EP2-1(駿と隼人)
昨日はほとんど寝ていない。フラれたショックよりも彼女…早瀬結羽のイメージとのギャップがあまりにも衝撃的過ぎて眠れなかった。
(学校行きたくねえな。会うの気まずいし。)
寝不足でくらくらする脳内でそんなことを考えながらも、制服に着替えている自分がおかしい。
(俺ってばやっぱ真面目人間だわ。)
ホームルームが始まる前の教室。いつもと変わらない光景がそこには展開されていた。
「よお。元気ねーじゃん。何かあったか?」
「見りゃわかんだろ。落ち込んでんだよ。」
「やっぱフラれたか。そんなに気にすんなよ。どうせダメ元だったんだしさ。」
「まあ、当たってはいるけど…もうちょっと慰めとかあってもいいんじゃねえの?」
こいつ、大槻隼人とは少し話したときから意気投合しクラスで1番の友人だ。
昨日の告白も事前に相談した仲だった。
「ま、早瀬って学年でもトップ5に入るって噂だし駿じゃ無理無理。入学してからもう5人くらいからコクられたって話もあるし。俺は興味ないけど。」
「フラれただけが原因じゃねえよ。」
「??」
「関西弁…恐い…」
「はぁ?」
「俺は早瀬に関西弁で陵辱されたんだよ!!おれにとって天使みたいな子だったのに実は悪魔だったんだよ!」
「おいおい、落ち着け。積もる話は放課後駅前のファミレスでな。おもしろ…じゃなくて辛い話は親友の俺が聞いてやるからさ。」
今日はとても部活に行く気分でもなかったし、こいつと無駄な時間を過ごす放課後も悪くない。
それに、内に溜まった感情を吐き出さないと1週間は不眠症になってしまいそうだ。
チャイムが鳴り授業が始まる。授業の内容はサッパリ頭に入って来ない。
頭に響くのは教師の声でなく、早瀬の罵りの言葉だけだった。