9話 共有者
[視点変更:神楽坂愁]
「…ふぅ…」
絶望的とまで思えた鎌触手との戦闘は熾烈を極めたが、俺達の勝利で終わりを迎えた。
…だが、これで終わりではない。というより、この戦闘は前座に過ぎないのだ。
鎌触手は確かに強かった…が。エスト基準で見るとまだまだ弱い方。出口の門の前に居る竜が、実質的にそれを示唆している。
「…まだ、この街からは出られないのね…」
「…劇的な成長が無い限りは、恐らく出られません」
「…そんな…これ以上この街に居続ければ──」
…確実に、死ぬ。口にはしなかったが、恐らくそう言いたかったのだろう。
実際、生命線が殆どと言って良い程無いのだ。この状態があと少しでも続けば…その先は。
「【瞬間千里眼】」
鎌触手が倒壊させた建物の方を【瞬間千里眼】で見るが…やはり誰の姿も映らない。周囲を見回してみても同様だ。
…枢木は、まだ見つけられない。
「二人共、大体のデッドラインは把握出来ますか?」
俺がそう訊ねると、二人は答えてくれた。二人のデッドラインは共に34時間程度。…因みに俺のデッドラインは多分残り28時間程だ。
だがこのデッドラインは脱水のデッドライン。水さえあれば数日は引き延ばせる。その間に、脱出の突破口が開けるかもしれない。
…だったら、もう人は選んでいられない。
「…これから枢木…もしくは四月一日を探しに行きます」
四月一日と神崎だけは懸念してきたが…此処から脱出する方法を模索する為には、例え四月一日や神崎だったとしても、手を借りたい。
…ステータスは充分とは言い難いが、俺基準で言えばかなり高くなった。でもやはり、生き長らえる事は、俺だけにはどうも出来ない。
枢木を見つける事にシフトしていたが…四月一日であっても、頭を下げれば栄養くらいは摂れるかもしれない。
「…四月一日君は貴方の事を嫌っていたんじゃないの?」
「百も承知だ…だが。生き延びる為なら下らないプライドなんて捨てるべきなんだよ」
「…そう。なら、私は賛成よ」
「…そこまで言うなら」
…さて、単純計算ならば、目標の見つけやすさは2倍。
──ここからが、正念場だ。
[視点変更:漣静波]
…何度も死んだ。何度も殺された。私はこんなにもちっぽけな存在なのかと、そう思わずには居られない。
あの魔物は、はっきり言ってレベルが違いすぎた。速度は私の数十倍速く、それ以外も私の数百倍優れていた。道理で、私がこんなに死んだ訳だ。
…だけど、私は生き延びた。いや、正確に言えば何度も死んだが、神楽坂君によって何度も蘇生させられた。
しかも神楽坂君はその特筆すべき頭脳を活用させ、あの魔物を簡単に倒してしまった。
…簡単に言えば、命の恩人。窮地に陥っていた私と一青先生を助けてくれた、恩人。
…ああ、やっぱり──。
[視点変更:一青先生]
…漣さんの様子がおかしいのは、分かっている。
そもそも、【星詠眼】は【鑑定】と【未来視】を宣言無しで併用するスキル。【鑑定】で彼女の様子を鑑定する事は造作も無い。
…だからこそ、分かってしまっている。彼女の状態を、把握し切れている。
──彼女が彼に対してどんな感情を抱いているのかも。
正直、本人に言うべきだと思っている。あまりにも重く、愛憎が激しいから。
…だけど、言ってしまった方が危険なのだ…彼も、私も。
「…一青先生?どうかしましたか?」
神楽坂君が私を呼ぶ。どうやら考え事をしているのに気がついたらしい。
──だけど。少なくとも今は言う訳にはいかない…だから。
「…いえ、何も無いわ」
と、返すのだった。
[視点変更:神楽坂愁]
…何分経ったか。三十分?一時間?時計もなければ、時間を判断する日の光も差し込んでいない。
