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短編

王子との結婚をなんとしてでも回避したい話

作者: 猫宮蒼



 乙女ゲームの悪役令嬢に転生した。


 もうこの一文だけでほぼ全てがおわかりだね? となるんじゃないかと私は思っている。


 そもそもの話、当時の乙女ゲームには悪役令嬢が出るような作品はあまりなかった。

 けれども、その他の創作物でヒロインを虐める悪役令嬢の存在が台頭し、そこから断罪される悪役令嬢の反撃に出るパターンだとか様々な作品が世に出るようになってから、乙女ゲーム界隈もその設定を逆輸入したのか、ぶわっと増えたのだ。悪役令嬢が登場するゲームが。


 今までの乙女ゲームはいても精々ライバルキャラ、といった程度で別にヒロインに陰湿な嫌がらせをしたりするような人はいなかったけれど、悪役令嬢は違う。

 最終的に断罪されるキャラであるとなれば、それはもう人としてどうかと思うような陰湿陰険根暗と三拍子そろった嫌がらせをするのである。時として嫌がらせだとか虐め通り越してそれ完全に犯罪ですやん、みたいなものも。


 さて、そんな悪役令嬢に転生した私である。


 えっ……ヒロイン虐めないといけないの……?


 とはいえ、ヒロインを虐めるのは基本的に自分の婚約者でもある王子――攻略対象である――に手を出された時だ。それ以外では別にヒロインを虐めたりしていない。


 それ以前に、実はまだ王子と婚約が成立していない。

 転生した事実に気付いたのはゲームが始まるお年頃になってから、とかではなく普通に幼少期である。これに関して私は思わずガッツポーズをするところであった。


 何故って。


 ゲームとしてなら王子のキャラは嫌いじゃないけれど、実際恋愛しろって言われたら厳しい。

 ほら、二次元ならドSキャラとか大好き罵られたい、って乙女は一定数いるけど、現実の野郎にそんな事言われたらまぁ潰すよねどこをとは言わないけど、みたいなね?

 二次元のキャラなら殺し屋だろうと海賊だろうと盗賊だろうとマフィアだろうときゃー素敵カッコイイー! って言えるけど、実際のその手の職業の方にリアルでキャーキャー言えないよね?

 仮にきゃーって出たとしてそれは黄色い悲鳴ではなく命の危機的な悲鳴ですよ。むしろ怖すぎて悲鳴すら出ないわ。


 ゲームだと王子の事、割と嫌いじゃないんだけど、それはあくまでもヒロインだったから。

 乙女ゲームで、最終的にフラグをきちんと立てていけば最終的にくっつくのがわかってるし、好感度を最大まで上げたら王子はヒロインの事そりゃもう大事にしてくれるし、ヒロインからすればまさに約束されし幸せルート。ちょっと面倒な性格していても、ヒロインには甘ったるいくらいの愛をくれるから、だから王子の事は嫌いではないわけで。


 他の攻略キャラを狙ってる時は別に王子が邪魔してくるとかないし、ヒロインからすれば自分を大切にしてくれるか、そうでなくても無関係で害があるわけでもない相手。



 ところが、婚約者になる悪役令嬢からすると、王子というキャラはどうだろうか。


 はい、婚約者がありながら他の女に現を抜かす駄目男ですね。最低限せめて筋を通せばまだしも、それをしないが故に悪役令嬢のメンタルを不安にさせて、あまつさえそのフォローをするでもなくヒロインに嫌がらせをするようになっても特に手を打つでもなく、最後の最後になってから重い腰を上げ今更のようにこちらを責めてくる後手屑野郎ですね。

 まぁ婚約者がいるっつってんのに王子に言い寄るヒロインもヒロインだけどさ。


 ゲームやってる時は自分がヒロインなものだから、まぁヒロイン目線で悪役令嬢は悪役であるがゆえにそういうもの、って感じだったけど、悪役令嬢の立場からすればたまったものではない。

 王子と結婚する未来があるせいで、王妃教育とか面倒なあれこれ背負い込んだりしてるのに、王子はその間ヒロインといちゃこらしてるわけですよ。普通に考えて「死ぞ」って感じだし「首を刎ねよ」とか言いたくなるよね。


 正直悪役令嬢目線で見ると王子とヒロインって割れ鍋に綴じ蓋って言葉がよく似合う気がしてくる。


 だからこそ、まだ王子との婚約がされていないという事実に私は内心で狂喜乱舞したのである。


 何せこの悪役令嬢、身分は勿論だがスペックも相当高い。天は一体どれだけ与えたのかと言いたくなるくらいなのだ。今でも可愛らしいけれど、将来は美人確定している見た目。優秀な頭脳……まぁこれは前世の私という人格のせいで到底そう思えないけれど、それでも前の人生よりも物事を理解する速度が上がっている気がする。コツコツと頑張ってお勉強すれば中身が私というのを差し引いてもゲームの中と同じくらい優秀になれると信じたい。


