EP4-3(はぁ!?)
逃げるように場を抜けてきた俺たちだけど…これまで以上に気まずい。
俺と早瀬の間にはケンカをしたカップルのような、周りから見てもわかるようなピリピリした空気が漂っていた。
「私。もう帰るね。みんなには気分悪くなったからって言っておいて。」
「おい!ちょっと…もしかしてさっき“彼女”って言った事怒ってる?それとも呼び捨てにした事?」
「そんなんじゃ…ない。」
「じゃあなんで?」
「さっきの話ホントだよ。私のお父さん悪いことして捕まっちゃって。それで中学の時いじめられてた んだ、私。軽蔑するでしょ!?犯罪者の娘なんかと絡みたい人なんていないもん。こんな事お願いで きる立場じゃないけど今日の事は誰にも言わないでくれるとうれしいな。」
「はぁ!?何それ?すげー勘違い。」
「え…?」
「中学ん時どぉだったかわかんねぇけど、軽蔑とか全然思わねぇよ。」
「けど、だって…」
「ははっ。何か早瀬らしくないな。」
「うぅ…」
「あれ、もしかして…泣いてる?」
「泣いてへんわ!!アホ、こっち見んな!!」
「(たまに早瀬って関西弁になるよなぁ。こっちが素なのかな?」)
「あれ、駿ちゃん!?東館行ったんじゃなかったの??」
すぐ後ろに吉野がいたことに必要以上に動揺する俺。今の早瀬は誰にも見せてはいけない。理由はないけど早瀬を裏切ってしまう、そんな気がしたから…。
「なんか道に迷っちゃって。気がついたら元の場所に戻って来ちゃった。」
俺の背中の方からいつもの声のトーンで早瀬の言葉が飛んで来る。
(立ち直んの早ッ!!さっきまで泣いてたじゃんかよ…。)
「そうなんだ。もぅ!駿ちゃんがしっかりしないから!!私と大槻君で良さげな店見つけたからみんな で向こう行ってみよっか♪」
「なんで俺のせいなんだよ。ま、とにかくおまえ達の見つけたとこ行ってみよっか。」
同意を求めるつもりで後ろの早瀬にちらっと目を向けると、照れ笑いの様な少しはにかんだ表情を見せる彼女がそこにはいた。
(ちょっと早瀬に近づけたのかな。)
そんなことを考えて一人浮かれる俺は…
取り残されていた。
「ちょっと、お前ら勝手に先行くなって!!」