このまま口渇死を迎えるか、それとも殺されるか、あるいは生きて脱出するか。
…そんな選択肢しか、残されていない。
「〝能力確認〟」
神楽坂愁 クラス【一秒使い】
レベル78
生命力390 攻撃390 防御390
魔攻390 魔防390 魔力量390
敏捷390 隠密390 知覚390
巧緻390 幸運390 使役390
(総合値4680)
所持スキル
【言語理解】【一秒停止】【瞬間睡眠】【拡縮する秒針】【瞬間千里眼】【瞬刻の回帰】【瞬間鑑定】
【一秒鈍化】【一秒経過】【瞬間冷凍】【瞬間生成】
…流石にレベルは上がらなくなった。強い魔物が居ないからだ。居たとしても、それらは基準で言えば能面蒟蒻よりやや劣る程度。レベルが上がるとは思えない。
(…そろそろ、脱出しないと…か)
俺は、そう感じた。
飢餓や脱水もあるが…俺の能力値では、スキルに頼るしかない。スキルを頼るには魔力を消費する。その魔力は時間経過で割合回復するが、そもそも魔力量の少ない俺では一定時間の回復量より一定時間の消費量の方が大きいだろう。
レベルがこれより上がらなければ、レベルアップによる生命力と魔力の回復が見込めない。だんだんと魔力が減少し…遂には。
──だから、急がなければならない。
「グルォオオオオオ!!」
「【一秒鈍化】」
──ドガアッ!ドゴオッ!
…こんな魔物に、無駄なリソースを割く事は、したくない。
「…後どのくらい、歩き続ければ良いの?」
「知らねえよ…【瞬間千里眼】」
やはりこの広さ…そして魔物が稲麻竹葦の如く入り乱れているこの空間では、特定の人物を見つけられやしない。
今一番疲弊しているのは漣だ。基本的に漣が動いている。【高速回復・白銀】で生命力と魔力の回復が速くなっているらしいし、そもそもステータスの利があるからそれなりに闘える、との事だが…体力的には流石にキツそうだ。
だから、偶に俺と一青先生が魔物を倒している。つまりそれだけ、漣の負担が大きいという事だ。
漣を早く休ませるという点でも、一刻も早く安全は確保しておきたい。
「……」
──だが、だからこそ困ってしまう。こんな場所からどうやって抜け出すのか。
イディの言葉通りなら、俺達は絶対に抜け出せない。抜け出そうと思う事自体が無謀、愚かなのだ。
「…クソっ…」
艱難辛苦。どう頑張っても、脱出のビジョンが視えない。
…どうしたら。
「それにしても不思議ね…」
突然、一青先生がそんな言葉をぽつりと呟いた。その言葉に、思わず反応してしまう。漣も同様に。
「…一青先生、何か疑問が?」
「ああ、いえ…疑問って程かどうかは分からないけれど──」
…そして、一青先生は言った。その、核心に迫る疑問を。
「──この街って、なんでこんなに色々な魔物で溢れているのか、と思って…」
「…ん?」
「…私の中の常識で語るけど…普通同じ場所には同じ生物が群生する。その家族が近くに居るからよ。だからこそ疑問なの…」
一青先生は目の前の魔物を、漣から借りた剣で斬り刻んで、言った。
「…この魔物、この街に転移されてから直ぐに倒したの」
「………」
「此処から軽く100kmは離れていた筈よ…神楽坂君も、何体か倒した魔物の中に、同種の魔物が居た筈よ?」
…確かに、居た。例えば紅ゴリラ…最初に鎌触手がフレンドリーファイア?したデカい個体と、俺がスキルを駆使して倒した小さい個体。
確かに家族…そうでなくても同種、同胞なのだ。徒党を組んで群れていてもおかしくない。
…だが、それが無い。俺の記憶の中では狼みたいな魔物が群れを組んでいたが…それは〝習性〟。決して信頼し合っていたわけでもなければ、連携は取れていれど獲物の譲り合いも無いように見えた。
