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お薬を手に入れました

シナトラ待望の酒の木は、木の実が中央の窪みの部分に落ちていて、そこで自然に皮が溶け、中の果汁…つまり酒が溜まっていました。

近づくだけで凄い匂いです。


その酒を馬に括り付けていた樽や水筒に入れ、皮が溶けていない実は掬い取ります。

この皮もおつまみとして、宴の肴として並んでいて、大根の日本酒漬けみたいな味で美味しかったです。


それらを全て戴けたので、お礼を告げてチルド庫へ。

飲みたい飲みたいと騒ぐシナトラを宥めて先に進みます。


到着した先にいた動物は、想像通り鹿と言っても普通の鹿だけでなく、ヘラジカと、あれはきっとトナカイですね。

馬は(この場所では)普通サイズの馬と、あの小さいのはロバですよね。


「おお、これは見たことのない魚だな。

そっちのやつと、それと、乾燥したやつを貰おう」

ババ様の弟さん、族長と呼ばれているご老人も、ババ様達と同じように魚を喜んでくれました。


魚介類の代わりに仕入れたのは、ヘラジカやトナカイのツノで作った細工物と、ツノで鞘と柄を作った小振の石のナイフ、それと薬です。


「若い鹿のツノはいろんな病気の薬の核になる。

精がつくからな。

特に男性に需要のある薬には不可欠だ。

まあ、お前達にはまだまだ関係なかろうがな」

ああ、そっち系の薬に鹿のツノとか、アザラシの何ちゃらを使うと、うっすらと聞いたことがあります。


「後は小馬の皮から作った血の薬だ。

特に女性に需要がある」

説明しながら小さな巾着をテーブルの上に並べられました。

二つ合わせて乗せても、掌に収まる大きさです。


「カカルの民の薬だと認められれば、この小袋一つで羊千匹の値段がつく」

羊千匹がどの位の価値かのかは分かりませんけど、凄いと言うことだけは伝わってきました。


「それくらいの価値はあるだろうな。

薬の作り方は同じでも、材料が違えば効能もちがうだろう」

「そうですね、この平原は魔素の濃度が少し濃いですから、薬を作ればよく効く物ができるでしょう」


ブルースとアインの言葉に、族長は頷きました。

「神な魔王様が我らの先祖様に加護を与えてくださった時に、この地も祝福を受けたのだろう。

家畜はよく育つし、我らも怪我をすることはあれど、病に侵される事はないと言ってもいいからな。

男も女も生涯現役と言って良いほど頑丈で、薬要らずだから、薬を作っておる一族は今は我らのみ」


「そんな貴重な薬をいただいて良いのですか?」

他では手に入らないとてもよく効く薬だと言われると、価値の凄さがわかってきます。


「薬は先祖の仕事を忘れない、伝統作業を伝えるために作っておるだけだからな。

たまたま他で高値で売れるから、ごく稀に他国に売って、その金を平原の全ての一族の為に使っておる。

つまり金が必要でない時は、在庫として貯まるだけなんだな。

だから是非神の国…魔王様の国から来たあなた方にもらって欲しいのだ」


そう聞くと、東の魔王とは縁もゆかりもない……いえ、現在の東の魔王は家族ですけど、コニーも紡がれた血族では無いですから、私達が恩恵に預かって良い物なのでしょうか?

躊躇っていると、アインが

「それではありがたく頂戴いたします」

と、受け取ってしまいました。


「貴重な品ですので、使い道は良く考えさせていただきます」

「思慮深そうなあなた方ですから心配はしておらんよ」


族長は朗らかに笑っていますけど、初対面の人間をそこまで信用していいのでしょうか?

西から来たというだけで?


疑問が顔に出ていたのでしょう、はははと笑った族長が、いたずらっ子のような顔で笑いました。

「実は鑑定とまではいかなぬけど、私は相手の種族がわかるんだよ。

魔王と王様トカゲが目の前に揃っているのだから、いい関係を築くのが、我らカカルの民の生き延びる道だろう」


「我は相手が向かって来ぬ限り、物騒な事はせぬ」

族長の言葉に鼻を鳴らすブルース。


「魔王と言いましても、私は山の西のさらに西を治めているのですけどね」

「今も統治なされているのですか?

成る程、噂に聞く分裂をなされたのか?」

「感知したところ、魔族は住んでいる気配はありませんのに、よくご存知ですね」

「知識は宝ですから、伝えられていること、他国から仕入れたこと、一族をまとめる者にしっかりと引き継がれておりますよ」

「素晴らしいですね、カカルの民の方々は」

「ありがとうございます」


握手を交わす二人を、まるで劇でも観ているような感覚で眺めます。

魔王に助けられた一族の末裔だから、魔王は信用できるとの考えなのでしょうか?

そんなに簡単に信用して良いのですか?

魔王だからと言って、全てが良い魔王だとは限らないじゃないですか。

悪い魔王だったら、薬目当てで侵略したり、他国に薬と情報を売ったりとか、何をしでかすかわからないじゃないですか。

こんな事を考える私の方がおかしいのでしょうか?


「大丈夫ですよ、歳をとった分人を見る目も培ってますから。

あなた方は我らカカルの民に害を及ぼす事はないでしょう」


いけませんね、若い人はするりと受けいる事ができても、大人(自分の親世代の年代)はつい穿った見方をしてしまうのは、私の悪い癖です。

好意は好意として、素直に受け入れられるようにならないと。


「難しく考えないで、ありがとでいいんじゃない?」

私がぐるぐるしているのを感じたのか、チャックが小声で告げてきます。


「そうですね、色々と貴重な物をありがとうございます。

大切に使わせていただきますね」

素直にお礼を言うと、それで良いと、テーブル越しに頭を撫でられました。

頭を撫でられるなんて何十年ぶりでしょう。


「色々考えてしまうこともあるだろうがな、人生は案外単純なものだ。

それを単純でなくするのは、自分の中で難しく考えるからだ。

何か単純でなく感じたら、周りの者に声にして言えばいい。

お前の周りに居るのは信じるに足りる者なのならな」


以前にも何度か似たような事を言われたことがあるような。

自身もそれに似たようなことを、新人達に言ったことがある言葉に、私は素直に頷きました。


定年間近まで社会人をやってきた筈なのに、最近ちょくちょくと若造の頃の自分が出てきている気がします。

もしかして、見た目年齢に引きずられているのでしょうか?

ジョニー「チャック、いつも心遣いをありがとうございます」

チャック「な、なんだよ急に!オレ何もしてないから!」

ジョニー「ふふふ」

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