 ちなみにこのゲームの設定で、悪役令嬢実はもう一人婚約者候補がいたとされている。

 そしてそのお相手は、公爵家のご令息であった。


 未来の公爵様は、攻略対象ではない。


 けれども、ビジュアルはイケメンであったし、能力的にも未来で公爵様やってるので勿論優秀である。

 ただ、王子のやらかしに限った話じゃないけれどかなり貧乏くじを引く事があるようなのだ。

 まぁ、優秀な人ってそういう貧乏くじ引く事あるよね……無能に尻拭いさせても更なる混沌を招くだけだからね。仕方ないね。


 けれどもだ。


 考えてみよう。


 もしこのまま私が王子と政略結婚する流れになった場合、ゲームの流れに従う事になる。

 その場合、ヒロインが王子を狙って王子と恋に落ちた場合、私の未来って割と真っ暗なわけで。

 ヒロインを虐めなかったとしても、私は二次創作も嗜んだ事がある。

 仮に自分がやらずとも、私に濡れ衣を着せようとする第三者。偶然その場に居合わせただけで、何もしていなくとも何故かその場にいた私のせいになるという理不尽展開、もっと言うならもうどうしようもない原作への修正力。

 結果としてやってなくてもすべての罪をひっかぶる可能性。


 もし、ヒロインが王子を狙わなかったとしてもだ。

 二次元ならともかく三次元の王子の事を私は好きになれる気がしない。


 二次元のキャラなら推しだのなんだので面倒な性格してようともその欠点ごと受け入れてただろうけれど、三次元の人間相手に何もかも全てを受け入れるのは無理が過ぎる。

 お互いに歩み寄って良好な関係を築ければどうにかなりそうだけど、そうじゃなかった場合地獄である。

 一度嫌いになったら、嫌いな部分ばかり目について中々良い面には目がいかないものだし。

 仮に良い面に目を向ける事ができても、今までのマイナス分が綺麗さっぱりなくなってプラスになるかっていうと……ゼロになってるのが精々だ。


 もしそうなったら、私将来的に国王になる王子の事を支えていくの、キッツイだろうなぁ、と思うのだ。


 前世の記憶が蘇ったりしなかったら、貴族令嬢として国に仕える者として、そういうもの、で受け入れてたと思う。だってそれが普通で当たり前なんだから。

 けれども前世の記憶のせいで、今までの当たり前がそうじゃなくなってしまった。


 貴族である事を放棄するとかまではいかない。国を支え良い方向にする、そのために自分ができる事はするっていう考えはある。ただそこに、好きでもない相手を支え続けるという考えがなくなってしまっただけで。

 現実の王子がゲームの中の性格と同じに育つのであれば、愛情を持つっていうのが私的にとっても難しくなってしまう。



 それならば。

 周囲の連中の尻拭いをする事になりがちな不憫な公爵様を支えていく方がまだ頑張れそう。


 攻略対象ではなかったけれど、ゲームの中で関わらなかったわけではない。

 恋愛に発展しないけれど、会話がなかったわけじゃないのだ。



 というわけで、私は両親にそれとなく王子より公爵家の令息に興味があるよう態度に出した。

 高位貴族は割と早い段階で婚約するのだけれど、まだまだ幼い私に公爵家から既に婚約の打診が来ていたのである。王家はまだだ。

 とはいえ、ゲームでは確かに私が王子の婚約者になっていたけれど、別に私以外に婚約者になれそうな令嬢がいなかったとかいうわけじゃない。他にも婚約者になっても問題のないご令嬢はそれなりにいる。

 王家から婚約の話が出た時に、私がその時点で王子に興味を示したからトントン拍子に婚約者になってしまっただけで。


 そんなわけなので。

 ここで私は王子ではなく未来の公爵様を選んだ。

 王子の婚約者には他の家のご令嬢に決まったらしい。後日そんな話を聞いた。



 これで、原作から外れたので私の悪役令嬢としての未来は消えたわけだ。


 とはいえ。


 これで全てが安心だね、と言えるわけもない。


 さっきも言った気がするけれど、私は二次創作なども嗜んでいた。

 二次創作、つまりは原作に無い場面を想像するようなものならまだしも、原作の展開に納得がいかず展開を変えたりするようなのだってあるわけで。

 あとは闇の深いオタクによる、推しは不幸のどん底で足掻いているのが好き、みたいなのとかね!?

