御仏のアンダンテ
ジャズを聴く。木魚が鳴る。
愛花ちゃんは、涙を溜めて、白薔薇を供える。
信仰が深いことが、
叔父さんの何よりの救いだった。
叔父さんは全盲だったが、
ミサで、圧巻のゴスペルムードだった。
愛花ちゃんには、飴しかくれなかったが、
愛花ちゃんは、叔父さんが大好きだった。
必要性の悪さえ、否定しなさい。
叔父さんを忘れない。
伯父さんは金持ちだが、愛花ちゃんは懐かない。
ハワイに伯父さんが連れて行ってくれたときも、
叔父さんにべったりだった。
鎌倉で初めて仏さまを観たとき、
叔父さんに頭がボコボコだよ。
と言った日、伯父さんがくれたオルゴールを
叔父さんにあげていいか聞いた。
叔父さんの部屋でみんなで、
星に願いをのオルゴールのメロディーに合わせて、
叔父さんが歌うゴスペル調の響きは、
ママも伯父さんも泣いた。
信じなきゃだめじゃん。
愛花ちゃんは、ビオラで、
ジーザスをひき鳴らし、
叔父さんのいた時間を想う。