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02.新快楽の発見

 古典的な見解によれば、イタリアの文化はアンリ2世の妃カトリーヌ・メディシスによってフランスに伝えられた。

 ブラントームのブルデイユは『優雅な女性たちの人生Vies des dames galantes』において、フランスにおける女同士の性的な関係はイタリアのとある貴族女性dame de qualitéによって持ち込まれたと主張しているが、明らかに彼女を仄めかしている。

 この著作は古代と16世紀における類例を幾つも示している。ここでは古代の話は省略し、以下に当世の例を記述する。


 ローマの老娼婦イザベッラと深い関係にあった美人の娼婦パンドーラは、アルマニャック枢機卿Georges d'Armagnacsとの仕事を終えると、いつものようにイザベッラと一緒に寝て、声を抑えきれないほど乱れ、相手を求めたという。


 また彼が故クレルモン・タリアールから聞いた話によれば、アンリ3世時代のトゥールーズの邸宅で、高貴な女性二人がドレスをたくし上げて下着caleçonを下げ、一方がもう一方の上に寝そべり、鳩のようにキスし合い、身体を触り、擦りつけ、男の真似をして激しく動いて淫行した。二人は一時間ほどで疲れ果てて休憩に入るが、それから何日もこの遊びを同じように続けたという。


 そして前部分のラウドミアとマルゲリータの関係もそのうちの一つで、ブルデイユは彼女達が淫乱lascivetéな関係であることを隠すために神聖な愛saint amourと言い換えていると主張した。


 ブルデイユはこのような女同士の淫乱な関係において、ディルドの使用と貝合わせgeminos committere connosに言及し、ルーヴル宮殿で所有物検査が行われたときに女性の部屋で発見された4本のディルドgodmicyについて触れる。

 それを使用した二人は未亡人と既婚者の女だった。女たちは挽課を名目に二人きりで部屋に入ると、女の片方がおまる(※蓋付き携帯便器の備わった椅子)に座った。そしてもう一方の女が彼女を激しく攻め立てたため、おまるが壊れてドレスと素肌に汚物をひっかけてしまい、宮廷の笑い話になったという。

 いずれの例も高い地位の人間あるいはそれに近しい人物の例であり、庶民と違って彼女たちが裁かれることは無かった。あるいはブルデイユが聞きかじった噂話だった。彼は最終的に、女同士の関係が維持されていようとそうでなくとも異性と繋がるものだと結論付ける。



 他の性的(※ともとれる)な作品として、ピエトロ・アレティーノによる散文『ラジオナメンティRagionamenti 』では、女同士でディルドを使って交互に役割を交代しながら遊んだ話が書かれている。

 パルミジャニーノが描いた『ディアナとアクタイオンの伝説』のフレスコ画には、裸体で互いに見つめ合う二人のニンフが描かれている。

 またバルテル・ベーハムの女風呂の絵画の一つには、他の女の下腹部を手で触っている女が描かれている。デューラーも女風呂をいくつか描いているが、そういったものはない。

 その他に『ガブリエル・デストレとその妹』という妹が姉の乳首を摘まんでいる絵画もあるが、このよく知られた絵画は一般的には二人の性的な関係を示すものではなく、妊娠を象徴していると解釈される。



 さて、中世の頃から用いられていた上記のような快楽の他に、ルネサンス期のイタリアでは新たな快楽の手段が発見される。

 それは解剖学によって明らかになった女性器の部位である陰核に関係する。

 そこは一般的に多くの神経終末が集中しているため最も刺激に敏感な部位であり、胎児の頃に遺伝子に基づいて男性の泌尿器と分化する部位のため性的刺激には類似性がある。同様に海綿体が充血することで膨張して隆起し硬化する。しかし特定の機能が無い点と高度な神経構造によって暫定的に、この器官は快楽のみを目的としていると見做される。

 その器官は古代世界やイスラム世界では知られていたが、中世ヨーロッパにおいては認知されず、また少なくとも古代世界においては女同士の関係に関与するものではなかった。


 陰核は1545年にフランスで女性の正式な器官として再発見されたときは排尿器官と見做されていたものの、1550年代のイタリアで快楽の器官であると発表された。そして1573年にはフランスの優れた医者アンブロワーズ・パレによって、(※稀有な可能性として)女同士の関係に肥大化したそれが結び付けられるようになった。

 その結果、基本的にそれが想像上においてのみ実行できるものだとしても、それまでほぼ不可能とされてきた行為についての理論上の実現性に基づく正当性を以って、女同士の関係性を非難したり裁くための材料として機能した。

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