あれから3年経ちました
子供達を保護して3年が経った。
色んな職場で見習いだった子達は、殆どが見習いを卒業して立派な社会人として働いている。
一部だが、やりたい気持ちはあっても腕が追いつかず、見習いのままの者も居る。
年長者では所帯を持った者も居るし、町を出て他の国へ移住した者も居る。
少し寂しいけど、行きたいところへ行き、やりたい事をやり、自由に生きてほしい。
町の噂を聞き、引っ越してくる者も多く、希望者は面談をし、問題がなければ受け入れている。
住民が増えて、町も規模を広げた。
……うん、広げたと言うか、また町をつくった。
いや、ほら、こんなに規模が大きくなると思わなかったから、町の外をほぼ畑や果実園で囲んでる。
「結構な広さの畑を挟んで家を建てるなら、いっそ町にしちゃえば?」
と、祭りに遊びに来てたマークスさんが軽ーく提案して、あれよあれよの間に、町をつくる事に。
しかも三箇所も……。
一箇所はリーガルリリーから南へバスで半日程行った所。
森と泉に囲まれた場所で、凶暴な魔獣が蔓延る古いダンジョンが有る場所だ。
以前は村がいくつかあったらしいが、偶にダンジョンから魔獣が出て来て村を襲うので、今では廃村だ。
凶暴な魔獣…と言っても、パワーアップしているうちの家族の前には子犬同然。
ガンガン狩り、アインに言われるままにダンジョンの魔素溜まりを半分封印したらあら不思議、町の冒険者でもクリアできるダンジョンに生まれ変わりましたよ。
そこに先輩がこじんまりとした青い城を建て、周りの住居は先輩の弟子達が次々と建て、あっという間に町の完成。
町の名前は【ブルーシャトー】……先輩の命名です。
主に冒険者が住む事になりそうだ。
二箇所目は、柔木の木こりの村の村長が、過疎化に困り、合併して欲しいと申し出て来たので受ける事にした。
過疎化の原因の一部が、若者がリーガルリリーに引っ越した事だったのは申し訳ない。
「仕事なんてやれと言って無理矢理やらせても、長く続くものでもなし、木こりをやりたく無いと言うのなら、継がせるのは諦めるしか無いですわ。
それならやりたいと言ってくれる方に仕事を譲りたいですからね。
こんなちっぽけな村ですが、無くなるよりは新しい町として生まれ変わる方が、曾祖父さん達も喜ぶでしょう」
お茶を飲みながらほのぼのと言う村長は、3年で随分とくたびれてしまったように見える。
コルクを大量に発注し過ぎたかな…。
申し訳ない。
コルク以外にも、建材や薪や家具など、木を使う事は多いから、そちらの町は、木こりと木を使う職人達を集めた町にする事になった。
男性の多い町だ。
住居は特色を出す為にと、木造建築ばかりで、町と言うより里って感じになった。
職人の里は、村長の曽祖父の名前を付けさせてもらい、【タケコの里】………曾祖父さん タケコって言うのか……………。
三箇所目は、タケコの里の話を聞いた、光布を生産している集落から、
「うちも町にしてくれないかな」
と話が有ったので、乗らさせてもらった。
カカルの民のババ様と話し合って、共同で新しい織物を開発できないかと、お互い数名ずつ出向し、技術交流をする事に。
この町はファッションの町として、織物職人や染め職人、デザイナーやお針子さんや細工師さんが主な住人となる。
町の名前は妻と先輩と話し合った。
「ファッションって言えば何が浮かぶ?」
「ミラノとかパリコレかしら」
「渋カジ」
「そのままってのはどうかと思う」
「パリコレって、パリで開催するからでしょう?
ならこの国なら【ロスコレ】になるのかしら」
「もうそれで良く無い?
俺にファッションなんて振るのが間違ってる」
「てか先輩渋カジとか着てたんだ。
ライダースとかスカジャン派だと思ってましたよ」
「お、俺は着てない!
そんなナンパな物着るわけないだろ」
「あら、ジョニーは着てたわよね」
「………バラさないで下さい……」
いや、ほら、ツッパリとしては、一般のヤローの着る服は「スカしてんじゃないよ!」って思ったりしたわけですよ、とっぽってたからねえ。
そんなこんなでつい最近 ロスコレ が完成した。
そして今現在、先輩がメチャ張り切って、リーガルリリーに城を建設中です…。
「アインさん達にも前から言われてたんだろ?
お前はこの国の5人目の王様だって。
ならやっぱり城に住まなきゃだろ。
この3年でこの世界の建材の特徴も掴んだし、ここは俺に任せろ!」
その先輩の宣言に、町中の大工だけでなく、ガラス職人や、木工職人、アイライラさんら織物職人さん達も乗っかって、町の外れに城を建てている。
今の家があるから要らないって言う申し出はシカトさた。
今の家は学校になる予定。
日本の学校みたいなのじゃなくて、カシウさんがチャック達に教えてた感じのやつ。
読み書きや、簡単な計算、後は職業訓練所のような感じで、色んな仕事の基礎を学ぶ場所となる。
元々余っている部屋の半分は、今でも宿泊施設として使っている。
連泊は可能だけど、素泊まりオンリーだ。
未だに町に宿屋は一軒しか無いんだよね。
だって、建物準備して、各部屋適度な防音、鍵もしっかりして、ベッドやカーテン、テーブルなんかもいるだろうし、替えのシーツやなんやかや、設備投資が結構かかる。
おまけにシーツなどの洗濯物は毎日出るし、掃除も大変、食事付きとかになるともっと大変だし、故意で無くても部屋の中を汚されたり破損される事もある。
……どんな仕事も大変だけど、自分で宿屋をやる、というのは俺ならごめん被りたい。
でも宿泊場所が無いと困るので、余っている部屋を使う事にしたのだ。
各部屋鍵もちゃんと付いてるし、元々ベッドや机なんかも各部屋に有るからね。
仕事は分担で、掃除も洗濯も、それぞれ別に人を雇っているから、負担は減るし、住民への仕事の斡旋にもなっている。
食事は、うちの町は食事処は沢山あるからそちらへご案内、って感じだ。
これをもうちょい本格的にやっても良いかな、管理人?宿主?を雇って。
俺たち家族が引っ越した後も、家族の部屋はそのままにしておく。
城へ引っ越したとしても、ここはここで【俺の家】だからね。
さて、長々と思いつくまま書いてきましたけど、次回最終回です。
フラグは回収……出来なかったのが一つ、タイミング的に入れられなかったのが、人族の国の結末を簡単に…。
王妃は子供の頃ホルノーンから魔位の家に入っていて、蛇の亜人と言うことを隠して人族と偽り、じわじわと国に入り込む予定でした。
表立って蛇の亜人と公表していなくても、結果的に他の種族を追い出してしまえばいいと考えて行動していた。
しかし第一王子を産んだ後、子供に固執して侵略は中途半端、結果的に自分の周囲だけしか影響を及ぼすことができず、王様も取り込めなかったと。
そんな感じの話を入れるタイミングが……。
構成力を養うのが今年の目標です。
ではあと一話お付き合いのほど、宜しくお願いします。




