プロローグ:光は待つ
光。
無数の光が、そこにチカチカと浮かんでいた。
その中でもひときわ輝きを放つ光があった。
この光は、ずっと待っていた。
—— 何を?
そんなの、決まっている。
この光たちの向かう先は「新たな生命」
ここは、死んだ魂が再び命を与えられるための、狭間の世界。この世界に送られて、そしてまた命となり去っていく。
つまり、光たちは新たな命として生まれる「その時」を待っているのだ。
けれど、この一際目立つ光だけは、待てど暮らせど「その時」がやって来なかった。
この光は、他の光と違い、特別であった。それは、まだ一度も生命を与えられたことがないということ。
そしてもう一つ──
この光は、他の光たちがどんな生を送り、どんな死を迎え、どんな思いを抱えてこの地にたどり着いたのか──
それを、“見届ける”ことができる光だった。
気が遠くなるほど長く、ただただ、時が流れていく。
しかし、ある時、光が増えることがなくなった。
そして、浮かんでいた光達は次々に消えていく。
そして気づけば、この特別な光だけが、狭間の世界に残されていた。
静寂。
だがそれは、長く続かない。
この光に—— 「その時」がやってきた。
いや、正確には来るはずのない、時が来てしまった。
なぜならこの光は、別の光とは違い……
狭間の世界の核となる存在だったからだ。
命となるべくして、ある存在ではなかったのだ。
これは、本来起きてはならないことが、起きてしまった物語。
そして──
これは、そんな光が「自我を持ってしまった」話だ。