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兄の顔

「ほら、兄さん。いきなり現れて変なこと言い出すから


慎吾くん固まってしまったではない。ごめんね、慎吾くん、ウチの兄さんが」


いや、固まってしまったのはそんな理由ではなくて……


お兄様は海外勤務とお聞きしていましたが、お勤め先はまさかの【ロマネ法王庁】でしたか⁉︎


「君が例の彼氏か、沙織から色々と話は聞いているよ、改めて妹をよろしく頼むよ……え〜っと」


「あっ、はい、自己紹介が遅れまして、ぼ、僕は赤川慎吾と申します、初めまして」


ヴァンパイアハンターに自分の名前を名乗るなど心臓が止まる思いだったが


状況的にそんなことも言っていられない。僕は震えながら右手を差し出した。


「慎吾くんか、よろしく、中々真面目そうで良いじゃないか沙織……


でも何か不思議だな、君とは初めて会った気がしないよ」


僕の右手をガッチリと握りにこやかに微笑む【ウリエル】お兄様


初めて会った気がしないのも無理ないです、僕とは数時間前に会ったばかりですから。


「もう、挨拶が済んだのならば、早く出て行ってよ、兄さん‼︎」


「そんなに邪険にするなよ、男同士で話が合うかもしれないだろ?なあ慎吾くん」


いえ、あなたとはどこまでいっても絶対に話は合わないと思います。


「もう、いいでしょう、早く出て行って‼︎」


沙織ちゃんはお兄さんの背中を押し必死で退出を促すが


背が高く細身ながらも筋肉質のお兄さんは小柄な沙織ちゃんのプッシュなどものともしない


そりゃあ僕とアレだけ互角に戦える身体能力があるのだから当然と言えば当然である。


「何だよ、沙織。いつもメールで〈慎吾くん、慎吾くん〉と報告してくれるだろう?」


その瞬間、沙織ちゃんの顔が真っ赤に変わった。


「止めてよもう、兄さんは‼︎」


お兄さんに対して、僕の何を報告しているのかはメチャクチャ知りたいが


今はそんな事より、とにかく【ウリエル】お兄様には一刻も早いご退場を願いたい


だから、がんばれさおりちゃん‼︎


「ハハハハハ、そんなに照れなくてもいいだろ沙織。


なあ慎吾くん、コイツいつもは僕のことを〈お兄ちゃん〉と呼んでいるくせに


今は〈兄さん〉とか呼んでいるのだぜ、可愛いだろう?」


「もういい加減にして‼︎」


息を乱しながら耳まで真っ赤にして、無理矢理部屋から兄を追い出したさおりちゃん


普段見られない一面が見られて嬉しかったし驚いたが


そんな事よりショックだったのは、さおりちゃんのお兄さんがあの【ウリエル】であり


しかもさおりちゃんに向けるその笑顔は間違いなく優しい兄貴の顔だったということだ。


我ら同胞からは悪鬼羅刹の如く思われている【四大天】の【ウリエル】にこんな一面があったとは……


その事実は少なからず僕に衝撃を与えた。


「ごめんね、慎吾くん、嫌な思いをしなかった?」


「へっ、いや、じぇ、全然」


思わず声が裏返る、もう何が何だかわからないほど頭がパニックになっていた。


それからしばらくさおりちゃんの部屋で話をしたのだが何を話したのか全く覚えていない


それほどまでに衝撃的な事だったからだ。


とにかく今は心を落ち着かせることが先決だ、まずは落ち着け僕‼︎


こうして時は過ぎ、外も暗くなってきたので、頃合いと見た僕はさおりちゃんに話を切り出す。


「僕、もう帰るよ。あまり遅くまで長居するのも悪いし」


「そうなの?夕飯食べていけばいいのに……」


「いや、そこまでお邪魔するのも……多分家でも夕食用意していると思うから」


「そうなの……」


少し寂しそうな沙織ちゃんだったが、僕にしてみれば一刻も早くこの家を離れたい一心であった


覚醒前の僕の正体がばれるとは思わないが警戒しすぎるほどしても足りない相手なのだ


〈念には念を〉でというわけである。


沙織ちゃんとご両親の見守る中で僕が玄関先で靴を履き、仰々しく大声で挨拶をした。


「お邪魔しました、今日は色々とありがとうございました‼︎」


僕の挨拶に微笑みながら小さく頷くご両親。


「何のお構いもできませんで」


「また来てくださいね」


ありがたくも優しいお言葉、〈お兄様の居ない時であれば是非に〉と心の中で答えた。


「アレっ?もう帰っちゃうのかい、慎吾くん?」


