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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ハート広場の泉の噴水の前で再会するはずだったのだが・・・。

ヒソヒソと声が聞こえる。


「あれってコジマコじゃない?」


「って小鹿真子?元HIGH★天使ビリーバーズの!?」


「一緒にいるのって、え?え?カレシ?」


「週刊文チュンに売れるかな」


「卒業してるからいいんじゃね?もう大人なわけでさ」


「え?なになに、どうしたの?えっコジマコ!?」


「前に撮られたJキッスのKATSUTOSHIとはもう別れたのかな」


川べりの道の藤棚のオクタゴンは辛うじて人目をしのげた。


「私もいろいろあったから・・」と真子がいう。


「鍵は正しくても扉は押さなきゃ開かない。1人では押せなくても二人なら開くことができるよ」


今にして思えば赤面モノだがとっさに出た俺の本心だった。


真子の顔がパアッと明るくなって雰囲気も変わると「先に行ってるね」と走っていってしまった。


逃げていったのではなくて風を感じながら1人で歩く時間が必要だったのだ。


道の先、その泉の噴水の前でブランニューなリユニオン、そんな予定調和を理解しながら右の道を道なりに進んでいくと病院があった。


屋上に悪いモンスターが立てこもって暴れているという。


駆けつけるとモンスターは隣のビルの屋上に飛び移り、その奇怪な指先で俺を指差しながら挑発してきた。


「来たな~~!貴様とはゲームで勝負だ~~!」


そう言ってカートリッジをこちらに向けるのだった。


冗談ではない。お前のフィールドなんかに乗るか!


モンスターがいるビルの屋上は、俺がいる屋上から10メートルほど見下ろせるロケーションだった。


手榴弾を投げつけてやった。


モンスターは爆炎に包まれた。


「ぐあああああ!」


だがしかし爆死していなかった。


さすがは魔物というべきか。


「よくもやったな!絶対に許さん!」


本気で怒らせてしまった。


路上にはマシンが用意してあった。


乗り込んでスイッチを押すが上手く起動しない。


始まる前から焦りが満ちてきた。


逃げ切ったら勝ちらしいが公道なので走りにくい上にレースゲームは苦手なのだ。


「俺が得意なのはドンキーマリオなんだよ!初代のな!!」


叫んでみたって仕方がない。


「ちなみにガンダッチ・サーガはファーストしか認めねえぞ!」


ゼータは少しは認めるが。


もっとも年齢を重ねると不思議と「逆シャルル」が好きになるのは世代の共通らしい。


モンスターが操るマシンが背後から迫ってくるのがミラーで見える。


ええい!


他のクルマの隙間を縫って走っているとボールが転がってきた。


いけない!


急ハンドルでかわした。


ボールの後には子供がセットでついてくる、そう教習所で習ったとおりだ。


子供はお母さんにぶん殴られていた。


最後のチェッカーフラッグをゲット!


あとはゴールに向かうだけだ。


ピーッ!ピーッ!ピーッ!


アラートが鳴った。


エネルギー切れ!?


ミラーにはほくそ笑むモンスターが。


ぐあっ!


激しく追突され視界がブレる。


他のクルマにぶつかるたびにペナルティ音が鳴ってポイントが減らされている。


ガツッ!激しい一撃とともに対向車線に押し出された。


意識が朦朧とする。


正面からは超大型の重モビル・トレーラーが突っ込んできた。


「まだだ!まだ終わらんよ!!」


俺は言葉にならない声を絞り出しながらハンドルを切り、アクセルとブレーキを同時踏みしながらサイドブレーキを引き絞った。


車体がスピンし、テールに激しい衝撃を受ける。


ここまでか!?


いや、まだだ、まだ終わらん!


愛の力があるからマジで信じてるッ!!


俺は全ての愛を込めてアクセルを踏み込んだ。


その瞬間!!


降ってきたパワーアップアイテムのゲットに成功!!


