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彼女をご紹介2

こうしてさおりちゃんを我が家に迎える日曜日が来た


最寄りの駅まで迎えに行った僕はどこか落ち着かない。

 

「何かいつもとは違う緊張があるな、何せウチの家族は少し変わっているからなあ……」

 

そんな不安を抱えながら待っていると駅から出てくる人混みに紛れてさおりちゃんの姿が見えた


小柄な体が人の波に飲み込まれてしまいそうながらも、その圧倒的な存在感


いや神々しさというべきか?僕の語彙力が足らないせいでこの感動をお伝えできないのがもどかしい


とどのつまりは〈とても可愛い〉ということだ。

 

「ごめん、少し遅くなっちゃった」

 

ペコリと頭を下げ僕に謝罪するマイエンジェル。


今日は白のロングスカートに薄い緑のカーディガン


頭に乗せている白いベレー帽が何ともキュート


それが天使の輪と言われても納得の一品です。

 

僕がそんな彼女に見惚れていると不思議そうな顔で僕の方を覗き込んできた。

 

「どうしたの、慎吾くん?」

 

「いや、その、今日のさおりちゃん、特に可愛いなって」

 

「ありがとう、この服先月買ったの。


少し高かったけれど、慎吾くんにそう言ってもらえたら嬉しいな、


奮発した甲斐がありました」

 

そう言いながら両拳を握り【頑張るポーズ】を見せてくれたのだ


そのあまりの可愛さに僕は〈心臓に杭を打ち込まれたのか〉と思ったほどである。

 

他愛のない話をしながら家路へと歩く僕達。


いつも歩き慣れている道だが彼女と一緒だと不思議と輝いて見えた


しかし家に近づくにつれさおりちゃんは口数が減ってくる。

 

「どうしたの?」

 

「段々と緊張してきて、ご家族に嫌な印象を持たれてしまったらどうしよう……」

 

「大丈夫だよ、さおりちゃん可愛いもん。


この地球上でさおりちゃんを嫌いになる人なんかいないよ」

 

「また慎吾くんは、そんなことばかり言って。


でもそんな地球規模の話ではなくて慎吾くんのご両親にだけ好かれたらいいの、あと妹さんにも……」

 

さおりちゃんは何やら深刻な表情で深呼吸し始めた


もう一度〈大丈夫だよ〉言ってあげようと思ったが


こんなさおりちゃんが見られるのも中々に貴重なため


僕は少しの間だけその状態を放置し経過観察する事を選択した


ウチの両親の性格からしてさおりちゃんを嫌う理由は一つも見当たらない


妹にしてもそうである。だから僕は一ミリの心配もする事なく


緊張で強ばるさおりちゃんの一挙手一投足を堪能した。

 

「ただいま、さおりちゃんを連れてきたよ」

 

玄関を入り、居間のドアを開ける。

 

「は、初めまして、慎吾さんと、お、お付き合いさせていただいています


こぐっ、小暮沙織と申します、今日はお招きいただき……」

 

緊張で少し噛み気味の挨拶をする沙織ちゃんだったが


その挨拶が終わる前に〈パ―ン〉という甲高い破裂音が居間に響き渡った


何事かと驚き両親の方を見てみると、なんと二人はクラッカーを鳴らしていたのである。

 

「いらっしゃい、ようこそ赤川家へ」

 

「よく来てくださいましたね。さあ、こちらでゆっくりくつろいでくださいな」

 

やってしまった……これだよ、これ。


ウチの両親は世間ズレしているというか常識をわきまえないというか、本当に……

 

さおりちゃんは目を丸くして硬直してしまっていた。


それも当然だろう、最悪だ、最悪の出だしになってしまった……

 

「だから言ったじゃない、こんな歓迎の仕方は止めようって……


ほら、彼女さん固まってしまっているじゃない


御免なさい、いきなりでびっくりしたでしょう?パパもママも悪気はないのよ


あっ、自己紹介が遅れまして、私、慎吾の妹の美香って言います」

 

さりげなく両親のフォローと自己紹介をしてくれた美香


おお何という神対応だ。我が妹よ、初めてお前を尊敬するぞ。

 

「は、初めまして、小暮沙織です」

 

気を取り直したさおりちゃんは改めて挨拶をする、その姿がよほど気に入ったのか


美香はプルプルと唇を震わせながらさおりちゃんの顔をマジマジと見つめていた。

 

「何この人、メチャクチャ可愛くない?まるでお人形さんみたい


こんな可愛い人がお兄の彼女って、嘘でしょう?ねえさおりさん


私も〈さおりちゃん〉って呼んでいい?」

 

「こら美香、いきなり初対面で失礼だろう


しかもさおりちゃんはお前より二つも年上だぞ、いきなりちゃんづけとか……」

 

「いいの、慎吾くん。私も下の兄弟がいなかったから、妹ができたみたいで嬉しいわ」

 

おお、何という器の大きさ、見た目だけでなく中身も素晴らしきマイハニーである。

 

「うわ〜ありがとう、さおりちゃん‼︎」

 