 幸せになってほしいけれど、それはそれとして絶望もしてほしい。そんな欲張りバリューセットで地獄山盛りにしたみたいな話だっていっぱいあったんだ。


 ともあれ、私は原作ルートから外れたと言えなくもないんだけど、じゃあ今後一切原作と無関係でいられるか、ってなると断言はできないし確定もない。


 もしヒロインも私と同じ転生者で、しかも原作知ってる勢だとしたら。

 私の婚約者が王子であると思い込んだパターンでこちらに冤罪ふっかけてくるだとか、はたまた婚約者が王子でない事でお前も転生者ね! となっていらんいざこざを起こす可能性もあり得る。


 恋のライバルに勝手に認定するだけであればまだいい。

 けれども。


 原作至上主義みたいな相手だったら私が王子の婚約者でないというだけで親の仇かってくらい敵意を持たれるかもしれないし、カップリング厨で王子と悪役令嬢こそ至高、みたいな相手だった場合、何が何でもくっつけてこようとする可能性もある。


 原作の展開だけならともかく、二次創作は人の想像力の分だけ無限にあるからね……展開が。


 そういった様々な事を考えると、これで安心だとはとてもじゃないが言えやしない。

 だからこそ、私はいくつかの対策を取る事にしたのである。どこまで通用するか知らんけどね。




 ――原作が始まるまでは、割と穏やかだったと思う。


 婚約者になった未来の公爵様――ヴィンセント様とも仲良くやってるし、私の人生に関しては順風満帆と言ってもいいのではなかろうか。


 だがしかし、いよいよ原作が始まる頃になると色々と不穏な何かを感じるようになっていった。


 まず、貴族たちが通う学園が乙女ゲームの舞台なんだけど。

 まぁこれはね、そもそもそこらの低位身分のご令嬢が王子と気軽に知り合える環境って中々ないから、貴族たちが通う学園を舞台にすれば、そこら辺どうにかクリアできるからね。

 それでなくともヒロインは最初平民の出だと思ってたけど、実はとある貴族が駆け落ちして、その子供がヒロインだったっていうやつでして。

 父親はヒロインが産まれる前に事故で死亡。その後女手一つで育てられてたところで、母親の家と関わりのある貴族が偶然二人を見かけて、保護に走った結果ヒロインは貴族として生活することになったわけだ。


 女手一つでヒロインを育てていた母親は、少しばかり衰弱しているので療養が必要というのもあって保護されるという事を拒絶したりはしなかったらしい。下手に意地張って無理して死なれるよりはマシかもしれない。


 で、今まで平民として育ってきた――とはいえ母親によって最低限の礼儀作法は覚えていた――ヒロインは、今までの暮らしから一変して貴族として社会に足を踏み入れる事になったのである。


 貴族になって礼儀作法も最低限とはいえ、それでも以前の生活と比べると色々なものがガラリと変わるのだから、ヒロインにも気苦労はあると思う。

 それでも不平不満を口に出したりしないで頑張るヒロインって、ゲームとして見てたら健気だしプレイヤーとしても応援していたんだけど。


 実際ちょっと様子を見た時のヒロインさんに対する私の感想としては。


 ちょっと現実見る目が足りてない感じかな……?


 といったものだった。


 もうちょっと落ち着いたらそこら辺どうにかなるかなぁ、と思わなくもないけれど、なんていうかちょっと夢見がちなのかしら、とは思ったの。

 両親は貴族だったけど、貴族である事を捨てて駆け落ちするような人たちだ。それが悪いとは言わないけれど、貴族としての義務よりも愛を選んだと言えばまぁその通りだ。なのでそこらの貴族の価値観とはヒロインさん異なってらっしゃる。


 それもあって周囲から浮いてるのもあるのよね。


 なお駆け落ちした両親の身分は母親が男爵家、父親が伯爵家だったと思うんだけど……父親の実家はこの時点で没落している。

 あまりにも身分がかけ離れている、というのであれば駆け落ちやむなし、と思えるだろうけれど、身分的にはまぁ頑張れば結婚できなくもないのに駆け落ちしたのは、そもそも父親には他に婚約者がいたからに他ならない。


 そもそも最初、駆け落ちしたとは思われてなかったようなのよね……というか、ヒロインさんのご両親が秘めたる恋仲であった、という事すら周囲は知らなかったみたいだし。

 両親に関してはちょっと原作ゲームでも謎多き感じがあったけど、駆け落ちした時点では駆け落ちというよりは失踪したと思われてたようだし、父親の本来の婚約者の家からは勿論文句の一つや二つ出るのは言うまでもない。婚約をせめて白紙にするか解消してから家を出るとかすればよかったのに、それをしなかったせいで婚約者の令嬢もいらぬ苦労をしたようなので。


 慰謝料だとかを払ったりした結果、父親の生家は家計がかつかつ火の車。

 父親の遠縁だとかの親類がいないわけではないだろうけど……まぁ、仮にヒロインさんが血筋的につながりがある、と言われても……引き取ろうとまでは思わなかったでしょうね……


 母親の方も駆け落ちしたとか最初思われてなかったようで、誘拐されたのではないかとか言われてたみたいだし。


 ……つまるところ。

 ヒロインさんの両親が駆け落ちしたという事実を知っているのって、私という原作を知ってるゲームプレイヤーか、あとは当事者なのよね。

 うっかり口走ったら私なんで知ってるのって言われるのが目に見えてるので、絶対言っちゃいけないNGワードよ。



 ともあれ、貴族としての作法とかはまぁそれなりにできるヒロインさんではあるけれど、しかしその価値観は他の貴族とずれている、ってのがネックなのよ。



 何せヒロインさん、気付いた時には王子とお近づきになって、恋に落ちてた。


 他にも攻略対象はいたのにどうして王子にいっちゃったのか。

 いやまぁ、王子お顔はとってもよろしいので夢見がち乙女なら一度見たらちょっと恋に落ちてもおかしかないんだろうけどさ……でもそいつ、外面はさておきそれなりに面倒な性格してますよ。


