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絶対絶命

聖書の〈大天使ミカエル〉は悪に対し絶対の正義の力を行使する大天使と言われている


コイツも人間の為にヴァンパイアに容赦なく力を振るっているのだろうか。


すると【ミカエル】の後ろから続々と姿を見せるハンター達


【ガブリエル】や【ウリエル】といった顔見知りの面々も現れた、【四大天】がそろい踏み⁉


どうしてここがわかった?しかもこれ程のメンバーが集結しているという事は


完全にばれているという事である、そしてこの人数がいるのに僕が気配も感じなかった、どうしてだ?


「お兄ちゃん……」


さおりちゃんが思わず呟いた、【ウリエル】お兄さんはいつもの戦闘モード全開ではなく


小刻みに震えながら苦悩の表情を浮かべていた。


「沙織、どうしてお前は……だが帰ってこい、お兄ちゃんが守ってやるから……」


同胞達から悪鬼羅刹と恐れられている【ウリエル】が今では普通に妹を心配する心優しき兄となっていた。


「ごめんなさいお兄ちゃん、私はもう……」


さおりちゃんは自分の首元の服を少し下げ首筋を見せつける


そこには僕のつけた吸血痕がくっきりと残っていたのである。


「何という事を……お前は、お前は……」


今にも泣き出しそうな顔で絶望感を露わにする【ウリエル】


僕は心が引き裂かれる思いでその光景を見つめていた。

 

「感動の再会が台無しだね、これだからヴァンパイアは……


でもどうして君たちがここに来て今来たことがばれてしまったのか?


という顔をしているね、今日の僕は機嫌がいいから教えてあげるよ


君達が大分県別府市にある【伊藤夏子】の家を目指している事はわかっていたからね


一番網にかかりそうなここで待っていたという訳さ」

 

「どうして夏子おばさんの事が……はっ、まさか⁉」

 

「そう、そのまさかだよ、福岡県に君のお母さんの実家があるだろう?


僕がそこに行って君のお母さんの学生時代からの親友である【夏子さん】の事を直接聞いたのさ」

 

「お前、おばあちゃんに何をした、まさか酷い事をしたのではないだろうな⁉」

 

「まさか、そんなことしないよ。僕の体は対ヴァンパイア戦闘用に特化して作られているからね


だから普通の人間に危害を加えたらその時点で呪いが発動してしまう厄介な体なのさ


だから丁寧にお願いして教えてもらった。


僕の誠意が通じたのだろうね、おばあさんは親切に教えてくれたよ」

 

意地の悪い笑顔のまま、言葉を発する【ミカエル】

 

「教えてもらったって……そうか、お前【魅了】のスキルを使ったな⁉」

 

「ピンポーン、大正解。さすがにここまでヒントを出せば普通にわかるか。


では次の答だ。君達がコレだけのハンターの気配に気が付かなかった原因は


【対ヴァンパイア用結界】によるモノさ。


これはね、ヴァンパイアだけに有効な局所結界で継続時間こそ短いけれどその効果は絶大だ


僕だけの特技なのだぜ、どうだい凄いだろ‼」


コイツ、僕なんかよりヴァンパイアの特性を知り尽くしてやがる


価値を確信し得意げに語るミカエル。でも一つ疑問があった。


「一つ聞かせてくれ、お前らがここで罠を張っていたとして、どうして僕たちが今来たことがわかった?


入り口のハンター達の意識は完全に操ったし、ここに来ることを誰にも見られてはいないはず


結界の持続時間に問題があるという事は


今この時間に僕たちが来たことがわかったという事だろう?どうしてわかった⁉」 


そんな僕の質問に〈待っていました〉とばかりに満面の笑みを浮かべる【ミカエル】


「いいねえ~君は、何もかも僕の思い通りに動いてくれる


その浅はかさが最高だよ。じゃあヒントを教えてあげるよ


今君は〈誰にも見られていない〉と言ったが、本当に誰にも見られていないのかい?」


【ミカエル】の問いかけに少し考えてみる、次の瞬間、僕とさおりちゃんは思わず顔を見合わせた。

 

「あの子供連れの親子か⁉」

 

