EP1
「ねえ、駿ちゃん。やっぱ止めた方がいいんじゃない?」
「ばあか。止める理由なんてねえよ。」
朝の星座占いも今日は1位だった。迷う事はない。
「確かに早瀬さんはカワイイと思うよ、女の私から見ても。けど普通まともに話した事もない子に告る!?」
「吉野はわかってねえな。カワイければ全てよし!!入学式の時人目見て俺はこの子と学園生活をエンジョイするって決めたんだ。」
「あっそ。もうお好きにやって下さいな。ほら、あれ早瀬さんじゃないの?」
「あの黒髪美少女は間違いない!明日には二人でラブラブ登校するところを見せつけてやるから楽しみにしとけよ。」
「はいはい。どうなっても知らないから…。」
「早瀬さん。」
校門から出てきた彼女に後ろから声をかける。近づいて見る彼女は遠くで見るより10倍カワイく見えた。
「あ、袴田君。どうしたの?」
「前置き無しで本題に…。一目見た時から惚れました。俺と付き合ってください。」
「気持ちはうれしいけど、ごめんなさい。」
躊躇と呼べる間もないくらい、ほぼ即答ではっきりとフラれた。
「ほとんど話した事もないしいきなりだから困ると思うんだけど…この気持ちはマジだから!!絶対後悔させないし幸せにするから!!」
「幸せに…する?」
「うん!俺と付き合ってよかったって思えるようにする!約束する!!」
「ねえ、袴田君の家ってお金持ち?」
予想していた返事とは違ったが、俺は真面目に答えてみた。
「まあ普通の家庭かな。オヤジはサラリーマンで中流階級ってやつ。」
「そう。」
「あの、それでやっぱり付き合うのは無理かな?さっき言ったみたいに俺、早瀬を絶対幸せに…」
「中流風情が偉そうなこと言ってんちゃうぞ…」
「へ??」
「何が幸せにしたるやねん。そんなん簡単に言うな!!じゃああんたはウチがあれ欲しいこれ欲しいてお願いしたら何でも買ってくれるん!?無理やろ?お金がなかったら幸せなんかなられへんのやボケ!!!!」
「早…瀬…さん?…ですよね。」
間が空くこと数秒。俺の体内時計では長針が一周するくらいの長い長い数秒後
「きゃっ!あの、私たら、その…と、とにかくごめんなさい。」
言い切ると同時に走り出した彼女の後ろ姿は、一瞬のうちに点となってそして消えていった。
俺はしばらくの間校門を背に立ち尽くすことしかできなかった。
「関西弁恐えよ…。」
半泣きの俺は坂の向こうに沈む夕日に誓う。もう恋なんてしない…。