 私が婚約者にならなかった事で、王子の婚約者になったご令嬢も勿論いい気分はしなかったようだ。

 一応貴族としての常識だとかをヒロインさんに教えたりしているのを見かけた事がある。

 まぁ、ちょっと遠回しに嫌味が含まれていたり、ヒロインさんのせいで私とても不愉快です、みたいなのも見え隠れしていたけれど。


 でも私は早々に王子と関わらないようにしたから、下手に首を突っ込まないようにしようと思ったわ。関係者ならともかく現時点でそうじゃないのだから、下手をすれば余計拗れる事になりかねないし。

 どちらかといえば、ヴィンセント様の家に嫁ぐ日の事を考えて、それはもうお勉強とか力を入れてあれもこれもとできるものはできる部分から手をつけていったりもしたわ。

 元々ハイスペックだからなのか、それとも愛の力か。

 私の成長っぷりは目を見張るものがあると自分で自画自賛したくなるくらいだったの。



 けれども、そのハイスペックっぷりが周囲の目についたのはよくなかったわ。


 巻き込まれたもの。


 思いっきり王子とヒロインさんのやらかしに巻き込まれたのよ。



 結婚の日を今か今かと楽しみに待っていた中、ヒロインさんは王子の婚約者に虐められていると王子に泣きついたらしい。

 虐めていたのは別派閥のご令嬢たちで、婚約者はあくまでも人の婚約者にべたべた馴れ馴れしくしないでというような事しか言ってなかったのに。


 王子も王子で恋愛のせいで頭の中身がハッピーセットになってたのか、虐められているという事実をしっかり調べれば婚約者に非はないとわかったでしょうに、恋に浮かれた頭でヒロインさんの言う事をそのまま鵜呑みにした結果、大勢の前で婚約者へと婚約破棄を突きつけてヒロインと結婚すると宣言する流れに。


 わぁ、とっても見覚えのあるシーン。

 ゲームの中でエンディングの手前のイベントだもの、ものすっごく見た光景……


 なんて思っていたわ。


 もし王子と婚約してたら私があの場にいた事になるのね……ゲームでイベントとして見てる時はもう何とも思わなくなってたけど、こうして見るととても最悪。


 けれど、けれどね?


 ゲームのイベントだったら、ここまで来たらもうヒロインと王子が結ばれるのは秒読みだったんだけど。

 ゲームと同じようにはいかなかったの。


 まぁここ現実だからゲームと同じになってたまるかって話かもしれないけれどね?


 そもそも、悪役令嬢としてゲームの私はそりゃあ勿論王子に近づかないでと牽制もしたけれど、同時に嫌がらせもしていたわ。ゲームの中の悪役令嬢としての私が何を考えていたかまでは全部わかるはずもないけれど、近づかなければそれでいいと思って、殺すまではしなかったのよ。

 殺したらゲームが終わるものね、それにバッドエンドの数が増えすぎても製作者側からしても困るのかもしれない。毎回同じ死に方でのバッドエンドだと不自然な展開になる場合もあるでしょうし、そうなると死に方にバリエーションを持たせないといけなくなってくる。

 そうなるとその分シナリオの文字数も増えてくるし、下手したら若干の年齢制限が必要なゲームになってしまうかもしれない。一応この乙女ゲーム全年齢だったはずだけど、ヒロインが血まみれになって死にまくるような事になったら年齢制限をつけておく必要性が出るかもしれなかった。


 そうなると、色々と面倒な事が増えるだろうな……とは思うのだ。


 大体年齢制限ついてたら、乙女ゲームだ。まさか死に方のせいで年齢制限つくとは普通は思わないだろう。恋愛シーンでちょっと際どい感じになるのかも、とか思う人のが大半だと思う。

 なのに年齢制限がついたのはバッドエンドのせいです、なんて事になったら、私だったらまぁ突っ込みいれるしネットでも下手すりゃぼろくそ言われそう。

 最初から生きるか死ぬかのギリギリの状況の中で命がけで恋をしろ、みたいな話だったら炎上とかはしなさそうだけど……このゲームの話はあくまでも学園が舞台でそこまで血生臭い展開になりようがないものね……



 結果として、断罪返しによるヒロインざまぁな展開になったの。


 婚約者からすれば、やってない虐めを人のせいにしたわけだし、婚約者の忠告無視して王子に接近しまくるわでヒロインさんに優しくする理由がもうどこにもない。

 虐めに関して婚約者さんとは関係あるかもわからない……とか言っておけば王子だってきちんと調べたかもしれないのに、ヒロインさんは婚約者がやったに違いないと言い切ったのだ。