「…そう、ですね」
「…本当、良く分からないのよ。これじゃあまるで、出鱈目…ただ何者かの意図に沿って…いや、ある程度の意図はあれどほぼ無作為に置かれただけの、プログラムみたいな…」
「……!」
…俺は、気が付いた。
良く考えれば分かる事だったのに、この環境がそうさせなかったのか。あるいは俺の思考能力が不充分だったのか。
──でも、だとしたら…馬鹿げてるな。あまりにも雑で、とてもじゃないが完璧な牢獄とは思えない。
「…神楽坂君?」
「──方針変更です」
「え?それってどういう──」
…と、その時。
《こう…?かな…ああ!やっと繋がった…良かったぁ…》
「!」
「…この声は」
突然、脳内で鳴り響いた声。突然過ぎて驚いたが…この声は。
「…四条さん…!?」
四条霧菜…Fクラスの生徒…つまり〝救世主〟の一人。
…成程…そういう事か。
《今、私のクラス【共有者】で思考共有をしてるんだけど…誰か、応答出来る?》
…そう、四条の覚醒付与で得たクラスは【共有者】。その名の通り、ただ共有するだけの存在。
…ぶっちゃけ生きられるかどうかすら危うかったが…なんと生き残っていた。まあそうか。俺が生き残っているからな…基本的に生き残れるだろう。この環境に、余程恐怖しない限りは…な。
…そして四条が使っているスキルは、恐らく思考共有に近い能力だ。複数人の脳内を共有し、会話を可能にするスキル。
…いずれにせよ。ついさっき俺の中で出た方針は後回しとなりそうだ。
《…四条、聞こえるか?》
取り敢えず、四条に届くようにと祈り、念話を試みる。
《…!うん、聞こえるよ!この声は…神楽坂君かな…?》
《そうだ。これは四条のスキルか?》
《うん。私の【指定思考共有】ってスキルだよ…!》
…【指定思考共有】…か。覚えておこう。
《成程。それで、これはFクラス…救世主の皆に共有されてるか?》
《うん!ちゃんと全員、生きてるよ!》
…その言葉に安堵したのは、一青先生だ。
《…生存者が判るのも、四条のスキルか?》
《まあ、そんな感じかな…》
…生存者が判る…つまり、救世主で最も重要な存在は四条か。四条のスキルは情報収集と指揮…その両方が可能。全ての状況・状態を把握し、的確な指示を出せるのが四条。
…四条なら、あるいは。
《それで、神楽坂君の周辺の現状はどういう感じなの?》
…これは、確実に言った方が良いな。
《──俺は現在、偶然鉢合わせた漣と一青先生と一緒に行動している》
…そして、俺は事細かに話し始めた。エストの大凡の広さ、魔物の強さ、強敵、脱出口…それを説明するために、俺のスキル【瞬間千里眼】の説明まで。
正直、この会話は生きている救世主なら誰からも聴かれていると言っても良い。勿論、神崎や四月一日もだ。
…下手に目立って情報開示をすれば、何か杭を打たれるかもしれない。神崎は理性的だが…四月一日に関しては感情的。衝動に突き動かされるから、何をされるかわかったもんじゃない。
…だが、【瞬間千里眼】は戦闘に不向きなスキル…言っておいても、大したダメージは無いと判断した。
《…成程…》
《だから、はっきり言って飲み食いをせずに脱出は無謀だ…魔物の肉は食えないらしいしな…》
そこら辺は、一青先生から聴いておいた。返って飢餓になる…ってな。
《…枢木や四月一日には繋がっているか?》
《え?うん…繋がってるけど…》
…よし。
《枢木、四月一日…念話に入ってこられるか?》
…勿論、入ってこられるとは思う。俺が入ってこられているから…入り方は知らないが、恐らく意思さえあれば入れるようになっている筈…。