美香はいきなりさおりちゃんの腕に抱きついた


最初は少し戸惑う素振りを見せたさおりちゃんだったがすぐに打ち解けたのか


まるで本当の妹のように美香を愛しげな目で見つめていた、何だかわからんが、美香、グッジョブだ‼︎

 

二人が並ぶと姉妹というより同級生に見える、美香は年齢の割に大人っぽく発育もいい


実の兄が妹を語る時に【発育がいい】とか言うとまるで変態みたいだが


あえて言おう、実の妹など例え僕の目の前で全裸でうろつかれたとしても何とも思わない


兄弟などそんなものである。美香は身長も155cmとさおりちゃんより7cmも高い


中学生のくせにしょっちゅう街中でナンパをされ


芸能事務所のスカウトをされたこともあるのだから見た目的には悪くないのだろう


スタイルもさおりちゃんより……


それはさておき、この二人が仲良く寄り添う姿は何かとてつもなく心温まる気がした


どうしてかはわからないが凄く嬉しくて幸せな気分がしたのである。

 

「改めて自己紹介をさせてもらうよ、慎吾の父、赤川正一です」

 

「母の赤川ちえみです、よろしく」

 

「こちらこそ、初めまして。慎吾くんとおつきあいさせていただいています


小暮沙織ともうします、よろしくお願いします」

 

ヤレヤレ、ようやく挨拶が終わった。ここまでくるのにこんなに疲れるとは……


普通初対面の挨拶など会って二秒でできるだろう?


どうして挨拶一つするのに紆余曲折があるのか、甚だ疑問だが……


まあいい、美香のフォローのおかげでいいムードになったし


あのドン滑りの演出も、今考えるとフリとしては有りなのかもしれない。


 

「へえ〜沙織さんは、小暮先生の娘さんだったのか⁉︎」

 

「父さん、さおりちゃんのお父さんを知っているの?」

 

「ああ、仕事で何度か会ったことがある。温和な方で非常に患者さんからの評判の良い先生だよ


そうか、あの小暮先生のねえ。どうりで品があるというか、物腰が清楚というか、育ちの良さがわかるよ」

 

挨拶も終わり皆で一緒に昼食を取る事となった。


そこで父さんとさおりちゃんのお父さんが知り合いだったことを知る


確かにウチの父さんも薬剤師をしているのだから同じ医療業界という点では共通点があるが


まさか顔見知りだったとは⁉︎世間は狭いな。

 

だが初めて訪れた彼女にクラッカーを鳴らすような常識はずれぶりを見せておいて


偉そうに品とか育ちとか語るのはどうかと思う


あんなのは一種のテロ行為と何ら変わりないと思うのだがどうだろうか?


あなた方のような非常識な両親から僕達のような常識人の子供が産まれたことは奇跡といえよう


【子は親の鏡】というがその言葉には断固抗議したい。


まあ常識人と言っても僕達は正確には人ではないし


【子は親の鏡】ということわざも、僕達ヴァンパイアは鏡に映らないから当てはまらないのだろうか?


何だかややこしいのでこれ以上掘り下げるのは止めておこう。

 

「ねえ、さおりちゃん聞いてよ……」

 

美香のさおりちゃんへのアタックが凄い。


よほどさおりちゃんのことが気に入ったのだろう、ベッタリくっついてずっと話しかけていているので


僕の入る隙間がないくらいである。さおりちゃんも満更でもない様子なので


そのままスルーすることにした。だが調子に乗るなよ美香


今だけだぞ、今だけ。さおりちゃんは僕のものだからな‼︎

 

食事も終わり、和やかな雰囲気の中、僕はさおりちゃんに向かって問いかけた。

 

「ねえ、僕の部屋に来ない?」

 

「えっ、うん……」

 

僕の誘いに対し少し緊張気味に返事するさおりちゃん。

 

「あ〜‼︎お兄がさおりちゃんを自分の部屋に連れ込もうとしている‼︎」

 

「やめろ、変な言い方は‼︎そんなじゃないよ‼︎」

 

「まあ、お兄にそんな度胸はないものね~」


まるで見透かしたように言い放つ美香

 

何だと⁉︎いくらその通りだとしてももう少し言い方というモノがあるだろうが‼︎

 

「そうだぞ、慎吾、大切なお嬢さんにおかしな事をするのではないぞ」

 

「慎吾ちゃん、ママの期待を裏切らないでね」

 

何なのだ、アンタら。そんな真剣な顔で人をケダモノみたいに


全くそんなつもりはなかったのに、さおりちゃんがいたたまれなくなってうつむいてしまったではないか⁉︎


大体そんな気は微塵も……微塵ぐらいはあるが、実行する勇気は全くない


そんな人畜無害な僕に向かって余計な心配だ。

 

「ごめんね、さおりちゃん、じゃあ行こうか」

 

「うん……」

 

恥ずかしそうに小さく頷く僕の彼女。


いつも上がり慣れている家の階段だが彼女と一緒に上がるとなると何故か少し緊張する


こうして僕は彼女と二人きりで部屋に誘う事に成功したのである。


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