クルトゥスさん・1
私達はギルド内の酒場に移動して待つことにしました。
流石に昼前から酒は飲めませんので、(約二名飲もうとして叱られました)果実水を飲んで待つ事20分程でしょうか、外が騒がしくなったなと思ったら、何が落下する音がしました。
何が落ちてきたのかと思っていると、開け放たれた入り口の扉をくぐって一人の青年?少年?が飛び込んで来ました。
「アース!久しぶり!」
「おお、クー、元気そうだな」
「うん、元気だよ。
それよりまた人型になったんだね」
「おう、今はブルースと言う名で、そこに居るジョニーの家族だ」
きっとこの方がクルトゥスさんなのですね。
どの想像も違いました。
私より少し低いくらいの身長の彼?彼女?は……愛嬌のある顔をしています。
笑顔は可愛いです。
えー、おぼこい感じと言いますか…、昭和っぽい感じと言いますか、田舎の子って感じとでも言いましょうか……、はっきり言って地味です。
私も地味ですけど、更に地味。
モブフェイスとか言うんですっけ?
ウォー⚪️ーを探せでいっぱい描かれている様な、人混みに入ると見分けがつかなくなる感じ。
………あ、酷いこと言ってますね。
余りにも想像と違って特徴がなく、ついつい思考が空回りしてしまいました。
でも、濃い顔のこの町では逆に目立ちますね。
周りを見てみると、先程絡んで来た方々以外も、こちらを見ながらヒソヒソしています。
「知り合いだったんだ」
「あの男何者だ?」
「クルトゥスさんと愛称で呼び合ってたぞ」
「しかしクルトゥスさんはいつ見ても癒されるな」
「本当に。ほっとする顔ですよね」
「ああ、顔が見れてラッキーだったな」
どうやらクルトゥスさんの顔は、この世界では癒し系のようですね。
美形が多いから、逆に地味な方が見ていて落ち着くのかもしれません。
「初めまして、クルトゥス・ルーライオです。
ハルトッシュのリーダーをやっています」
見た目は地味な田舎の高校生って感じですけど、私より年上なのでしょう、落ち着いて話すとイメージがまた変わりますね。
「ブラック・サーベラスのリーダーをやっていますジョニーです、初めまして。
こきらがメンバーのチャックとシナトラで、相談役?のアインです。
皆私の家族です」
私の紹介に、何か気付くものがあったのか、一瞬「おや?」と言う顔をして、ニッコリ笑いました。
「話は場所を移してからにしましょうか。
自宅に招待してもよろしいですか?」
「ああそうだな」
頼むとブルースが言うと、クルトゥスさんは入り口へ向かって歩き出したので、私達はその後を付いていきます。
案内された自宅は……城でした。
そうですよね、この領地の名前は【ルーライオ】ですから、元は【ルーライオ国】で、吸収されて今は領になっているだけですから、クルトゥスさんは王家の血筋の方なんですよね。
城に住んでてもおかしく無いのですよね。
しかしブルースの態度はどうなんでしょう。
会う前はあんなに渋々な感じでしたのに、いざ再開してみると、【ちょっと会うのに間が空いた親しい友人】ですよね。
会いたくないのはポーズだったのでは?と疑いたくなります。
「そう言えば今も冒険者してんの?」
「おお、少し前に再登録してひと月もしないうちに元のランクに戻したぞ」
「さすがアース!」
素直に褒められて、少し照れた様子のブルースが、
「お前だってランク3になったのだろう?
ギルドで聞いたが、ランク2でもおかしく無い働きをしたそうではないか」
そう問いかけると、ほんの一瞬表情を曇らせた後、にこりと笑うクルトゥスさん。
おや?
「城下町に向かって魔獣の大群が押し寄せてね、それをメンバーと解決したら、なんだかランクが上がっちゃったって感じかな」
「スタンピートですか。
それをパーティだけで解決するとは、とても凄いことですよね」
アインが感心した様に言うと、困った様な顔をして頭をかくクルトゥスさん。
「いやー、でも全滅させたとかじゃなくて、ボスクラスの強い個体を倒したら、逃げて行ったって感じだから、実際には7、8匹しか倒してないんだよね」
「それでも凄いと思いますよ」
褒める様に言うアインに、なぜか微妙な顔のクルトゥスさん。
なんでしょう、さっきからの違和感というか、クルトゥスさんの反応は。
「ところでさ、アース……いやブルース達は何か用事があるの?
僕が西から出て国に帰るって言ったら『お前を追い出した様な国に帰る必要はない!どうしても帰るならお前とはここまでだ!我と国とどちらを選ぶのだ!』とか言って名前まで返したのに、また人形になってるし」
えー、ブルース、そんな『仕事と私とどちらが大事なの⁈』みたいな感じで喧嘩別れしたんですか?
それは恥ずかしくて言えないですよね。
「!!!ちょっ!!お前!バカか!
なにペラペラ言っておる!」
「うわー、ブルースのおっちゃんそれはないよ」
「ダサっ」
シナトラとチャックが小声で呟いていますけど、焦っているブルースの耳には届いていない様ですね。
後で二人に本人には言わないように言っておきます。
武士の情けですよ。
扉の外、女「ねえ、これ中に入っていいと思う?」
扉の外、男「うーん、タイミングが難しいよね」
扉の外、男「ねー、ねー、これ重いんだけど、早く中に入ろうよ。ていうか、なのでんで全員分の飲み物持ってんの?」
扉の外、女「あらうふふ、意地悪に決まってるじゃない」
扉の外、男「ふぇ〜、わかっていたけど酷い〜」




