合流
「この場で彼女に常識を教えるのは難しいですので、連れていく事にしました」
アインに告げられて了解しましたけど、一つ懸念が…。
アインを連れて少し離れます。
「連れていくのは良いんですけど、ブルースで飛んで行くのはやめた方が良く無いですか?」
もし同じ王様トカゲであるブルースが、人の姿と元の姿を行ったり来たりしてるのを知ったら、自分もそうするとごねそうな………。
「ええ、ですから歩いていくしか無いんですよね。
水や食料は貴方の転送魔法に頼るしか無いのですけど…」
申し訳なさそうに言うアインに、少し時間をもらって、私は念話で話をしました。
オアシスでそのまま昼を取り、暫くその場に留まります。
そして日暮れ前、待っていた姿が見えました。
《早かったですねポニー、夜になるかと思っていました》
《うちらそんな鈍足とちゃうよ》
ホルノーンに入る前に別れたポニー達ですが、東へ行くと決めた時の念話で伝えたら、人の少ない場所を見繕って進むから、砂漠を越えた東の国で合流しようかと持ちかけて来たのです。
どうやら、【人の乗る動物】が蛇を踏み殺すと処罰の対象になるのですけど、動物が誤って踏んでしまっても、それは【仕方のない事】となるそうです。
野生動物まで処罰の対象にしていたらキリが無いですからね。
なのでポニー達単体で、その上なるべく人目の少ない場所を通って移動をするので、合流しょうか?と聞かれたのです。
砂漠を超えて東での用件が片付いた後の帰り道で、役に立つことが有るだろうからと言ってくれたので、お願いしました。
それで先程現在地を尋ねれば、砂漠の中程に居るという事だったので、この場で待っていたのです。
《トカゲさんで飛んどったんやろ?
思ったより進んどらんかったんやね》
《思った以上に砂漠の上を飛ぶのがキツくて、休憩ばかり取っていたんですよ》
《それやったら最初からうちが乗せとけば良かったね。
快適な移動やったらうちらに敵うものはおらんよ》
《そうですね、ブルースも早いし凄いですけど、乗り心地でポニーに敵うものなんていないですよ》
そやろそやろと、嬉しそうに頷くポニー。
《それではまた移動をお願いしますね。
一先ず朝まで休みますか》
《いや、夜の移動でもかまへんよ。
アンタらは寝とってくれれば良いし》
《夜の移動は危なく無いですか?
それに疲れていませんか?》
《ははは、こんな見通しのいい場所で何が危ないん?
せいぜい砂の中から虫やら蛇やらが出てくるだけやろ?
そんなん踏み潰すだけやし。
もうここやったら蛇踏んでも問題無いんやろ?
それにちょっと歩いたくらいで疲れるほど柔なヤツはバスを名乗れんわ》
頼もしい台詞です。
それに砂漠はホルノーンの領地の外ですから、蛇を踏ん付けて死なせてしまっても、捕まることは無いですから、ここはお言葉に甘えましょうか。
《ドドさんの方は良いのですか?》
《あっちはあっちで『王様トカゲを二匹も乗せるバスなんて俺しかいない』って逆に張り切っとるわ》
二匹とも頼もしい限りです。
言葉に甘えて、私達はすぐに移動を開始しました。
相変わらずとても素晴らしい乗り心地です。
日が暮れて寒くなって来たら、花弁をうっすらと閉じてくれたので、寒さが和らぎました。
その上チャックを抱えていますし、そのチャックの胸元にはリンが居ますから、防寒対策はバッチリです。
ゾゾの方を見てみれば、四人は頭まで毛布をぐるぐる巻きにして、くっついています。
ああ、ポニーで良かったと思いながら、眠りにつきました。
翌朝、快適に目覚め、チャックにクリーンをかけてもらい、サッパリしたところで、ポニーから砂漠を抜けたと念話が伝わってきました。
私達は一旦降りて朝食に。
ポニー達にも果物を渡します。
《やっぱり草より果物の方が美味しいわ。
見た事ない果物も有るし、見たことあるやつだって、なんでかしらん美味しいわ》
《なんかさ、山の向こうの果物なんだって。
土地によって魔素が変わるから、味も変わるとか聞いたことあるんだけど、それなんじゃない?》
ゾゾも会話に加わって来ます。
「それはあるかも知れませんね。
私は食事をしないので、味の違いはよくわかりませんけど、同じ原材料のお酒の味が違うと言うことは、原材料になっている果物の味が違うと言うことでしょうから」
実は私も味の違いはあまりよくわからないです。
味がわからないんじゃないですよ?
微々たる差をわかるほどの舌を持っていないだけです。
「あっちの果物の方が味がぎゅっと詰まってるっていうか、味が濃い気がする」
チャックが言いますけど、
「そうか?変わらんと思うけどな」
と大雑把なブルースが答えます。
「果物なんてどれも同じじゃん。
でも肉はあっちの方が美味しいと思うよ」
ああ、大雑把と言うより、ブルースとシナトラは果物の味に興味がないのですね。
そんな会話を少し離れた場所で眺めながらルシーは、
「手掴みで食べてるじゃないの。
道具を使って食べてないじゃない、話が違わない?」
と、ブツブツ言っています。
臨機応変などはまだ無理なんでしょうね。
頑張れ、アインとブルース。
砂漠を出て平原、林、小高い山と越えた先に農業国家のべルージュが有るそうです。
砂漠の東にある国は二つ。
農業国家のベルージュと、交易国家のリアンスです。
広さは二国合わせても、アイン達の連合国の五分の一もない広さです。
ベルージュの国民は、半数以上が農業従事者で、二割ほどが狩人だと言う話です。
東側の食糧庫ですね。
リアンスは漁業と交易ですから、役割が分かれていて、国同士の繋がりも強く、争いなど起こることがないそうです。
ティちゃんの地図によると、砂漠を出た辺りからベルージュの領地のようです。
さて、ダイズスキーはどの辺りでしょうね。
陽が完全に昇って、暑くなってきましたけど、やはりポニーは最高ですね。
花弁を大きくしてくれて、日陰を作り、さらには花びらからほんのり涼しい冷気が。
《そう言えば、見た目の色は使える魔法の種類になると聞いたのですけど、ポニー達は土魔法ではないのですか?》
ポニーはベージュで、ドドは赤茶色ですから、土魔法だと思ったのですけど、座るイス…花を大きくしたりするのは、シナトラと同じ植物魔法なのでは?
それなら緑色系統の筈でしょうから、ふと疑問に思ったのです。
チャック「(…さっきからジョニーがずっと黙っているけど、表情がコロコロ変わっているって事は、誰かと念話中なのかな?
砂漠なのになんだかちょっと寒いんだけど……リンに暖めてもらえばいいか)
リン、少しずつ温度を上げて…………………よし、そこで止まってそのままの温かさでいてね」
リン「チュン」