 つまり、そうされる可能性がある事くらいは理解していた。


 実際婚約者であった令嬢がやっていなくても。


 大勢の前で婚約破棄したのも悪手だった。


 婚約は破棄されたし、ヒロインさんは実家に強制送還。現時点母親は療養中とはいえ、どのみち貴族である事を捨てて生きていたのだ。

 ヒロインも同じように、二度と貴族の社会に足を踏み入れないように――と、それがヒロインさんに対する処罰だったの。

 仮に社交界に姿を見せる事ができたとして、結果はロクなものじゃないでしょうし、そういう意味ではお優しい事……と言われてしまうのも仕方のない事だったわ。


 王子に関しては、廃嫡だとかにはならなかった。

 やらかしは確かにしたけれど、あくまでも学園内での出来事。

 他国の王子が留学していましたよ、みたいな事もなかったので国内でのちょっとした醜聞で済ませられてしまった。


 一応、恋に狂う前まではマトモだったし能力的に劣っているとかでもなかったし……他国の間者のハニートラップに引っかかって……とかでもなかったし、何というか廃嫡までには至らないという感じだったのよ。

 あと他の王位継承権を持つ人たちって、継承権を持ってるけれど現時点で王となるような教育をされていない人が多いのよね……こう、産まれたばかりとか、まだ幼児だとか。

 それなりにいい年齢の人もいないわけじゃないんだけど、とっくに継承権放棄しただとか、他国で働いてるだとか、既に結婚しちゃってるなんて人も。

 王になるためにはその結婚相手が王妃になるには難しい、なんて場合、流石に離縁して……ってなってもほら、どう考えても厄介ごとの気配しかしないじゃない?

 一時的な中継ぎで済むなら代理として……とかならどうにかなるんじゃないかなとは思わなくもないけど。


 なので、王子に関しては元婚約者への慰謝料だとか、そこそこの罰だけで済んだ。



 とはいえ、婚約はなかったことになってしまったので、新たに結婚相手を選ばなければならない。


 でも、やらかし王子の新しい結婚相手にと名乗りをあげるような令嬢、そういるはずもない。


 確かに王子はやらかしたけれど、能力的には優秀な方だ。

 今回の失敗を糧に次はもう同じような事をしでかさないだろう。なので、王子を押しのけて代わりに実権を握ってやろう、なんていう野心たっぷりな相手がいたとして。

 そんな相手が王子の次なる結婚相手にと自分の手駒を送り込んだとしてだ。


 そう簡単に傀儡にできるはずもない。


 王子が恋に落ちる前も落ちた後もそう変わらないお馬鹿さんであれば、野心たっぷりな相手に狙われてただろうけれど、優秀なので送り込んだ令嬢が王子を手玉に取れなければ逆に色々と探られたくない部分だとかに容赦なく切り込まれるかもしれない――と考えると、是非うちの娘をと名乗りを上げるのは躊躇われるのかもしれなかった。


 大体、今から王妃教育とか受けたとして、そう簡単に終わるはずもない。


 元婚約者だって何年も前からコツコツとやってきたのだ。

 それを今から短期間でやれと言われたら、まぁ無理よね。

 そうなると次の相手にと選ばれるのは、身分が高い相手の中からという事になる。

 いや、低くても優秀であればいけるかなとは思うんだけども、高位身分の家の人間だと王家と関わる事もそれなりにあるから、礼儀作法とかに関しては覚える事がそこまで多くないというのもあるのだ。

 まぁ国外のマナーとかも学んでおかないといけないから、必ずしも楽できるってわけじゃないけど。


 けど、王家に程近い家であれば、ガワを整えるだけならそう難しい事でもない。

 万が一ヒロインさんが王子と結ばれていたら、間違いなく待っていたのは地獄のレッスンよね。想像するだけで自分だったら遠慮したい代物だわ。



 なんて思ったのもフラグだったのか。

 白羽の矢が立ってしまったのだ。

 私に。


 婚約者いますけどぉ!? と抗議したくなるのも仕方のない話。


 けれども、王子のやらかしのせいで他の家の貴族たちの王家に対する感情はそこまで良いものではなくなってしまったわけで。

 そこら辺を払拭するために、元の婚約者と同等、もしくはそれ以上と言える相手を選ぶしかない。下手な相手を結婚相手にして王家を見限る家が続出、とか洒落にならないし。


 王子はやらかしたけど新たな妃になった相手がしっかりしてたら、今後はまぁ安心できるだろうとか思われる必要がある、っていうのも言われれば理解できない内容ではないけれども……


 でも私婚約者いるんですよ!

 ラッブラブの婚約者が!!