軽快なBGMが流れ、マシンが黄金に輝くと受けた打撃が全て加速エネルギーに転化していく。


俺の体力ライフも一気に全回復した!!


うおおおおおおおおおおおお――ッ!!


俺はリミッターを全解除すると全力でアクセルを踏み込んだ。


「俺のマシンは真剣切り(マジキリ)速いぜ!!」


好きだぜ!


たまんねぇ!


イチコロさ!


そうさ荒れ狂うハリケーン!!


音速をぶっちぎる俺はハイウェイの赤い彗星――ッ!!!!


加速して逃げ切るとチェッカーフラッグが振られた。


WINNER!!とゴールデン文字が表示されてモンスターは悔しがっていたがどうでもいい。


コジマコを迎えに行かなきゃ!!


待ちぼうけでバカにされたと怒って帰ってしまったかもしれない。


連絡を!しかしスマホの電池は予定調和のように尽きていた。


真子!俺の真子!大好きだ!!愛してる!!抱きしめたい!!


しかし身体が思うように進まない。


まるでプールの中を走っているようだ。


街は暮れなずむ夕日に包まれていた。


☆  ☆  ☆


ようやく広場に帰り着いた。


「遅いんだけど!!」


「ごめんごめん。」


そういってカップルは歩き出した。


男がスマホの電池が切れたとか懸命に言い訳した後で言った。


「さっきさー、小鹿真子とすれ違ったんだよねー」


「え?あのコジマコ?」


「ああ、なんか泣きながら走っていった」


「えーかわいそ!カレシに捨てられたのかな」


「あのコジマコを捨てるなんて、たいしたヤツがいるもんだな」


「捨ててない!」


驚いている二人を後に俺は走り出した。


カップルの男が来た道を走ると大通りに出た。


スクランブル交差点を行き交う人混みの中を行き交いながら俺は遂に途方にくれた。


俺は猛烈に腹が立ってきた!!