二階から降りてきた【ウリエル】お兄様が僕を見て言葉をかけてくる


あなたがいるから早く帰りたいのですよ‼︎……とは言えないが。


「何なら僕が車で送ってあげようか?」


何という【要らぬお気遣い】。


「いえ、そんな、電車で帰れますから」


「そんな遠慮しなくてもいいって、何せ沙織にできた初めての彼氏だからね」


フレンドリーにウインクしてくる【ウリエル】お兄様。


いえ、これは〈遠慮〉ではなく明確な〈拒絶〉なのですが。


「もう、兄さんはまたそんな言い方して、絶対わざとでしょう‼︎」


不機嫌顔のさおりちゃんを尻目にどんどん話が進んでいく。


「そうだね、翔、慎吾くんを送ってあげなさい」


「そうしなさいな、翔、車を出してあげて」


お優しいご両親の心遣いには感謝しますが、本当に嫌なのです


どうかそっとしておいてくれませんか?


「じゃあ、表に車回しておくから、少し待っていて」


そう言ってそそくさと玄関を出ていくお兄様


あの〜〈じゃあ〉って何のじゃあですか?


すでに送って行く事が決定事項みたいになっていますが


僕の意思が介在する余地はどこにもないのでしょうか?


「わかったわよ。でも私もついていくからね、兄さん‼︎」


さおりちゃん、論点はそこじゃないよ〜……って、もういいです


ウチの家族もそうなのだが僕が被告として法廷に立たされた場合


僕の発言権はゼロであり、黙って判決を受け入れるしかないのですね


ええ、もうわかりましたとも。


「さあ、乗って」


かっこいいイタリア製のスポーツカーで玄関先に颯爽と現れたお兄様


ロマネ法王庁だけにイタリア製ですか。なるほど、納得の一品です。


普通の男子であればこんなかっこいいスポーツカーには憧れるし


家まで送ってもらえるのだからありがたいのだろうが


僕にしてみれば処刑場に運ばれる護送車に乗せられている気分なのだ。


「慎吾くんは何かスポーツとかやっているの?」 

 

「いえ、僕は何も……ウチがそれほど裕福ではないのでバイトとかをやっていますから」


「そうなんだ、どんなバイト?」


父さんに頼まれて〈同胞のヴァンパイアを逃すバイトです〉とは言えないよな……


「新聞配達とか、そういった系のなんやかんやですね……」


ふう、何とか上手く誤魔化せたようだ。


でも今みたいな質問を連続でされるとボロが出る可能性もある


だったら不本意ではあるがこちらから質問してお茶を濁すか⁉︎


「お兄さんは海外勤務と聞いていましたが、どんなお仕事をしているのですか?」

 

さあどう答える【四大天】の【ウリエル】。


まさか本当のことは言えないだろうし、少しでも引っかかる言い方をすれば


今度はこちらから質問攻めにして時間を消費してやる、今度は僕の攻撃ターンだ、覚悟しておけよ‼︎ 


少しだけテンションが上がってきて待ち構えていた僕に、【ウリエル】お兄様はあっさりと答えてくれた。


「う〜ん、僕の仕事は何というか……害虫駆除みたいな仕事かな?」


僕の攻撃ターンはあっという間に終わりを告げた


妹さんに寄生する害虫ヴァンパイア……何か言い得て妙だ、なんかスミマセン。

 

そんな時である、お兄様のスマホから着信音が鳴り響いた


スマホ画面に表示されたその相手を見て少し険しい表情を見せる【ウリエル】お兄様


運転中なので耳にはめているヘッドセットで電話に出た。


「ああ、私だ、どうした?何、またか、例の奴からなのだな、場所は?……うん、わかった、すぐ行く」


深刻な面持ちで会話を終えると、僕たちに向かって語りかけてきたのである。


「すまない慎吾くん、沙織。急な仕事が入った、僕は急いでそっちに行かなければならなくなったので


近くの駅で降ろすから、電車で帰ってくれないか?本当にすまない」


何だ、今の電話は⁉︎この人の急な仕事といったら……


僕は嫌な胸騒ぎがしてならなかった。


頑張って毎日投稿する予定です。少しでも〈面白い〉〈続きが読みたい〉と思ってくれたならブックマーク登録と本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです、ものすごく励みになります、よろしくお願いします。

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