 大体、元々婚約者候補となっていた令嬢は他にもいたじゃない! って言いたかったけど、幼い頃からコツコツ王妃としての教育をされていればどうにかなっただろう相手はそれなりにいたけれど、今から学べとなると難しい……みたいになったのが運の尽き。


 あと、成長と共に優秀なご令嬢として成長できれば良かったんだろうけど、思っていた程そうでもない、みたいなご令嬢もそれなりに……って感じだったので選べる相手が途轍もなく限られてしまったのだ。

 私にとってはいい迷惑。



 原作の修正力が仕事したと言われたら信じてしまいそうな展開に、私は万が一の事を考えて手を打っておいて本当に良かった、と実感したのであった。

 だってこの状態の王子と結婚とか、完全に私が尻拭いする係じゃない!

 どうせ尻拭いするならヴィンセント様と一緒に夫婦一丸となってやる方向性でお願いしたいわ!



 私とヴィンセント様の婚約を白紙にして、どうにか王家と……なんて話が出てきた時に、やっぱ事前に手を打っておいて正解だったと思いつつ、私はわざとらしく小首を傾げて問いかけた。


「王家に嫁ぐ……ですか。王命であれば仕方のないお話ではあるのですけれど。

 それは勿論白い結婚なのですよね?」


 んなわけないとは私もわかっている。

 王子と結婚して後継ぎを産むのは必須だろう。


「白い結婚など許されるはずがなかろう」

「まぁ、でも困りましたわね……そうなると誓約を破る形となってしまうので……」


 国王陛下や私の父といった関係者が集まった場で、私はのほほーんとした雰囲気を崩さずちょっとだけ困ったなぁ、という表情を浮かべてみせた。

 別に何も困っていない。いや、王子との結婚は困るのだけれども。


「誓約……まさか」

「えぇ、ヴィンセント様との婚約が決まった時点で、早々に」


 父が顔を青ざめさせる。

 陛下も同様だった。


 ところでちょっとだけ話が変わるのだけれど、この世界、女神を信仰している。創造主である女神の力は世界各地に様々な奇跡をもたらしたりもしている……ようだ。

 私は実際にどんな奇跡があったか知らないけれど。


 ただ、ゲーム内でもヒロインが行動する際に、教会でお祈りするっていうのがありまして。


 祈り続ける事で信仰心とかいうステータスが上がりまして。

 多分これ別のゲームなら幸運値とかそういう風に言われるやつだと思うのだけど。


 ゲーム内でこのステータスを上げる必要は、正直そこまでないように思える。

 別に上げなくても攻略は可能なので。


 ただ、そうやっていくうちに誓約というものを選ぶ事ができるようになるのだ。


 誓約に関してはいくつか選ぶ事ができるのだけれど、基本的に一度のプレイで一つだけ。

 つまりは、周回プレイをする時に有効になる。

 最初の誓約でステータス引継ぎを選ぶと次の周からのプレイはステータスを上げる手間が大幅に省ける。

 なので攻略サイトなどでお勧めされてる最初に選ぶべき誓約はステータスの引継ぎだ。


 けれどもこの世界は現実なので。

 二周目、とかいうのはあるはずもない。

 ……いえどうかしら、仮に二周目になったとして、別人に生まれてステータスだけ引き継ぐとかいう事になったりしないかしら……? わからないけれど、試してみようとは思わないわね。ゲームのエンディングを迎えた時点で時間が巻き戻ってループするとかそういう事がない以上、誰かと結ばれたとしてもそこでエンディングというわけでもないでしょうし。


 ……ゲームシステムに関連しそうなものはあまり考えると深淵に首突っ込みそうになるので、今はそっち方面は見なかった事にしておきましょう。


 ともあれ、ゲームじゃないこの世界でも誓約は可能であった。

 といってもステータス引継ぎがしたいだとかのゲームにあった誓約ができるとかではない。


 神に誓いを立てる事で、神の加護を得ることができる。


 そう聞けばとても良いものに聞こえるけれど、断言するには少しばかり難しい部分も当然ある。

 まぁ神様だからね、人間なんて矮小な存在のためにサービス万全であるはずもない。


 破れば神罰は必須である。

 最悪死ぬ。


 誓約した本人だけが死ぬ場合まだマシだが、下手すると一族郎党死ぬなんて事もあり得る。

 とばっちりで死ぬかもしれないと考えたら、軽率に誓約など結ぶんじゃないぞとなるだろう。


 よっぽど馬鹿みたいな誓約を立てたならまだしも、常識の範囲内の誓約ならむしろ何も問題はない。


 例えば。

 世界を平和にしてみせます、なんていう壮大すぎてそれ貴方一人でできるものなの? みたいな誓約はしたところで正直何の効果もない。

 これが、例えば魔王だとかが現れて、勇者が必ずや倒して世界を平和に、とかいうなら効果はあるかもしれない。


 けど、高々一人の人間にできる事は知れているので、そんな壮大な誓約はやった時点でデメリットでしかないのだ。達成できなければ、最終的に誓いを破ったとされて神罰が、なんて事もあるので。

 勿論誓約をせずに単なる目標として心に刻んでるくらいなら何も問題はない。


 もっと現実的な実例を出すとするならば。


 とある夫婦が結婚したとして。

 誓約でこの人と一生愛し合って添い遂げる、なんて誓ったとする。

 実際そうしていつまでも仲良く暮らしましたとさ、であれば何も問題はない。

 けれど、もしそんな誓いを立てておきながら別の相手に心が移ったとしよう。


 天罰が下ります。


 どういった天罰だとか神罰が下るかはわからないけれど、間違いなく大変な目に遭います。


 誓約をする事で相手の愛は確かなものである、という証明などにもなるし、万一裏切ったらそれ相応に酷い目に遭うので、若い世代なんかだとこの手の誓約結構やってるっぽいのよね。神殿でやった時、あぁまたか……みたいな目をされたのはちょっと納得いかなかったけど。


 でもそれだと天罰だけで加護とは……? となるわよね?