………。
《…こう、かな…》
「…!」
脳内に、また違う声が響く。
《…お!出来た…!神楽坂君、僕に何か用?》
…繋がったか…。
《簡単に言えば、お前の力を貸してほしいんだ》
《…成程。大体は分かるよ。僕のクラスだね?》
…流石、話が早い。
《僕のクラス…【調理師】なら、確かにそれが出来る。現に、僕はこれまでに魔物を調理して食べて生活していた》
…となれば、俺の予想は当たりか。枢木が、エスト脱出までの生命線を握っている。
《…ただ、それには魔物が必要となるよ。流石の僕も、無機物の調理は出来ないみたいだしね》
《…成程》
《それと、魔物の肉には相当な魔力が蓄えられている。食べ過ぎると魔力暴走を起こす危険性がある…一度体感したよ。一応その魔力を抜く事は出来るけど時間が掛かるから、出来ればやりたくないかな》
…色々と条件があるみたいだ。まあ、この世界の法則は、地球の法則と全く以て異なる。それだけ法則や制限が多い世界だと認識すれば良いか。
《了解だ…四月一日は…出ないか》
まあ俺の命令に従うような奴では無いのは重々承知だ。そこら辺は懸念していない。
《…四条、皆を一つの場所に集められるか?》
《そういうスキルは無いけど…集めるくらいだったら、皆の位置が分かる【位置座標共有】ってスキルがあるから、それで大体は集まるんじゃないかな?》
…成程。そういうスキルもあるのか。
ただ、そのスキルは恐らく座標を共有するのみ。一カ所に集まるには、そこから移動が含まれるだろう。
…それまでに、何人生き残れるか…。
《魔力消費は少ないし、常時発動くらいなら何も支障は無いと思うよ》
《…成程…なら、お願いしても良いか?》
《うん!分かった!》
…そして、数秒後。
「…!」
俺の脳内に、救世主全員の位置座標が表される。脳に直接情報を埋め込まれて気分が悪いが、そこは気にしない。
《…取り敢えず私の所に集まって欲しいんだけど…行けそう?》
…四条の位置は…少し偏りがあるが、大体救世主全員が、四条を中心に等距離に居た。これなら、大体は集まれるだろう。
《…俺は行ける…が。他の奴等の状況にもよる…負傷している奴が集まるのは、少々難しい》
《そっか、そうだよね…でも、負傷してるのは三人くらいだけど…》
…負傷者の状況も判るスキルか。中々便利だ。
《…なら、負傷者は近くのクラスメイトに助けてもらう形で行ってくれ。負傷者が固まっている場合は…漣に行かせる》
「え?」
…なんか聞こえたが、気にするな。
《負傷者は固まってないから大丈夫だよ!》
《…そうか》
…固まっていた方が色々と簡単なんだが…そう上手くは運べないか。まあ、この世界に来てから上手く行った試しが、幾つあったか。
生きる為に策を生み出し、実際に成功させる…それだけで上手く行ったと言えるだろうが…その根本を見てみると、上手く行った、なんて言えるわけがないからな。
《じゃあ切るね…また後でね!》
《ああ…枢木も、気を付けろ》
《うん、了解》
──そう言って、念話は終了した。依然として、位置情報の共有はされているが。
「ええっと…神楽坂君、今からは…」
「…一先ず、来た道を戻るしか無いですね…幸い近いので」
四条の位置座標は、然程遠くなかった。精々30km程度。漣なら数分で到着が可能なのだ。一青先生でも十数分あれば到着出来る。
…まあ俺は一時間程度かかるだろうが。
「【瞬間千里眼】」
…位置情報の共有により、四条の居る方角が分かった。つまり【瞬間千里眼】で見えるのではないか。
…現状は障害物があると見えないスキルではあるが…見えるか…?
