12話 この子たちのために
静まり返った室内で、自然とリーヴに視線が集まる。
ノエルはそっとリーヴを見たまま、まるで何かを確かめるように、静かに手を添えていた。彼女の目の奥には、強い光があった。
「……パパ」
ノエルがアリオスに向かって顔を向ける。ためらいがちに、それでも何かを訴えるように。
アリオスはしばし黙っていたが、やがて小さくため息をつき、微笑みとともに言った。
「──分かった。そのスライム、リーヴをノエルの使役魔として正式に認めよう」
「……! ほんとに……?」
ノエルの目がぱあっと輝いた。
「でもな」
アリオスはすっと指を立てて制した。
「それには条件がある」
「じょうけん……?」
ノエルが不安そうに顔を傾ける。
「ノエル、お前はまだ魔物について何も学んでいない。昨日の行動がどれほど危険かを、何も分かっていない。使役スキルを感覚でなんとなく使っているだけだろう。モボンやリーヴを守りたいなら、まずは知識と技術を身につけることだ」
真剣な眼差しに、ノエルはコクンと頷く。
「……うん、分かった。がんばる」
その瞬間、
「だったら、魔法も教えてあげなくちゃね」
と、穏やかな声が割って入った。
エレノーラだった。
「む、魔法……?」
アリオスが眉をひそめる。
「ノエルに魔法はまだ早いかもしれん……」
「そう思うでしょ? でも、ノエルは魔素入りの水を正しく汲んでこれたのよ?」
「……!」
盲点だった、とばかりに、アリオスの目が見開かれる。
「魔素の多い水を、普通の水と見分けて汲んで来るなんて、魔素の感知力がないと無理よ。魔法の素質があるってこと」
だが、アリオスには不安が残る。
「……だが、魔法は危険だ。素質があるだけで──」
その言葉を遮るように、エレノーラは言葉を続けた。
「それはそうです。でも、素質がなければ魔法は扱うことさえできないわ。あの子、自分よりも他人のことを考えて行動してる。だったら……ね?」
エレノーラはそう断言すると、そっとノエルの背を押した。
「それに、もしまた今回みたいなことがあった時、自分で自分を守れるようにしておくのも、大事だと思うの」
ノエルはその言葉をじっと聞いていた。
そして、リーヴとモボンを交互に見て──
「……うん。この子たちのために、がんばる!」
そう言って、胸を張って笑った。
アリオスは降参、と言った顔を浮かべ、エレノーラと視線を交わし、穏やかに微笑む。
モボンは、ノエルの足元でそっと身体を揺らした。リーヴも、ぴとりとノエルの手に触れている。
家族のように、心を寄せ合いながら──




