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色で言うなら狐か彗星か

「じゃあその子を連れて行くとして、名前をつけないといけませんね」

空気を変えるためにも、話題変換です。

「ちょっと待ってください、貴方がつけると【名付け】になってしまいますから、ここはチャックが付けることにして下さい」


あー、そうですね、私が付けると亜人化してしまいかねないのですね。

しかも生まれて間もない子なら、意思疎通もできないでしょうし、ここは拾ってきたチャックに任せましょう。


「オレ?」

と驚いたチャックは、掌の上の毛玉をじっと見た後、私を見ました。

「ねえ、この小茶鳥こちゃどりもあんたの世界では別の名前が有るんだよね?」

「……え?今なんと?」

「だから小茶鳥だって」


…こちゃどり……小茶鳥…小さな茶色い鳥、そのままですね。

ツバメなら【小黒鳥】ウグイスなら【小緑鳥】なんでしょうか。


「私の居た世界では、『スズメ』と言いますね」

私が言うとチャックは「スズメ…スズメ……」と小さく繰り返します。

スズメ…あの姿焼きには引きましたねぇ……雀…舌切り雀、雀のお宿、麻雀………これは違いますね。

スズメって身近な鳥なのに、案外関連したものが思い浮かばない物ですね。


「じゃあそのスズメから取って『ズメ』なんてどうかな」

「いや、なんでそっちだよ!」

チャックの言葉に思いっきり突っ込んでしまいました。

私が色々思考を飛ばしている隙に…。

「響きがカッコよくない?」

嗚呼、ジェネレーションギャップ、というより、異世界ギャップとでも言うのでしょうか……、でもズメは無いです。


「カッコいいよね!」

シナトラも同意見なんですか……。

「確かにカッコいいですけど、その子はメスですよ。

可愛い名前の方がいいと思います」

ナイスアインです。

「可愛い名前か……、ねえ、何かない?」

チャックが聞いてきますけど、なんで『スズ』ではダメなのでしょうか?


「これ私が答えて良いんですか?」

「貴方が出した案をチャックが付けるのでしたら問題ありませんよ」

成る程、それなら『スズ』はお気に召さない様ですから……

「スズメ…チュンチュン(パンダか!)……チュン…ちゅん……いやいや麻雀からは離れよう。

鈴…リンリン(だからパンダかよ!繰り返す必要ありますか?)リンでどうでしょう」

「リンリンが可愛いよ」

シナトラの言葉にチャックも頷きますけど、

「呼ぶときにリンリンより、リンの方が呼びやすいと思いますよ」

「そうですね、繰り返すと響きは可愛いですけど、実際に呼びかける時に、短い方が良いかと私も思います。

何より、ブルースが呼んだ姿を思い浮かべると笑えますから」


アインの言葉についつい想像してしまいます。

あのちょいワルイケメンが真面目な顔をして「リンリン」……………。


「ぷくっ!くくくくく」

「ブハッ!!ハッハッハッハッ!」

「あはははは」

「フフフフフフフフ」


小茶鳥は『リン』と名付けられました。

リンは熱魔法を使える様になるそうなので、寒がりなチャックには丁度いいですね。



「戻ったぞ!」

部屋のドアを勢いよく開けて、ブルースが入って来ました。

「ほら見てみるが良い、我はランク6になったぞ」

得意満面で差し出されたカードには、確かにランク6と記載されています。


「たった3日でランク6など、ギルド始まって以来だそうだぞ。

どうだ、凄かろう」

私達は明日試験を受けて、受かればランク8です。

同じ日に登録したのにもう差がつきましたね。

私は素直に言葉にしました。

「凄いですねえ、さすがブルースです」

「ハハハ、そうだろそうだろ、もっと褒め称えても良いのだぞ」


「何を言ってるんですか、元々ランク4ですし、そもそも他の方がランク7から6に上がる為の魔物討伐では、魔物の生息場所に行って探すのに時間がかかりますけど、貴方は一っ飛びで魔物の巣へ行き来できるじゃないですか」

「むっ、確かに魔物の巣へは一っ飛びだが、元の姿に戻るとコイツが居ないと人の姿になれぬ故、今回はこのままで魔物討伐をして来たぞ」

「それでも翼は出したでしょう」

「ぬっ!」


ブルースとアインのやりとりを眺めながら、シナトラの荷物の整理を手伝います。

チャックはリンの寝床をどうしようかと考え中の様です。

リンは枕の上で大人しく毛繕いをしています。

ああ、平和ですね。


といいますか、ブルースは翼だけ出して飛ぶ事も出来るのでしょうか?

