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指名依頼なんですって

「いらっしゃいませ、ユユグルギルドへようこそ。

依頼書と冒険者カードをお預かりいたします」


カウンターの犬ミミ(洋犬系の垂れたミミ)のお姉さんの言葉に、マジックバックに手を入れようとしたら、ブルースが、


「パーティでダンジョン依頼を受ける、俺のカードでも良いか?」

「はい、リーダーの方のカードでなくても、メンバーの方のカードで大丈夫ですよ」

ニッコリ笑ったお姉さんは、依頼書とブルースのカードを受け取りました。

受け取りました………受け取ってカードを目にしたお姉さんは、椅子を倒して立ち上がりました。

ガターーン!!と大きな音がギルド内に響きます。


「ち、ち、…ちょっとこちらへいらしていたたたた」

ギルド中の視線が集まる中、お姉さんはカウンターから出てきて、ブルースの腕をぐいぐい引っ張り奥へ連れて行こうとして、倒れた椅子に脛を打ち付けてしまいました。


「大丈夫ですか?」

「痛いです、けどそれどころじゃ無いんです。

あなた方パーティメンバーですよね?

一緒にいらしてください」


事情はわかりませんが、必死の形相に頷く以外の選択肢はありませんでした。


こちらでお待ちくださいと、応接室へ通された私達は、とりあえずソファーに腰掛け待つことに。

3分もしないうちにお姉さんがモヒカンヤンキーな若者を連れて部屋へ戻ってきました。


部屋に入るなり、モヒカンヤンキーはニヤリと笑って口笛を吹きました。

「ヒュー、強者のオーラビンビンじゃん?

救世主キタコレ」


ニヤニヤしながら、私たちの向かいのソファーに腰掛けて、一旦俯いたかと思うと、次に顔を上げた時にはひどく真面目な表情をしていました。


「ようこそユユグルギルドへ。

私はギルドマスターのシーシャムです。

貴方が王様トカゲだとお伺いし、是非とも指名依頼を受けていただきたいのですが、話を聞いていただけますか?」

おお、言葉遣いも声のトーンも先程と違います。

きっとこちらは仕事用の顔ですね。


見た目は二十歳そこそこなのにギルドのトップだとは、とても優秀な方なのでしょうねぇ。

モヒカンですが。


「指名依頼だと?

我は有象無象のランク6だぞ」

「でも王様トカゲなのですよね?」

「間違いでは無いが、今我はランクアップを急いでおる故、数をこなさねばならる。

よって指名は断る」


ギルドマスターとはこのギルドの一番偉い人ですよね?

それなのに話を聞かずに断るブルース、流石です。


「ランクアップですか?

何か理由でも?」

「プライベートだ」

「思いっきりプライベートだんぐっ」

シナトラの口を塞いだチャック、相変わらずナイスです。


「………では、この依頼を受けていただけて、達成したなら、私の権限でランクアップを約束しましょう」

「我だけでは無い、皆同じ条件だ」

「勿論、依頼はダンジョンについてですので、パーティで受けていただくこととなります。

なので当然パーティメンバーの方も一緒にランクアップ致します」


いくつか討伐依頼をこなして、ダンジョンへも何度か挑戦しないといけないのに、それをトップの権限でスキップさせてもらえるのですか。

こちらとしてはありがたいですけど、ギルドマスターとは権力が有るんですね。


「……そこまでの依頼なのか?」

確かに、こんなに好条件なら、依頼も難しいのじゃ無いのですか?

私達に達成できるのでしょうか?


「……………この依頼を引き受けるパーティがいないのです。

報酬を上げるのにも限界がありますので」

「……詳しく聞こう」


ギルドマスターの話では、二月ふたつきほど前から土属性のダンジョンに、今まで見たことのない新たなモンスターが発生したそうです。

そのモンスターは繁殖力が高く、ダンジョン内はそのモンスターに占領されてしまったとか。

しかもそのモンスター、はちあった冒険者が何体か倒したそうなんですけど、魔石を落とさないらしいです。


魔石も落とさない、数が多い、しかも雑食で、ダンジョン内のモンスターを食べ尽くした後は、共食いをしている……と。

おぞましさに討伐をする冒険者がいなくなったそうです。


魔石を落とさない=収入が無い、経験を積もうにも、モンスター自体は強く無いので戦闘の経験にもならない、しかも不気味とくれば、誰も依頼を受けたくないでしょう。


ギルドとしても回収された魔石を買い取り、それを販売して成り立っているのだから、回収見込みのないダンジョンに出せる予算はそう多く無いので、尚更依頼の受け手が居ないとの悪循環。


「王様トカゲなら、離れた場所からブレスで一掃できますよね?

皆さんまとめてランクアップしますから、受けていただけませんか?

この国では需要が少なくても、魔石は取り引き材料として一定数必要なんです。

このまま放置もしておけません」

どうかお願いしますと、テーブルにつくほど頭を下げるししゃも……シーシャムさん。


ブルースはその下げられた後頭部をじっと見ながら考え込んでいます。

どうするつもりでしょう。

シナトラ「ねえお姉さん、喉渇いた」

ジョニー「シナトラ、真面目な話をしている時はお口チャックですよ」

シナトラ「???口がチャック兄ちゃん?」

ジョニー(あ、しまった、チャックなんてあるわけ無いですよね)「えーと………口を閉じろ」

シナトラ「⁈⁉︎ ハイ………ゴメンナサイ」

ジョニー(あ、そんなキツく言うつもりじゃなかったのに)

そんな落ち込む二人を冷めた目で見るチャック

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