 この例でいくと、例えば第三者が略奪愛系の妨害をしてきたとして。

 その場合、その相手が酷い目に遭います。


 愛する二人を引き裂こうとするなど以ての外、とばかりに泥棒猫か間男かはわかんないけど、まぁ、ロクな事にならないのは確かよ。

 神の加護によって、二人の愛を引き裂こうとするお邪魔虫が排除されるという寸法。


 ちなみにこの誓約を逆手にとって片思いしている相手と結ばれるようにしようと目論んだ人もいたみたいだけど、そもそも愛しあう二人の仲を引き裂くなどの妨害で神罰が下ったりするので、一方的なストーカーが愛する人とどうにかなるみたいな願いはその場で軽い罰が下ったりもするらしい。一方通行の思いを無理矢理成就させるために神の力を頼るって、まぁ神様的にどうかと思うもの。その前に相手に認識されて好意を持たれるように努力しろって言われても仕方のない話だわ。

 まぁ、相手神様だものね。

 神様の力借りて上手い事やろうっていう考えは流石に神様的にアウトなのかもしれないわ。というか、私が神様なら矮小な存在のくせに虎の威を借る狐みたいな事してんじゃないぞってちょっとイラッとするかもしれない。些細な事なら目を瞑るけど、自分的アウトゾーン突入したらまぁ、お仕置きするかもしれないわ。



 ともあれ、私も例に漏れず、ヴィンセント様との婚約が決まってかなり早い段階で誓約を結ぶ事にしたの。

 ヴィンセント様も気が早くないだろうか、なんて言いながらも一緒に誓約結んでくれたわ。


 えぇ、つまり。

 愛する二人をわざわざ引き裂こうとするような事をすれば、そのお相手に神罰が下る可能性がとても高いの。

 この場合、王命で私とヴィンセント様の婚約を無かったことにした挙句王子と結婚せよ、なんて言い出した陛下と王子が神罰対象者かしら。

 まだ、決定事項だと言われていないからこそ無事でいられるけれど、強権発動して決定した時点で下るでしょうね。場合によっては私の父も神罰対象に入るかもしれない。


 あと、あの、とても言いにくいんだけども。

 お父様お耳をちょっと拝借……なんて言いながら、こそこそと誓約の内容を伝える。


 ヴィンセント様の家に嫁入りして、公爵家を盛り立てれば最終的には王家の利益にもつながるので、そういった点含めて私は誓約を結んだわ。

 勿論一生涯ヴィンセント様を愛する事も誓ったし、もっと踏み込んだ事を言うのであれば。


 純潔はヴィンセント様に捧げるとも誓ったのよね……


 いやあの、ほら、なんか途中で賊に襲われるような展開は流石に無いと思いたかったけど、でも絶対とは言わないじゃない!? 万が一そんな事になった時、辱めを受ける前に相手に神罰下ればいいくらいの気持ちだったの!


 ちなみにこの純潔関連の誓約に関しても、誓い方次第では誓った本人に罰が下る事もあるから注意が必要よ。


 ゲームと違ってこの世界の誓約って、メリットもデメリットもそれなりにあるから気軽にやると後で痛い目見るかもしれない……ってのは否定できないけれど、でもこんな事になってるんだもの。やってて良かった~!


 純潔をヴィンセント様に捧げる事まで誓約に盛り込んだと知って、お父様はますます顔色を悪くさせたわ。

 そうよね……一時的に王子と結婚して後継ぎ産んだ後で離縁してからヴィンセント様のところへ返す……なんてある意味最悪の方法も使えなくなったものね。

 というか、そんな下げ渡すみたいな事されたら流石のヴィンセント様も王家見限ったりしない? いくら尻拭いばかりしていた方とはいえ、私だったらブチ切れて王家の名誉も権威も何もかも失墜させる方向に舵切っちゃうと思うんだけど……


 かといって、私の純潔をヴィンセント様に捧げたあとで王子のところへ嫁ぐとなれば、その後孕んだ子は時期によってはどちらの子だとなりかねない。

 もしヴィンセント様の子だったなら、王家簒奪なんて事になっちゃうのよね。こちらにそのつもりがなくても。というかこの場合我が家の後ろ盾を王家が得るのまず無理だし、後継ぎを産む事だけでも、って事であえて私を選ぶ必要性がとても薄い。

