持ち物と自分を調べてみた
眩い光が収まりそっと目を開けますと、そこは森の中でした。
ここはどこで、これからどうすればいいのでしょう?
辺りを見回しても人っ子一人居ません。
取り敢えず移動をしようと、足を一歩踏み出せば、足元にリュックが一つ置いてありますね。
どうやらこれをいただけるようです。
荷物を確認する為に、地面に腰を下ろそうとして気づきました。
「体が軽い……?」
最近、不摂生で急激に太った事と、年齢のせいで、腰痛とひどい肩こり、それに突き出たお腹で動くのに難儀していましたけれど、不快感が一切ありません。
何よりお腹がぺったんこです。
視界に入った手も、お風呂で水を弾きそうな、ピッチピチな肌質です。
顔を触ってみてもすべすべです。
髭も生えていないようですね。
どうやら【この世界で生きていく為に行動し易い年齢】になったのでしょうか?
着ている物は、茶色い貫頭衣?と言うのですかね?それとダブっとしたズボンです。
ボタンもファスナーもベルトも無く、ウエスト部分に付いた紐を縛って、ベルト代わりにしているようです。
真っ直ぐ縫うことさえ出来れば作れそうな、簡単な衣服ですね。
ところで私は幾つくらいになったのかを確認したいのですが、鏡など持っていませんし……あ、荷物の中にありますかねえ。
地面に座り、荷物の確認のためにも、リュックの中身を全て出してみました。
着替え一式が三組み、タオル…いや手拭いが三枚、毛布のような布、中くらいと小さい鍋とコップが重なっていて、その蓋のように皿が2種類、果物ナイフのような物と、サバイバルナイフ、水筒、ウエストポーチ、健康ドリンクの入っているような小瓶が三つ、小袋に入った草?と丸薬、別の小袋には、色とりどりの小石?
鏡は入っていませんでした。
お金も入っていません。
もしかしてこの色とりどりの小石は宝石で、それが通貨なのでしょうか?
そうだ、わからないことは調べればいいのですよね?
早速小石に向かって「鑑定」と唱えてみました。
すると文字が浮かびましたので、読んでみます。
【世界共通換金アイテム
人、亜人の暮らす町や村で換金できる宝石
日本円に換算した場合
水晶 1万
色水晶 5万
アゲート 10万
翡翠 10万
エメラルド 10万
トパーズ 10万
ルビー 50万
サファイア 50万
ダイヤ 100万
基本的金額設定は、0.2グラム( 1ct )
重さ(大きさ)により価格は上がります 】
と出ました。
10万が多いですね。
町へ着いたら換金すればいいのですね。
きっとこの小さな石……宝石一つで10万とかするのでしょうから、お金で持ち歩くより、移動する時は嵩張らないのでしょうね。
そうだ、鏡の代わりに自分に鑑定をかけてみるのはどうでしょう?
一度試してみましょう…「鑑定」と唱えると、表示が切り替わりました。
【名前 (後藤 丈二 この世界用の名前を設定下さい)
年齢 19歳
種族 人族・男性
職業
健康状態 良好
隠匿情報
スキル タブレット・小 亜人化 言語変換 鑑定・小
魔法 火属性・小 水属性・小 風属性・小 土属性・小
特記 異世界転生者
寿命 残り10年 】
成る程、歳は19歳ですか、随分とまあ若くなったものですね。
少し気恥ずかしいです。
種族は亜人…人の亜種がいるようなので表記されるのですね。
職業はまだ仕事についていませんから空白ですか。
いくつかの物に【小】と付いていますけれど、これは熟練度みたいな物なのでしょうか?
使っていくうちに【中】【大】となっていくのでしょうね、多分ですが。
後はこの魔法……ですね。
これは一度試してみた方がいいですかねえ。
いざ使う場面で、ぶっつけ本番は不安ですから。
そうすると、やはりあのタブレットを使わないといけませんよねえ……苦手と言えども、必要なら慣れないといけませんから、諦めましょう。
「オープン」
目の前にパソコンの画面のような物が浮かんでいます。
……鑑定と被ってしまっていますねえ。
鑑定画面はどうやって消すのでしょう?
消えろ、と思えば……あ、消えましたね。
タブレットの画面に人差し指を当て、【魔法の説明】と書き込みました。
すると画面が切り替わり説明文が出てきたのですが……。
【魔法発動に関しては貴殿らも予測できている通り、強固なイメージが出来ることが大前提となっている。
尚且つその上で発動に必要な魔力と、トリガーとなる言語が必要となる。
発動に関しては、言語で有ることが必要不可欠となる、すなわち『言葉』として口にすることが必須条件だ。
一部の者からすれば、無詠唱でも発動可能で有るはずだとの意見もあるだろうが、イメージを具現化する為、それが何で有るかを周知させて初めて、魔法としてその現象が現実に具現化するのである。
即ち発動に対する言語は…………… 】
………すみません、理解が追いつきません。
私は一度モニターから視線を外し、親指と人差し指で、目をマッサージします。
魔法は使ってみたいですけれど、このまま読み進めても、理解できると思いません。
むしろ、この先全ての説明がこの様ですと、タブレットを投げて壊してしまうかもしれません。
……いえ、物体ではないので壊せませんが。
何にせよ、説明を読まなければならないのには代わりませんので、諦めて視線を戻します。
ふと、画面の隅に星印が点滅しているのに気付きました。
何なのでしょうか、取り敢えず押してみます。
すると【設定】という項目が出てきました。
その項目を押すと【表記】の文字が出てきて、その横に【厨二言語】【初心者向け言語】とありまして、今は【厨二言語】が光っています。
それが何なのかはわかりませんが、ひとまず私は全くの初心者なのですから、【初心者向け言語】を押してみることにしました。
そちらが光ったのを確認してから、【魔法の説明】へと画面を戻します。
すると、先程とは違った文章が浮かんできました。
【魔法を使うには、どんな魔法にしたいかを思い浮かべましょう。
頭の中に細かい部分までキチンと思い浮かばないと、魔法にはならないから、ハッキリくっきり思い浮かべようね。
そしてその魔法に名前を付けましょう。
頭に浮かんだ魔法を魔力を込めて「これはこんな魔法だよ」と口にすれば魔法が使えるよ。
口にしないと、周りの人には君の頭の中なんてわかんないから、必ず口にしようね。
言葉は長くても短くてもいいんだよ。
説明文でもいいし、一言でもいいど、大切なのは、どんな感じのなんて魔法を使うよと、ちゃんと自分が分かっていて、周りもわかること。
もちろん他の人と同じ言葉でも大丈夫。
さあ、まずは安全な水の魔法から練習してみよう 】
初心者というよりも、子供向けの様な気がしますけれど、こちらなら私にもわかります。
言語の設定はこのままでいきましょう。
主人公のステータスは、案内人が【素人でも分かる表示】にしているって感じです。
「あ、コイツおまり詳しくごちゃごちゃ書いても通じねえ」
と思い、他の物の鑑定結果なども、分かりやすくを第一にしている……と思っていただけたら幸いですね。