「…!」
…見えた。見覚えのある…茶髪が特徴の女子生徒。
…念話越しでは元気そうだったが…かなり疲弊しているらしい。立っているだけで、足許が覚束なさそうだ。
…そうか。俺達は取れていたが…他の救世主は、睡眠が取れていない。魔物との戦いが続き疲労が溜まった身体を休める手段が、存在しないのだ。
「…さっさと行った方が良いな…」
「…神楽坂君?」
「…早急に四条の所へ向かいましょう」
「…四条さんが、居たのね?」
「ああ…けど状態は良くなさそうだ。あのままだと結構早い内に死んでしまう」
「…!大変…!早くしないと…!」
…早くしたいのだが…俺の敏捷値では、どうしても遅くなってしまう。体力も無いし、流石にそれでは間に合うかどうか。
…そもそも四条のクラスは【共有者】…戦闘系のクラスでは無い。先までのスキル以外で共有に関するスキルを挙げるならば…状態の共有、能力やスキルの共有等だろうか。
…戦闘に使えるのは能力やスキルの共有だろうが…レベル1時の四条のステータス画面にはそういうスキルは無かった。あれからどれだけレベルを上げたかは分からないが…無い事は考慮しなければならない。
…だから、この場合。
「漣、四条を助けに行ってやってくれ。アイツが次に魔物に見つかったら、ヤバいからな」
…と、俺はそう漣に提案したのだが…。
「──だったら、私が神楽坂君と一青先生を担げば良いんじゃない?」
…と、そんな事を提案された。
「…お前、本気で言ってるのか?」
「私はその方が良いと思うのだけれど?それともこの方法は気に食わない?」
「いや、そういうわけじゃないが…」
「一青先生はどう思いますか?」
「──私は…その方が、良いかも…」
「…だったら、決まりね」
「はぁ…そうか」
…俺の最初の提案は何処へやら。気が付けば漣が俺と一青先生を担いで四条の許へ向かう形となった。
「ほら、さっさと掴まって」
…一青先生は漣のその言葉で背負われるが…俺は男なんだけどな。流石に合法的に女子に触れられる状況を作られても、怖いものは怖いんだが。
「何をしてるの?」
「あーはいはい、乗るから…」
…急かされるのは好きじゃないな。
──そうして、俺は漣の背中に乗っかった…一応振り落とされないように、しっかり捕まっておかないとな。
「……」
…少し力強過ぎたか?漣が顔を赤くしてプルプルと震えているんだが…。
だがこれくらいは力を入れないと、俺は漣のスピードで振り落とされるからな、我慢してもらわないとな。
「…そ、それじゃあ、行きます」
…そして。
「うおっ!?」
「きゃ!?」
──漣は全力ダッシュで、四条の許へと一直線に駆けていく。
[視点変更:神崎悠斗]
「…アイツ等…頭湧いてんのか?」
俺はつい先程、脳内で口煩い会話を聴いていた…のだが。
どうにも、取るに足らない内容だった。
「何が合流だ、何が協力だ…それこそ雑魚の思考でしかないだろ…【局所的筋力増幅】」
ドゴオッ!!
これ程の力があって、何故協力しなければならない?何故この力をアイツ等みたいなおまけ如きの為に使わなければならない?
どうにも、奴等は俺を道具か何かだと勘違いしている…普通逆だ。奴等こそが俺の手駒だと言うのに。
「〝能力確認〟」
神崎悠斗 クラス【勇者・蒼白】
レベル26
生命力2600 攻撃6760 防御2600
魔攻6760 魔防2600 魔力量3896/3900
敏捷6760 隠密2600 知覚2600
巧緻6760 幸運2600 使役2600
(総合値49140)
状態:攻撃値補正+30%、魔攻値補正+30%、敏捷値補正+30%、巧緻値補正+30%、
所持スキル
【言語理解】【鑑定・蒼白】【勇者の剣・蒼白】【蒼ノ剣】【干渉耐性・蒼白】【局所的筋力増幅】【全魔力適性】【水魔力超適性】【高速回復・蒼白】【魔力覚醒・蒼白】【疾走・蒼白】【断罪一閃・蒼白】【勇者ノ蒼炎】【陰影・蒼白】【蒼ノ弾丸】
…現在剣は出していない。これ以上バフがあっても無駄だ…この時点で、俺に勝てる者など居る筈がないからな。
先程レベル25に達した時に手に入れたスキル、【陰影・蒼白】…俺の影の分身を作る能力がある。しかもステータスは俺のステータスに比例する。最強ステータスが俺である…という事はつまり、俺の分身も俺に次ぐ実力を有しているという事に他ならない。
圧倒的存在が作る分身も圧倒的。そうでなくては、この世に不条理が生まれてしまう。
「グゥルルル!!」
ドゴオッ!!