今度見せてもらいましょう。


「ん?これは?」

ブルースが毛繕いしているリンを摘み上げ、顔の前へ持って行き、

「今日のオヤツか?」

大きく口を開けてリンを飲み込もうとしています⁈


「だ、ダメですよ!」

「何をやっているのですか!」

止めようと腰を上げた私と、どつこうと手を振り上げだアインより先に、チャックがブルースの腹へ飛び蹴りをかましました。


「オッサン、何したんだよ!」

ブルースの手からリンを奪い返し、胸に抱え込みながら、睨みあげるチャック、なかなか良いガン付けですよ。


「この子はチャックが面倒を見る小茶鳥のリンです。

食べないでください」

「僕だってお腹すいても、チャックもリンも食べないよ。

おっちゃんも食べちゃダメだよ」

シナトラにまで嗜められています。

……いや、シナトラ、チャックも獲物枠に入れるのはどうかと思いますよ。


「新しい家族かよ、なら何故亜人化せぬのだ?」

「……その下りはもう終わりました。

居なかった貴方が悪いのです。

さ、夕食へ出かけましょうか」

「おい!我の扱いが雑だぞ!

おい!おい!」


文句を言うブルースを無視して、アインはチャックとシナトラの背を押し部屋を出ます。

私も後を付いていきながら、振り返り、ブルースに一言……なんと言えばいいのでしょう、こう言う場合。


「ええと……ドンマイ」


かける言葉を間違えたのか、ブルースが膝から崩れ落ちました。

何も言わない方が良かったですかねえ……。



ちょっと拗ねてしまったブルースを連れて食事へ出かけました。

最短ランクアップ祝いだと、上等な酒を思う存分飲んでもらい、食事処を出る頃には、ブルースの機嫌も治っていました。


「私達も明日試験に受かれば、ランク8になれるのですよね」

「そうだな。

8から7へは、規定動物の討伐…狼や熊などの討伐だな。

7から6へは魔獣討伐だ。

そこから先はパーティ依頼をこなす必要がある。

我らもパーティを組むか?」


パーティーと言われて、祝宴を思い浮かべたのは最初だけです。

流石にもう理解していますよ、この場合のパーティーとは、チームのことですよね。


「私達5人で、ですよね」

「いえ、私は冒険者登録しませんので、私は数に入れないでください」

「アインは立場上冒険者は無理だな」

ああ、そうですね、アインは魔王様でした。

「分裂して別人になったとは言え、あまり歓迎されませんからね。

戦力として数えていただくのは結構ですが、メンバーはご辞退させていただきます」

色々なしがらみもあるでしょうから、ここは納得しておくところでしょう。


「では四人でパーティーですね」

「ギルドでパーティ登録すれば、パーティ依頼も受けれるぞ。

そうすればランクも上げられるからな。

登録するためにもまずパーティ名だな。

宿に戻って話し合おうか」


パーティー名ですか……ふふふ、昔を思い出しますねえ。

チーム名を決めた時も、ヘッドや特攻隊長達とあれこれ意見を交わしましたね。

こちらの世界ではどんな名前の付け方をするのでしょうか。


ー補足小咄ー

ジョニー「リン…漢字にするなら凛ですね。カッコいいですねぇ」

チャック「漢字の名前ってヤツの丈二がカッコよく無いから、ジョニーにしたとか言ってたじゃん?漢字ってカッコ悪いものじゃなかったの?ー

ジョニー「丈二はカッコ悪いけど、凛はカッコいいじゃないですか」

チャック「よくわかんないよ」


ー補足小咄、2ー

ジョニー「パーティーってチームの事なんですね。夜会とか舞踏会とかの事かと思いましたよ」

アイン「チームがよくわかりませんけど、そちらは【パーティー】で、こちらは【パーティ】ですよ」

ジョニー「 ? ですから、パーティーですよね?」

アイン「パーティです」

ジョニー「パーティー?」

シナトラ「父ちゃん訛ってる?」

ブルース「発音が違うのでは無いのか?」

ジョニー「……パーティー…パーティー……パーティ」

一同「そうそれ」

ジョニー『何が違うのかわかりませんよ』

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