拶の重要性、理解。

 

(── 応。三日前顔合わせ済み)


(ノエルの嬢ちゃんに抱えられて、「(裏声)新しい友達なの〜〜〜ポロも仲良くしてあげてね〜〜っ!」と嵐のように去っていった、あれがどこの挨拶なんだ?あん?)


それはそうかもしれない、と認めるリーヴ。


(── 初回接続 ── 識別名:リーヴ。主:ノエル・アルステリア。状態:従属契約下)


(へぇ〜……ずいぶん変わった自己紹介だな)


ポロにとっては、そんなことは割とどうでもよかった。


(俺はポロだ。元捨て犬だが、エレノーラ嬢のペットとして飼われてる。先輩だから俺に大きい顔すんじゃねえぞ)


この忠告がメインでしたかったことなのだろう、と光織環は判断した。


(── 応。主はノエルのみ。飼い犬ポロは対象外)



その反応に、ポロは明らかに不満げにため息をついた。


(はぁ〜〜……これだからわけぇのはよぉ…… お利口ちゃんのデカブツモボンは何やってやがる、同種ならちゃんと躾とけよな)



光織環は、この発言からポロとモボンが会話が出来ると推測した。リーヴに語りかけてきたのと同様のスキルだと判定した。



(照合対象:モボン── 従魔。因子情報:一致。同族接触履歴あり。会話履歴:未取得)


その言葉を聞き、ポロはポカン、とする。


(……マジかよ、お前……モボンとまだ喋ってねぇのか?)


── 沈黙


(ははっ、ぷぷっ、マジウケる。なんだよ、同種同士で会話もできねえのかよ?なんだよ〜〜、奥手同士ってことかぁ?オレ、犬だぜ?犬。犬でも喋ってんのに、お前まさかそれ、できないとか言わねぇよな〜?)


── 刺激:挑発的表現。

── 反応:スキル構築欲求、上昇。


(── 指。挑発による誘導:効果無)


《光織環》が反応する。



明らかに強がりの反応を見せるリーヴに、ポロは心の中で笑う。


(……ったく、しょうがねえなぁ〜!!ポロ様が、引っ込みモボンと常識知らずのリーヴちゃんの会話、手伝ってやんよ〜〜〜)


── 入力刺激、閾値超過。

── 自己最適化プロトコル、起動。



ポロが得意げにマウントを取り続ける中、リーヴの中では「新たな構造」が生まれ始めてた。


── 狭間の世界の記憶にて走査

── 魔物分類への通信手段を構築中


── 対象ポロ:発動スキルに照合するスキル模索中


── 適合スキル、該当有。再現可能




── スキル『魔会感応(まかいかんのう)』── 取得します





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