子供の身の振り方 後編
俺達が保護して来た4人の子供達なのだが、俺が直接保護した2人は、施設からの移動中に、騒がれるといけないからと、強力な眠り薬を飲まされていたらしく、施設を出てうちで目が覚めるまでの記憶がないようだ。
あの館の状況を何一つ見ていない事は、良かったな。
ブルース達が保護した2人なのだが、こちらはトラウマが残ってしまったようだ。
女の子は大人の男性に嫌悪感を持つようになっていて、男の子の方は大人の女性が完全にアウトだ。
このまま引きこもりコースかと思っていたところ、2人の人物が引き取りたいと申し出て来た。
1人は確か面接で、男性に浮気されて故郷を出て来たと聞いていたのだが、今回詳しく話してくれた。
彼女は西の大森林の向こう側の国で、位持ちの令嬢だったそうだ。
幼い頃からの婚約者がいたのだが、男性が浮気をして、あまつさえその浮気相手に嫌がらせをして、命まで狙ったと冤罪を着せられ国外追放。
そして港町にたどり着いた所、この町の話を聞き住民に申し込んできたと。
話を聞いた先輩が「ラノベかよ」と言ってたけど、日本ではそんな小説やゲームが若い子の間で流行っていたそうだ。
話が逸れたが、その女性は追放からの長旅で、危険な目に遭っては返り討ちをしていたそうだ。
今では立派な女性冒険者として働いていて、女性だけのパーティを組んでいるとか。
「男なんかに頼らずに自立して、自分のことは自分で守って、男なんていなくても幸せになってやるんだから!」
と鼻息荒く宣言していたその女性に、シンパシーを感じたらしく、女の子…リンダは女性冒険者となるべく、彼女について行った。
うん、達者でな。
男の子の方なのだが、今はヨーコーの店の2階で、彼と一緒に暮らしている。
実はヨーコー、ずっと隠していたのだが、彼らと同じく施設で育った【間引かれた子】だった。
「港町に流れ着いた時に、過去の事は全て捨て、新たに生きようと思ったのです。
名前も自分で付けました。
でも、施設で読み書きなどの教育は受けたけど、生きていく術は何も知らず、仕事に就けず行き倒れになる寸前に、ジョニーさんに救ってもらったのです」
今回もなるべく携わらないようにしようと思っていたそうなんだけど、ヨーコーも小児愛者の元に引き取られて、虐待を受けていたそうだ。
予想外にニョキニョキと育ってしまい、性的対象から外れると、今度は憂さ晴らしの対象とされ、折檻を受けていたと。
そこを何とか逃げ出して、生きていく気力がなく海に身を投げたのだが、港町へ流れ着き助かった。
それなら以前の自分は死んで生まれ変わったのだと生きようとしたのだが、上手くいかなかったと。
似たような環境になりそうだった男の子の事を、他人事だと思えなく、自分のことを打ち明けて、子供を引き取る事にしたらしい。
ヨーコーの店の2階なら、引きこもっていても店からの喧騒が聞こえて来て寂しくないだろうし、覗き見したり、女性が居ない時は店に居たり出来るから。
うちは奥さん居るし、相談事を持って来たり、商品の配達などで大人の女性が出入りする事多いからね。
ここはヨーコーにお任せです。
そして真名を付けてしまった子達なんだけど、家政婦…いやメイドの様に家の中で掃除や洗濯、お茶の準備や来客の対応などをしたいと言うキャロルとマギーと、ローリーは、希望通りメイドさん。
シーラは妻に薬作りを習っている。
男の子は、計算の得意なエーキチと、力自慢のビリーが、北西のログハウスの場所でやろうとしている、サーベラス商会の出張所(お土産物屋さん的な?)の店長候補として修行?を。
食いしん坊のジェームスには、うちの台所を任せる事に。
植物魔法が得意なルイジと水魔法の得意なレオは家庭菜園(という規模を超えているが…)とガーデニングを任せて欲しいと。
最後のイースターは、アインとコニーの元で町の経営の事務作業を勉強している。
本人は「執事を目指します」と言っているので、学びたい事は自由に学ばせる事にした。
つまり、真名を付けてしまった子達は、俺の元から離れたくないとの事。
この先はどう変わるかわからないけど、本人達のやりたい事をやらせる様にしている。
あ、勿論よそに働きに出た子も、住み込みの子や養子に出た子以外はうちで寝起きしてるよ。
だってここが皆の家で、俺が…俺達が皆の親だからね。
100話以上前のヨーコーのフラグをやっと回収出来ました。
東から来た…で予想できていたでしょうけど、ホルノーンの血筋を引いているけど、役に立ちそうにないと生まれて直ぐに親から見放された子です。
そして女の子の引き取り人は、悪役令嬢…これは単なる思いつきです。