アイン達と合流しました
町外れにある小さな林にシナトラ達は居ました。
アインが剣の振り方や、踏み込み方を教えていますけど、ブルースの教えとは違うというのが見てわかります。
ブルースは力押し?でアインは技巧?とでもいうのでしょうか。
「お疲れ様です」
声をかけながら近づきましたけど、アインは不思議そうな顔をしています。
「『お疲れ様』ですか?
いえ別に疲れてはいませんけど」
ああ、普通に挨拶の枕詞の様に使っていますが、これって日本独特なんでしょうかねえ。
とりあえず言いますよね。
なんとか説明しましたけど、
「それなら『こんにちは』『よう』とかで良くない?」
と、チャックにも言われてしまいました。
異文化ですねえ。
「ところで父ちゃんの武器出来たの?」
会話の内容に興味がないのか、意味が通じていないのか、シナトラが話を変えて来ます。
「ええ、コレです」
マジックバッグから鉄パイプを取り出して、二人に見せました。
「変わった武器ですね、見たことありません」
アインが繁々と眺めながら言います。
まあ、正確には武器ではないですからね。
「これ、どうやって使うの?」
「殴ります」
シナトラの問いに簡潔に答えます。
「え?殴るだけなら棍棒とか、槌で良くない?」
「見た感じ多少の重量は有りそうですが、細いですし……武器として使えるのですか?」
チャックとアインも不思議そうに鉄パイプを眺めています。
「これが使い慣れてますからね」
見ていただいた方が早いかと、近くの木の枝…私の腕の太さ程あるでしょうか、丁度殴りやすい場所にあったので、振りかぶって殴りつけます。
呆気なく枝は折れました。
ついでとばかり濁り変えて、幹にL字の先端部分を振り下ろします。
ドゴッ!!
鈍い音を立てて曲がった部分が食い込みます。
うん、これは人に振り下ろしてはいけませんね。
「剣の様に斬れませんが、これで足の骨を折って動きを止められますし、曲がった部分で引っ掛けて転ばすこともできます。
頭を狙えば魔獣でも、一撃での殺傷能力はなくても、脳震盪くらいはおこせますね」
そうそう折れない、曲がらない、剣などと違って切れ味が悪くなるとか言うことも有りませんし、動物を狩る時や、魔物の相手なら、狙う場所を気にすることも有りませんね………フハッ。
「あ……あんた、また怖い顔になってるし!」
チャックに服の裾を引っ張りながら言われました。
周りを見てみると、キラキラした目で「スゲー」と言ってるシナトラと、体ごと後ろに引いているアインが居ます。
私、何か変でしたかね?
林の木を獲物に見立てて、シナトラは剣を振り、私は鉄パイプを振っています。
少し離れた所では、チャックはアインに短剣の使い方を教えてもらっています。
「アインは剣だけではなくて、短剣の指導もできるのですね」
ひとしきり鉄パイプを振って感覚を取り戻した私は、休憩がてら話しかけてみました。
「長く生きていますからね、色々試してみたんですよ。
その結果自分に合うのは中距離の武器だと思いましてね」
「でも攻撃魔法も出来るとブルースから聞きましたよ。
器用なんですね」
「ジョニーも色々な魔法が使えるのでしょう?」
「イメージ出来る物なら何とかなりますけど、攻撃にどういった魔法が効果的なのかなどわかりませんから」
短剣を振り抜きながら、チャックが横目でこちらを見ています。
チャックには失敗も色々と見られていますからね。
「魔法と言えば、この二人にマジックバッグを作ってやってくれませんか?」
アインは献上品で中くらいの容量のマジックバッグを持っているそうです。
ブルースも、以前冒険者をしていた時の物があるけれど、容量は少ないので、私に大剣を預けているそうです。
一般的には、集団で3人が持っていれば問題はないそうなのですが、いざという時のために、容量は少なくても良いので、個人で持っていた方が良いそうです。
旅の途中で、割れ物や嵩張る物が手荷物に無いと楽ですからね。
問題はないので、了承しました。
宿に戻るときに雑貨屋に寄り、チャックとシナトラの鞄を購入しました。
チャックは私と同じ、ウエストポーチで、シナトラはリュックです。
「ねえねえ、これ何入れるの?」
カバンの中身と言えば、ハンカチにティッシュ、メモに筆記具、財布と名刺入れと携帯と、タバコとライターと、息のケア品に電動シェーバー、共用アダプターとコード……。
この世界ではどうなのでしょう?
答えを求めてアインを見ました。
「私は身分証明のできる物と、換金アイテム、ポーション類と、予備の武器、ロープと水……そんな感じですかね。
貴方達なら後は携帯食などを入れておけばいいでしょう。
逸れた時のためにも、換金アイテムと、水と携帯食は持っていた方が良いですし、身分証明……ギルドカードも無くさない様に入れておくといいと思いますよ。
後は武器が壊れたり、何かで使えない時のための補助武器も必要かと思います。
他はそれぞれですね」
アインにはいつも助けられますね。
今上がったものは、携帯食以外入ってますね。
携帯食ですか、小腹を満たすためと、時短のための、カロリーバーとか、何ちゃらゼリーみたいな感覚ですね。
こちらでは乾燥した木の実とかですか。
私の考えていることがわかったのか、
「冒険者ギルドの販売部で、冒険者に必要なものは売っているはずですよ」
と教えてくれました。
痒いところに手が届く、と言うやつですかね。
アインは本当に助けられてばかりです。
「あと、ジョニーは武器も使わない時は入れていた方が良いと思いますよ」
とのアドバイスもいただきました。
確かにこのまま鉄パイプをズルズルと引きずっていると、職質を受けそうですからね。
……気持ち的にはザリザリ言わせながら引きずって歩きたいのですけど…………異世界と言えどもよろしくないでしょうね。
ちゃんと鉄パイプはマジックバッグにしまいましたよ?
アイン「何故中が空洞なのですか?」
ジョニー「鉄パイプだからです」
シナトラ「何で先っちょ曲がってんの?」
ジョニー「鉄パイプだからです」
チャック「……どんだけその武器が好きなんだよ」
ジョニー「………………フハッ」