「こんな奴にスキルを使う気すら起きなくなったな」
こんな雑魚に無駄な魔力消費はしたくない…【高速回復・蒼白】で魔力は30分程度で全快するが…コイツ等程度に、俺が毎回魔力に頼っているだけ、なんて思われては心外だからな。しっかりと、どの分野でも最強だと言う事を証明してやらなくては、理解すら出来ないどうしようもない連中だ。魔物共も、おまけ共も。
…しかし、腹が減ったな。喉も渇いた。魔物を食う気にもなれん。【水魔力超適性】があるが…そもそも使い方が分からん。更に眠い。
「…ッチ、イディの奴、俺に魔法の使い方すら教えないとは…」
教えるべき事を教えないでどうするんだ。俺は救世主だぞ。
「…クソ。苛立ちが収まらねえ」
この俺を苛立たせるなんてふざけた奴等だ。そもそも何故この俺に、もう少し便利なスキルを与えなかったのか…いや、そもそもなんで俺のクラスが一つしか無いのか。これではまるで、おまけの奴等と同等に扱われているじゃないか。
「…ふざけやがって」
アイツ等如きに、俺を見縊るとは…極刑確定だ。クソみたいな幻想を見ている奴等に、現実を叩き付け、その上で俺に服従させる。勿論男は要らないから、殺す。女には面従腹背ですらも許さぬ調教をしてやる。
…だったら、先ずは食糧問題の解決…。
「──ッチ、結局はこうなるか」
[視点変更:神楽坂愁]
「…そういえば」
俺は四条の許へ到着するまでの途中で、質問をする事にした…漣にな。
「何?」
「お前って、なんでFクラスになったんだ…?」
漣がFクラスになった大体の理由は把握している…が、それでも気になる事がある。
「お前…実は、そこまで話すのが苦手って訳じゃ無いだろ」
「……」
沈黙する漣に、俺は続ける。
「こうやって話してみて分かった…お前は無口でも無ければ、コミュニケーション能力になんら問題がある訳でも無い。だから普通、コミュニケーション関連でFクラスに送られる筈が無いんだ。だけど実際、お前はコミュ障としてFクラスに送られた…この、問題児達のクラスに…一青先生、漣がFクラスに送られた原因って──」
「えっと…私はコミュ障だと聞かされたけど…」
「…そうですか。だったら、それが発覚した時期は?」
「えっと…2年の、5月だったかしら?」
「……成程」
…確信した。
「2年の5月まで、コミュ障だと発覚しないのは不思議だ。ましてやFクラスに送られるまでのコミュ障…普通なら有り得ない」
Fクラスに送られる生徒は、〝決定的に〟、〝救えないレベルで〟何かが欠如している生徒だ。漣は成績は学年でも上位に入る、運動もかなり出来る…そして為人もそれなり。どれもこれも、Fクラスに送られるような人間ではない。
そんな奴が、突然コミュ障だと判断される理由など、一切見当たらない。
俺がFクラスに送られた理由は〝教師の機嫌を損ねる程に出来すぎていたから〟という、例外的な理由…つまり、欠点が無いという欠点を抱えていると判断されたからなのだが…漣に至っては、そうではない。
「──なあ漣…お前は──」
…と、俺が訊ねようとした瞬間だった。
──ドカァアアアアン!!
「「「!!?」」」
突如、途轍も無い爆発。音のした方向は正面…つまり…進行方向。
「──ッ、急いで、漣さん!!」
「は…はい…!【勇者の双剣・白銀】…!【疾風迅雷・白銀】…!」
一青先生が逸早く予感を察知したのか、俺より早く漣を急かした。そして漣はスキルを使いスピードを上げる。
…もしも…もしもである。この爆発の震源地が、四条の位置座標だったとしたら?
…四条の近くで、これ程の爆発が起きた事となる。つまり…どういう事か。それは容易に想像がつく。
だからこそ、漣はスキルで敏捷値を底上げした。
漣の現在のレベルは32。基礎敏捷値は9600…但し、【無尽蔵・白銀】のスキルで常時敏捷値補正が+10%、更に【高速回復・白銀】の敏捷値補正+50%の条件を満たしている為、敏捷値は15360。そこに双剣の敏捷値3倍効果と新たなスキル【疾風迅雷・白銀】の重ね掛け。
【疾風迅雷・白銀】は敏捷値補正を+100%するらしい。つまり計算が正しければ、今の漣の敏捷値は…74880。
「──ッ」
「──きゃあっ!?」
突然の速度の上昇に、振り落とされそうになる身体を何とか堪え…そして。
「神楽坂君ッ!」
「──ッ、【一秒停止】ッ!」




