14話 自我を持たぬもの
リーヴと名付けられたものには、“自我”というものが存在しなかった。
理由は単純だ。
それは“作られた”存在だったから。
魂がなければ、自我は芽生えない。魂とは、「個」として世界に存在することの証。だが自我とは、経験・記憶・思考といった後天的要素によって形成される、“自己意識”の外核である。
その存在は、考えることも、感じることもできない。膨大だが不活性な魔素と因子の集合体という、歪なものだった。
そう、つまり。
ノエルが拾って来た段階のリーヴは、まだ"魔物ですら"なかった。なぜ、それがスライムの形をしていたかは後にわかる。結局のところ、役立たず、という印象は概ね正しい。それにはルーツ。つまり、それ自身の存在がイレギュラーのため、過去に類を見ない。そのため、"それら"という、因子が存在しないのだ。
しかし、それが運命の悪戯により、スキルを持ってしまった。
自動ユニークスキル『光織環』
狭間の世界において、他の“光たち”が見てきた知識と記憶、それらを永い時間をかけて学習し続けた結果、定着してしまったスキルである。思考ではなく、機能として得た知識。これはもはや、彼の“頭脳”といっていい存在だった。世界の法則に照らし合わせて情報を整理し、解析し、最適化し、適応する。そのすべてを自動で行う、知識の管理者。
そしてもう一つ持つ、特異なスキル。
ユニークスキル『魂写環』
このスキルへの理解を深めるためには、“魂”の存在を知ることが不可欠だ。
魂とは、全ての生命の中心だ。目には見えず、触れることもできないが、それは確かに存在する。
3つの要素『命素』『魔素』『因子』が揃って初めて"魂"と呼ぶ。
命素とは、存在の維持を担う生命力。
また魔素とは、生命活動の燃料であり魔力。
また因子とは、その生物としての本質や記憶の根源であり精神力。
いずれか一つでも欠ければ魂の形を維持できない。
それが魔物としての魂を持ったのは、魂写環のおかげである。
このスキルには、大きく分けて3つの能力がある。
1つ目の能力、模倣。
一度でも因子に触れたことのある対象の模倣を可能にし、スキルや姿などを模倣できる。しかし、姿に関してはリーヴの質量でしか表現できない。リーヴの命素と魔素の総量は、模倣できる対象の総量と等価である。
2つ目の能力、継承。
一度でも因子に触れたことのある対象と、同じ因子を活性化させることができ、スキルや特性を全て使うことができる。不活性させることも可能。
3つ目の能力、吸保。
接触したものの魔素と構成情報を吸収する。また、素材として保存ができる。素材そのものの構成情報の汲み取り処理を光織環が行い、収蔵された素材は再構築し、変異させることが可能。
この3つの能力を纏めて魂写環であり、それを最適に制御するのが、光織環というユニークスキルである。