 あくまでも私が王妃となって王子と末永くやる事を前提にしているのだから、この方法は間違いなく破綻するし神罰の対象になるでしょうね。正直誰も幸せになれない選択肢だと思う。



 これが単なる契約の話であったなら、当事者集めて事情をしっかり説明してどうにか落としどころを見つけて……ってなったのかもしれないけれど、誓約は女神さまとのものなので……神様を納得させるって、正直かなりの無理ゲーじゃないかしら。


 これで王子が王位につかない場合国が滅ぶかもしれないとかで、そうしないために私が自ら誓約を破ってでも国を救いたいのです、みたいなさ、健気ヒロインとかで、どんな罰でも受ける覚悟してるならまだしも、生憎私にそんな気持ちはこれっぽっちもない。

 私は何が何でもヴィンセント様と結婚するしあの人の子供も産むし、あの人も産まれてくる子も幸せにするための努力はするけれど、それと同じ熱量を王子に向けられるかとなると……無理なのよね。


 お父様だってそれはもうとっくに理解しているのでしょう。


 王子の結婚相手に私以外を、となれば果たして誰が相応しいかもわからない。

 国内の令嬢はまずほとんど乗り気にならないでしょうし。では国外から王位継承権の低い他国の王女様だとかに嫁いでもらうにしても。


 嫁いだ後で王子のやらかしを聞けば、間違いなく好意的な感情はあったとしても萎むでしょうね。

 最初から割り切って全部分かった上で来てくれる方が望ましいけれど……他国の王族がこんな最初から尻拭いとわかりきってる婚姻を結びたがるかしら……? うちの国、別にそこまで他国から喉から手が出る程欲しい、とか思われてるような資源とか知識とかないでしょうし。

 全く無いわけじゃないけれど、それは精々外交で得られる範囲であって、婚姻して関係をがっちり強固なものにしてまで……ってところまではいかないのよね。


 ――結局のところ。


 王命を出して無理に王子と私をくっつけたところで、やってくるだろう神罰がどれほどのものかも想像がつかないという、メリットなんてほぼない挙句デメリットが未知数すぎる時点で。


 この話は当然なかったことにされた。


 原作の修正力があったかはわからないけれど、もしあったのなら私はそれに勝ったと言ってもいいだろう。


 待っててヴィンセント様! 私必ず貴方の事幸せにしますから!!


 ――と、内心でとんでもないくらい私ははしゃいでいた。




 さて、ではその後王家はどうなったのかと言うと。


 このままでは王子にマトモな結婚相手とか無理すぎて、結局王子は継承権を放棄する事となってしまった。

 身分が低くても王子を支え国母となるだけのポテンシャルを持った優秀な令嬢がいればともかく、低位貴族の中の令嬢で優秀な人と言っても流石にそこまでの優秀さを持つ人はいなかったのよね……


 なので、継承権を捨ててなかった王弟殿下を呼び戻して彼を国王とする事で話は決まったみたい。


 王弟殿下は隣国で色々と学んでいた方で、何事もなければそのままそちらで生活をしているはずだったのですが……まぁ、王子がやらかしてしまったので仕方ないと諦めて戻ってくる事になったらしい。


 ちなみに王弟殿下は隣国で素敵な女性と知り合っていて、彼女と結婚できないのであれば王位など捨ててやるという言葉に陛下も認めるしかなかったみたい。

 まぁ、身分も才能もある王妃としてやっていくのもバッチリ、みたいな方だったのでその要求は案外すんなり受け入れられた。


 そうよね、ここでそれを却下できる程陛下には選択肢なんてないものね。

 他のまだ幼い継承権を持った子が成長するまで陛下が現役で頑張るにしても、成長したからってすぐに王位を渡すわけにもいかないでしょうし。


 幸いなのは、王弟殿下が選んだ女性も、王弟殿下自身もどちらも優秀で少なくともこのお二人なら国を安心して任せられるという事かしら。



 ちなみに継承権を放棄する形となってしまった王子様だけど。


 彼は、王弟殿下と入れ替わる形で他国へ行く事になったの。

 国外追放とかではなくて、国家間の結びつきのために婿入りするためよ。



 まぁ、うん。

 国内にいても、醜聞が完全に消える事はないでしょうし、ある意味心機一転頑張るチャンスと考えれば……



 とりあえず、王子が国王になっていたら、きっと旦那様が尻拭いをする事もまだまだたくさんあったかもしれないので。


 いくつかの余計な仕事がなくなったかもしれないと考えるなら……私にとってはハッピーエンドなので良しッ!!

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備えバッチリの元悪役令嬢さん、完全勝利おめでとうございます。お幸せに。 王子もそこそこ幸せに過ごせたらいいなあ、と願っています。 それと、内容とは関係ないんですが、どうしても気になって質問します。こ…
[一言] 元悪役令嬢さん、勝利エンドおめでとうございます。 ヴィンセント氏とお幸せに。
[気になる点] 旦那様のセリフ、ひと言欲しかったかも
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