EP3-1(着火)
何なんだ、この状況は。
1つのテーブルを囲む高校生4人組は、周りから放課後を楽しむ若者として見られているんだろうか?
もしそんな視線を感じたとしても受付けるもんか!そもそも隼人と2人のはずがどうしてこんな事に…
事の発端は1時間前に遡る。
「けど、男2人でファミレスってのもなぁ…。完全に浮いてるよな、俺達。」
「そう言うなよ。悩みを吐き出したらちょっとは楽になっただろ?男同士でしか共感できない話ってのはあるもんだぜ。それに…」
「それに、何だよ?」
「あっ!時間ピッタリ。吉野さん達、こっちこっち!」
「何で吉野が!?あと"達"って…」
「昼休み偶然吉野さん達が放課後ここに来るって話聞いちゃって。駿はどうせ男2人じゃ楽しくないとか言い出しそうだから一緒にどう?って誘っといた。」
それから1時間。
もちろん楽しいはずはなかった。隼人はニヤニヤしてるけど…これは他人の修羅場を見物する卑しい類の笑みだ。完全にハメられた。
向かいに座っている早瀬も俺と同じ様に俯きっぱなしで、吉野はひたすら食べ放題とかいうスイーツフルコースを口に放り込んでは満面の笑みを浮かべた。
「この味、このボリュームで1200円で食べ放題だよ♪あぁ、明日死んでもいいってくらい幸せだ。早瀬さん全然食べてないじゃん!奢りなんだから食べなきゃ損だぞ。」
「あ、うん…」
早瀬も俺がいる事なんて想像もしていなかったようだ。俺と同じ反応なのがその証拠で、たまに目が合ってはお互いすぐに下を向いてしまう。
「(おい、駿。せっかく仲直りするチャンスなんだから何か話せって!)」
「(仲直りって…。別に喧嘩したわけじゃねぇし。)」
「(けど、このままでいいのか?1回フラれたくらいで諦めんのかよ。)」
「(それは…)」
バンッッッ!!!!!!
突如ファミレス中に響いた物音。客の視線は音を発した一点に集中する。
そこにはテーブルを叩いて勢いよく立ち上がった吉野がいた。
「あんたらち…ヒック…さっきからつまんにゃいにょよ…ヒッ…」
(ヤバイ!久しぶりのあれなのか、吉野)