「正解、あの三人連れの親子はね、我々の仕込んだ工作要員さ


君達を誘い込むために入り口には囮としてワザとわかりやすい二人を


チェック要員として置いておいたのだよ。


君達はそれに気づかずノコノコと現れたという訳さ、そして本当のチェック要員はあの親子さ


トンネルを通ろうとする若い人間に絡んで吸血鬼かを識別する役目だよ」


「まさか、あの親子が……でも絡まれたと言っても僕たちはあの親子に特別何もされていない


一体どうやって僕たちがヴァンパイアかどうかチェックしたというのだ?」


「君達が通る時、女の子が泣いただろう?すると一瞬意識が女の子に集中する


その隙に君達をチェックしたという訳さ」


「あんな短時間で……でもどうやって?」


「ヴァンパイアか人間かを一瞬で見分けることができ


誰が持っていても不自然じゃない便利な道具があるだろう?」


「鏡か⁉」


「その通り、娘に気を取られている隙に母親が一瞬で鏡を覗き込む


ヴァンパイアは鏡に映らないからね、ほんの一瞬で識別できる便利なアイテムだ


百均でも売っているしね……さてこれで謎解きは全てお終いだよ、どうだった僕の手品は?」


くそっ、最初から最後までコイツの掌の上で踊らされていたという訳か……


「さて、種明かしも済んだしこれからバトルの時間だ、無駄だと思うけれど精一杯抵抗してね


どんな卑怯な手を使ってもいいよ……て、いうかそっちの方が面白いし」


もはや戦いは不可避の様である、だがこんな奴とまともに戦えるのだろうか?


しかも対ヴァンパイア用の結界に閉じ込められた挙句


周りには【ミカエル】の他に【ガブリエル】と【ウリエル】そしてハンター達が大勢……


どう考えても勝算は皆無である。ここまでか、死ぬのか、ここで?


いや僕が死ぬだけならばいい、どうにかさおりちゃんだけでも助けられないだろうか、何とか……


その時、僕の前さおりちゃんが出てきて【ミカエル】に懇願するように訴えかけた。


「お待ちください【ミカエル】様、ヴァンパイアと人間は共存できます


この慎吾くんは心根も優しくヴァンパイア王として相応しい度量と技量の持ち主です、どうか……」


「黙れ、下郎が‼」


まださおりちゃんが話し終わっていない内に、それを遮る様に口を挟んだ【ミカエル】


「誇り高き【四大天】の地位にありながらヴァンパイアへと堕ちた恥知らずが‼


貴様の言葉など聞く価値も無い、他のヴァンパイア同様惨めに殺してやるわ‼」


終始余裕の態度で人を見下していた【ミカエル】が烈火のごとく怒っていた


余程腹に据えかねたのだろう。


感情をむき出しの態度で、怒りで体を小刻みに震えながら吐き捨てる様に言い放った。


「お待ちください【ミカエル】様、妹の沙織は……いえ【ラファエル】は


慈悲の心熱く敬虔な神の信奉者としてこれからもロマネ法王庁の為に……」


「黙れ【ウリエル】‼それ以上余計な事を言うようであれば貴様も〈反逆の意志あり〉として処分するぞ‼」


どうにかして妹を庇おうとしたお兄さんだったが


そんな弁護の言葉に全く耳を貸す事無く一括する【ミカエル】


取り付く島も無いとはこの事であろう。


そんな【ミカエル】の有無を言わせぬ迫力の前に言葉を失ってしまう【ウリエル】


もはや裏切り者として処分される事が確定したさおりちゃんの顔に恐怖が走る


ダメだ、そんな事は絶対にさせない、僕が守ると誓ったのだ‼

 

「待て【ミカエル】、お前の目的は僕だろう⁉だったら僕と……」

 

さおりちゃんを助ける為、僕は【ミカエル】との対決に臨もうとした、その時である


僕の目の前に【ガブリエル】が立ち塞がったのだ。


まるで瞬間移動したかのように突然目の前に現れたヴァンパイアハンターのナンバー2


その体の大きさも相まってまるで巨大な壁が立ちふさがったのでは⁉と思えた。

 

「どいてください、僕は貴方とは戦いたくありません‼」

 

「先日忠告したはずだ、〈絶対にヴァンパイアにはなるな〉と


その約束を反故にした時点で、もはや君と話し合う余地はない、残念だ……」

 

悲しい眼差しでこちらをジッと見つめて来た【ガブリエル】


しかし〈はい、そうですか〉と聞くわけにはいかないのだ、早くしないとさおりちゃんが……


僕はどうしていいのかわからず、気が焦るばかりだった。

頑張って毎日投稿する予定です。少しでも〈面白い〉〈続きが読みたい〉と思ってくれたならブックマーク登録と本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです、ものすごく励みになります、よろしくお願いします。

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