彼女にご紹介
「えっ、慎吾くんのお家に?」
まあ予想通りの反応といったところか。さおりちゃんは驚きを隠せないまま戸惑うそぶりを見せる。
「ごめん、いきなりこんな話をして。昨日家に帰ったら、僕の家族が
〈どうしてもさおりちゃんに会いたい〉と言い出しちゃって……ごめん、嫌だよね?」
「別に、嫌じゃないけれど……」
「えっ、いいの?ごめんね、何か……特にウチの妹が〈さおりちゃんに会わせろ〉ってうるさくてさ」
「慎吾くん、妹さんいるの?」
「あれ、言っていなかったっけ?僕二つ下の妹がいるのだよ、生意気なやつでさ
世間では〈妹萌え〉とかいう言葉もあるけれど、そんなのは本当の妹がいない奴の幻想だよ
妹を女としてみるとか有り得なし」
「そうよね、それはわかるわ」
「えっ、そうなの?」
「うん、私にもお兄ちゃんがいるから」
「へえ〜それは初耳だよ、さおりちゃんは妹だったのか⁉︎」
「うん、ただウチは慎吾くんのところと違って八歳離れているから感覚としてはかなり違うと思うよ
お兄ちゃんはいつも私を子供扱いしていたし」
「していた……って、今は違うの?」
「今はお仕事で海外に行っているの、もう二年ぐらい会っていないわ」
「へえ~、そうなの……」
確かにさおりちゃんが妹だったら〈妹萌え〉も有り得るかもしれないな
それは僕と彼女が他人だからだろうか?八歳年上のお兄ちゃんに子供扱いされるさおりちゃんか……
想像しただけで口元が自然とニヤける、多分何時間でも見ていられるだろう
お金を払ってでも見たい光景だ。口喧嘩で妹に子供扱いされる僕とはえらい違いだ。
とはいえ今回の【さおりちゃん我が家へご招待大作戦】を立案したのは何を隠そう妹の美香である。
〈いいお兄、今聞いた彼女さんの性格から推測すると
(ウチの家族が君に会いたいと言っているのだけれど、嫌だよね?)
と聞けば(嫌ではないけれど……)と答えると想定されるわ、そうしたらすかさず
(えっ、いいの?助かるよ、妹がどうしても会わせろとうるさくてさ)と繋げるのよ
【嫌ではない=OK】という論法にすり替えるの。それと親という単語は厳禁よ
いきなり親が会いたいとか言われたら普通構えちゃうでしょ?だからそこは私を使うの
(妹が会いたがっている)と言えば断りづらくなるじゃない
(歳も近いし、まあいいか……)という気にさせるのよ
この方法は2007年にイギリスのマンチェスター大学のオリバー教授が発表した論文の中の応用で……〉
おいおい、さすがだな、美香。お前の言った通りになってきたぞ
しかも〈さおりちゃんに八歳年上のお兄さんがいる〉という貴重な情報までゲットできた
ありがとう、初めてお前に感謝した気がする。そしてありがとうオリバー教授、誰か知らんけど……
僕がこの提案に乗ったのは家族からの要望があったからというだけではない
僕自身、家族にさおりちゃんを見せたかったというのが偽らざる本音である、有り体に言えば自慢したかったのだ。
〈どう僕の彼女?滅茶苦茶可愛いでしょ。しかも凄くいい子、もう嫁でよくない?〉
と言いたいのだ。
「うん、わかった。それでいつ行けばいいの?」
「再来週の日曜日以外ならOKみたい。ウチの母さん料理得意だから
何か好きなモノがあれば作ると言っているけれど、どう?」
「えっ、そんな、何でもいいよ、私好き嫌いないし……あっ、でも納豆は苦手だな」
さすがの我が天然母親も初めてウチに来た彼女に納豆は出さないだろう。
「じゃあ今度の日曜日でいいかな?」
「うん、じゃあお邪魔します、何か緊張するな……」
「大丈夫だよ、さおりちゃんなら」
僕は彼女に優しく微笑みかけた。もちろん根拠はないが確信はある
こうして全てが計画通りに進み、日曜日が楽しみになったのである。
遅ればせながら、僕の彼女、小暮沙織ちゃんについ手の詳細なデータを語ろう
同じクラスの高校二年生、身長148cm 体重46kgと非常に小柄な女性である
なぜこのような身体データを知っているかというと、そこはヴァンパイアの目で測定したからであり
誤差はほとんどないと断言しよう。
〈ヴァンパイアの特殊能力を何に使っているのか⁉︎〉というツッコミはごもっともですが
僕にとってこのデータは何より知りたいモノであり他の何を差し置いても知っておきたい情報なのです
もちろん彼女のスリーサイズもある程度ならば把握しているがここで情報開示はしない
なぜって?これは最重要機密でトップシークレットだからだ。
何を好き好んで自分の彼女のスリーサイズを発表しなければならないのだ?これは僕だけの特権だ
どれほど金を積まれてもこの鉄の意志だけは砕くことは出来ない、そう、ここだけは誰にも譲らないぞ‼
だが、それではご納得いただけない読者のために少しだけヒントをやろう
彼女のスリーサイズはその性格と同様、やや控えめであると……
話が逸れたが、彼女は両親と三人暮らし(海外在住の兄がいる*最新情報更新)であり
ご両親は都内で大きな病院を経営しているいわばお嬢様である
性格は明るくしっかりしていて意外と頑固な面もある
やや天然パーマの髪と大きな目が特徴のとても可愛い(ここ重要)な女の子だ。
僕とはクラスの【黒板消し係】として一緒に行動している
高校に入ってからまともに話した女子は彼女だけで有り、その明るくて優しい性格に好感を持った
それが恋へと変わっていくのに、たいして時間はかからなかった。
そしてある日、僕は思い切って彼女をデートに誘う
彼女は恥ずかしがりながらもOKの返事をくれて僕達は三度ほどデートを重ね
そして僕は一大決心をして交際を申し込んだのである
心臓が破裂するのか?と思うほど緊張したが彼女の返事はまたしてOKだったのだ
この時の喜びは今でも忘れない、そして〈実は私も赤川くんのことが好きだった〉と聞かされ更に気分は最高潮に達する
喜びマシマシの全部乗せ状態となったのだ、この時が間違いなく僕の人生最良の日であった。
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