クルトゥスさん・4
クルトゥスさんは暫く戻って来ませんでした。
「何なのかしら、最初の出会いがまずかったからなのか、ずっと距離を置いて接してくるの」
「でも、距離を置いている風で、実際は普通に仲が良いんだけどね。
本人は無意識なんだ。
しかもたまにハッと気付いて『馴れ合うのは…』とかなんとか言ってるんだよね。
ホント可愛い」
ライラヒルラさんとファラスさんが笑いながらクルトゥスさんとの関係を話しています。
利害関係だとか、距離をとか言っていましたけど、どうやら普通に仲の良いパーティの様ですね。
「依頼の報酬だって、『僕は血族から領地収入の一部を貰っているから、3人で分けなよ』とか言って、丸々私たちに渡してくるの」
「事情があって住む場所がない自分たちに『何かあった時近くに居るとすぐに合流できるから、城に住むように。これは命令だからね』とか言って無償で住まわせてくれてるし」
「口では利用するとか言ってるけど、住む所どころか、食事や着る物、武器や装備まで揃えてくれてるの」
「なんだかこちらが一方的に利用して搾取してる感じなんだけど」
「本人は気にしていないのか、気づいていないのか」
「「本当に可愛いよねー」」
えーと、30年前には現役の冒険者だったのですから、少なくても彼らよりクルトゥスさんの方が年上ですよね?
親世代?
下手すれば親より年上のはずなんですけど、なんだか……子供っぽい?
「でも優しいよ?」
「ええ、優しいわね。
優しくないとあんな事はやろうとも思わないでしょう」
あんな事とは、アインが調べた事なのでしょうか?
でも、クルトゥスさんが話してくれるまで、こちらから聞くのはやめておきましょう。
和やかに話をしていると、クルトゥスさんが戻って来ました。
「アース達は今日泊まって行くでしょ?
部屋の準備と夕食の準備しているから、もうちょっと待ってね」
私達は顔を見合わせて、思わず吹き出しました。
「「「ぷふふふふふふ」」」
「な、何だよ!人の顔見て何笑ってんだよ!」
「いやいや、クーは本当にお人よ……良いやつだなって」
ファラスさんの言葉に、顔を赤くしたクルトゥスさんは、また部屋を出て行きました。
「ファー、あんまりからかったら拗ねちゃうわよ」
「ライラも思いっきり笑ってたくせに」
「変わってないんだな、アイツは」
ブルースの言葉に、以前のクルトゥスさんの様子を教えてくれと言うライラヒルラさんとファラスさん。
「変わらぬぞ。
お節介でお人好し、たまに空回るが、基本優しい」
「つまりブルースと似た物同士なんですね」
「ぬぅ…」
アインの突っ込みに、食いつく二人。
「え?アーモストさんもそうなんですか?」
「今はブルースさんだろ?
それで、お二人が冒険者をしていた頃は、今から30年前なんですよね?
その頃って………」
二人が尋ねてブルースが答え、アインがツッコミを入れ、和やかです。
子供3人は何やら3人で盛り上がっています。
2メートル近いホラハ君は生まれて二年経っていたいそうです。
170ちょっとのシナトラが一才と数ヶ月、130cm程のチャックが一番年上なんですよね。
えーと、何て言うんでしたっけ?見た目詐欺?
種族によっての体格差で、年齢不詳になりますね。
「そう言やさ、なんであのクルトゥスさん?って言葉の感じが変わるの?」
シナトラがいうのは、言葉遣いが畏まったり砕けたりする事でしょうか?
「仕事の時とかは、きちんとした話し方をしないと舐められるからって、話し方を変えるって言ってたよ」
「あの人もいい歳した大人なんだろうから、使い分けるのは当たり前なんじゃない?」
「そんなもんなの?」
ホラハ君が首を傾げています。
「二人とももう少し大人になったらちゃんと話せる様になんないと、困る事が出てけると思うよ」
「へー、んじゃあチャック兄ちゃん教えてね」
「ボクはファーに教えてもらおっと」
「あのお姉さんにじゃないの?」
「ライラは……怖いから」
「あのお姉さん怖いの?」
「うん、討伐とか行くと『誰に向かって牙を向けているのかしら?身の程を弁えなさい!オーホホホホホホホホホ』とか言いながら魔法を打ち込むの」
「そりゃあ怖いわ」
「怖いね」
「だから逆らっちゃダメだよ?」
「「わかった」」
…………………………………ホラハくーん、声が大きいから、ライラヒルラさんにバッチリ聞かれてますよー。
後でお仕置きされないといいですね。
ライラヒルラ「……ふふふふふ、ホラハったらまったく、人聞きの悪い」
ブルース「ふむ、ライラヒルラにはアインの武器が似合いそうだな」
アイン「もし宜しければ職人を紹介しますよ」
ライラヒルラ「あら、私は魔法使いですから、武器は使わないのよ」
ファラス「因みに武器ってどんなの?」
アイン「私も主に魔法で戦いますけど、槍と鞭を使いますね」
ファラス「………鞭……」
ライラヒルラ「ちょっと惹かれるわね」
ファラス「(シャレにならないから)やめあとこうよ、君には魔法が一番だよ」




