お酒は楽しく飲みたい派ですよ
結局シナトラは買い物をしませんでした。
別にお金はすぐにつかわなければならない訳でもありませんし、人の住む場所に慣れると、その内お金でのやり取りを感覚として理解できるか、欲しいものが出来れば、その時に使えばいいのですからね。
「今までと全く違った生活形態ですから、『これはこう言うものだ』と言われて理解しても、納得するまでには時間がかかるでしょう。
これから亜人として生きて行く内に色々学べばいいと思います。
私も学ばなければならない事は多いですから、一緒にこの世界の生活に慣れていきましょう」
シナトラの背中をポンポンと叩きながら言うと、
「父ちゃんも分かんない事あるの?」
小首を傾げて聞いてきます。
「ええ、知らない事だらけですよ。
だからブルースやアインに色々教えてもらってばかりです」
私が頷きながら言いますと、シナトラは、
「そっか、父ちゃんも知らない事あるんだ。
僕と一緒なんだね?
じゃあ一緒に知っていこうね!」
暗い表情だったシナトラに笑顔が戻りました。
彼の屈託のない笑顔は可愛いですね。
シナトラが買い物をしないのなら、私の武器を作ってもらうために、先ずは武器屋へと向かいます。
組合の登録しているお店で、欲しい武器の説明をすると、特注になると言われてしまいましたけど難しいものでも無いから作れるだろうと、お店の契約鍛治師の工房を紹介していただけました。
工房で鍛治師の方に、素材と形状を告げると、それなら二日程で出来ると言われました。
支払いは、素材の料金と鍛治の作業代など合わせて、後払いだそうです。
勿論その場で注文しました。
詳しい使用方法、全体のサイズ、重さ、握り部分のサイズやそこに巻く革を選んだり、納得いくまで話を詰めました。
自分専用武器、しかも特注品、それだけでワクワクしますね。
2日後が楽しみです。
そのままちょっと早い夕食を済ませ宿に戻りました。
宿に戻ると、一階の酒場でアインがお酒を飲んでいたので、合流します。
私の感覚からすれば、19歳は未成年なので、飲酒はできないと思ったのですが、この世界での成人は、種族によって変わるそうで、人族は16歳だそうです。
それなら堂々と飲めますね。
獣人は独り立ちしたら大人だそうで、シナトラも飲んでいます。
チャックも翼族では成人済みなんだそうですけど、亜人化して見た目が10歳くらいですから、ウエイトレスさんに断られてしまいました。
チャックは無言でギルドカードをウエイトレスさんに見せると、彼女は謝ってから酒を持ってきてくれましたけどね。
「別に酒が飲みたかったわけじゃないけど、子供と思われるのがムカついた」
そう言いながらチャックは果実酒を飲んでいます。
翼族での成人は、生まれて一年だそうで、それならチャックは成人して随分経つと言うわけですね。
それならプライドを傷つけられてしまいますよね。
私も見た目でついつい子供扱いをしてしまいますから、気をつけないといけませんね。
「父ちゃん、明日は何するの?」
お酒を飲んで上機嫌のチャックが聞いてきます。
アルコールのせいか、機嫌が良いせいか、少し声が大きかった様で、周りのお客さんの視線を集めてしまいました。
「父ちゃんって、あんたコイツの親なのか?
コイツの方が年上に見えるけど、あんた魔族なのかい?」
隣のテーブルの男性が声をかけてきました。
「いえ、人族ですよ。
シナトラ…彼は私の息子ではないのですが、家族なんです」
「なんだなんだ、訳アリなのかい?
聞いてすまなかったな。
ちょっと気になっちまったんだ、気に障ったなら謝るぞ」
「大丈夫ですよ、気にしません。
血が繋がってなくても、種族が違っても、この二人は私の大事な家族ですし、あちらの二人はとても頼りになる仲間なのですよ。
呼び名は違いますけど、私にとってはなくてはならない大切な人達なのです」
私も酒が回ったのでしょうか、ちょっと身内自慢をしてしまいました。
「兄ちゃんいいこと言うね!
よし、気に入った!
一杯奢らせてくれ!」
男性は私の肩をバンバンと叩いて笑っています。
こう言うノリは大好きです。
私はその男性をテーブルに誘って、夜がふけるまで飲み明かしました。
ジョニー「こう言うの良いですよね、前の世界だと酒の席でも「アルハラだ」とか「何このオヤジ」みたいな感じで盛り上がらないんですわ」
シナトラ「えー、なんだかつまんなさそう」
見知らぬ隣人「よくわからんが、兄ちゃん堅苦しそうなトコから来たんだな、まあ飲め飲め」
ジョニー「ありがとうございます、カンパーイ!」
一同「カンパーイ」