★  ★  ★


雀荘ではモンスター達が卓を囲んでいた。


突入した俺はその卓を前蹴りに蹴倒した。


「なんだコラア!」


いきり立つモンスターの太ももを「たこ焼きをひっくり返すやつ」で刺してやった。


ギャアアア!と転倒してうめくモンスター。


「何しやがる!」


言ったモンスターの鼻っ面に「たこ焼きをひっくり返すやつ」を突きつけてやった。


「ああ!?なんだこら下っ端モンスター!その三角形の目玉をえぐってやろうか?」


そうしていると江田が現れた。


「江田さん!」


モンスターたちが救いを求める中、どっかりと椅子に腰を降ろした。


「てめー、いい度胸してるじゃねえか」


俺はレースゲームを仕掛けてきたモンスターに会わせるように江田に迫った。


「うちのヘビジーがずいぶんと迷惑をかけたようやが、アレは今病院でうなっとるけえ、ゆるしてやってくれえや」


「だったらテメエからケジメをとらせてもらうことになるぜ?」


「なんだコラア!誰に向かってクチきいてんのかわかってんのか!?」


「まぁ待てや」


そういって貫禄を見せながらモンスターたちを江田は制した。


「その物騒なモノをまずはしまえや」


「テメエもこのモンスターどもを退かせろや」


江田は手を振ってモンスターたちを下がらせたので俺も「たこ焼きをひっくり返すやつ」を引っ込めた。


「こっちとしてもよ、ヘビジーやられて黙っとられんゆうて、テメーを探しとるやつがおるのよ。ヘビジーのアニキのネコジーってんやけどな」


「連れてこい」


「そうはいかんな」


そう言うと江田はモンスターに言った。


「タカギを連れてこい」


しばらくしてモンスターの高木が現れた。


190センチはあろうかという巨大モンスターだ。


「この高木はよ、1年だけど強いぜ。ここらの魔中等部を全部シメてたやつだからな」


「それがどうした。モンスターの番長ごっこになんてつきあってられねえんだよ」


「まぁそうイキんなや。こいつに勝てたら、ネコ次のところに案内してやろうってんだからよ。」


高木はすでに臨戦態勢だ。


先輩たちの前で自分を売り込むチャンスに目を輝かせている。


「そうかよ」


俺は立ち上がりざまに椅子で高木の頭をぶっ叩いた。


一斉に立ち上がるモンスター達。


俺は「たこやきをひっくり返すやつ」を倒れている高木の首筋に押し当てて言った。


「案内せえや」


河原につくとネコジーと包帯を頭に巻いたヘビジー。


「アニキ、こいつだよ」


「よくもやってくれたな」


ネコジーがヌンチャクを構えて迫ってきた。


モンスター軍団に囲まれた。


「タイマンってわけには行かねえようだな」


ハッ!と鼻で笑うと江田が言った。


「モンスターのシマにひとりでノコノコ乗り込んできたニンゲン野郎はフクロにされて帰るのがルールなんだよ」


「ああ、そうかい!」


俺はたこ焼きをひっくり返すやつを構えるとモンスター軍団に突っ込んで手当たり次第に刺しまくった。


「たこ焼きをひっくり返すやつ」はあっという間に血を吸ってなまくらになってしまった。


俺は投げ捨てると、サウスポーに構えた、これは作戦だ。


ネコジーのライトハンドブローが俺の顔面に何度も入る、面白いように入ることに図に乗ったネコ次が踏み込んだ瞬間、俺は一気にオーソドックス・スタイルにチェンジし、渾身の力を込めたライト・クロス・カウンターを叩き込んでモンスターの顎を粉砕した。


奴らは頭は異様にデカいがアゴは小さい、そこを狙ったのだ。


最後の敵となった江田からは猛烈な腹パンチをくらったものの、雪崩式バックドロップで河原に頭を叩きつけて仕留めた、かに思えたが駆けつけてきた江田のオンナがコーラのリッター瓶で背後から殴ってきたせいで少々クラクラっとしていたときに江田が復活してきて少々いいのをもらった。


だが最後は俺の「ギャラクティカ・レボリューション・スペシャルパンチ」が炸裂して決着が着いた。


★  ★  ★


すっかり日が暮れていた。


俺は血に塗れ、ボロボロになった身体をひきずって広場に戻った。


真子は左の道を、俺は右の道をぐるっとハートの形を描いて、その先で「再会」し、新しい扉を二人で開けて未来へと踏み出すはずだった。


だが今は全てが虚しい。


日が暮れた後は噴水も止まってしまう。


ただ静けさがあるだけだ。


わかっていても目指さずにはいられなかった。


ようやく噴水が見えてきた。


向こうから誰かがトボトボと、身体をひきずって歩いてくる。


俺と同じく血まみれで服はズタボロの真子だった。


二人の間に言葉はいらなかった。


お互いに起こったことが全く同時に、一気に理解しあえたのだ。


俺たちは痛みも忘れて懸命にお互いのもとに駆けつけるときつく抱きしめあった。


そしてお互い何度も代わる代わる言い合い、誓いあった。


「愛してる」


「知ってる。ずっと前から」


「離さない」


「離れない」


そこにはもはや鍵も扉も何もなく、ただ二人のために開放された広く新しい世界だけがあった。


噴水が一気に噴き上がったのは、俺たちの熱量に呼び覚まされたからだろう。


そう、あのとき真子は左の道を走っていった。


そして俺はハート広場の泉、その噴水の前で落ち合える予定調和を理解しながら右の道を歩いていった。


そしてモンスターと遭遇し、闘いになったのだ。


真子はというと左の道を走っていく途中でモンスター女子に遭遇し、やはり闘っていたのだった。


そして辛うじて勝利し、懸命に広場に戻ったときには俺の姿はなかった。


スマホの電池が尽きて絶望を感じた真子は俺と同じく、燃えるような怒りとともにモンスター女子部に殴り込んでいたのだった。


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