表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
198/231

妻視点 2

誰かに呼ばれた気がして、気付いたら、見知らぬ部屋で寝かされていました。

ここは何処なのでしょう?


「……百合江………」


名前を呼ばれ、そちらへ顔を向けると、そこに居たのは…


「あらあらあなた、随分と若くなったのね」


籍を入れた頃の私の旦那様が居ました。

泣きそうな顔で、ベッドで横になっている私を覗き込んでいます。


「こんなにすぐにあなたに会えるなんて、ここは天国なのかしら?」


でも私の方が先に亡くなったはずですよね、なぜ旦那様の方が先に居るのかしら?


「……ああ、そうだね、ある意味天国かもしれないね」


涙を浮かべて微笑む旦那様は、見た目こそ二十歳はたちくらいですけど、この微笑み方は長い月日を一緒に過ごした後の表情かおですね。


それにしてもここは何処なのかしら?

よく見てみると、見知らぬ男の方がいらっしゃいますね。

髪の色がとてもカラフルですから、バンドか何かをやっている方々なのでしょうか?

でも顔付きを見ると外国の方のようです。


あらいやだ、私ベッドに横になったままだわ、恥ずかしい。


私が身を起こすと、紫色の髪の毛の、小学生くらいの男の子が、クッションを背中にあてがってくれました。

その男の子に旦那様がお礼を言ったわ。


「ありがとう、チャック」


男の子の名前はチャックと言うのね、懐かしい名前ね。


「ジョニー、私達は部屋へ戻りますね。

ゆっくりと話をして下さい」


白い髪の男性がそう言って、他の方と部屋を出て行きます。

あら、後ろに居たから見えなかったですけど、可愛い男の子が2人居たのね。

一人は5、6歳くらいかしら、白い髪の男の子?それとも女の子かしら?

その子より小さな2歳くらいの男の子は、黒いクルクルとした巻毛で、頭に何かオモチャが付いているわ。


7人の男性の方が部屋から出ると、旦那様は私の手を両手で包み込み、ゆっくりと、話を始めました。




旦那様があれから一年後に儚くなった事、不思議な方によって、この世界に来た事、この世界が別の世界である事、見た目年齢が若返った事、魔法が使える事、私を甦らせる為に頑張った事……そして、沢山の出会い。


「あらあら、不思議な世界に来たのね私達。

それに家族も増えたなんて、素敵な事ね。

でも……」

「でも?」

私の疑問は旦那様にはわからない様です。

まあ、旦那様らしいと言えばらしいのですけど。


「家族が増えたのは嬉しいですよ。

でもほとんどの方が今の私達より年上だった様に見えましたけど」


紫色の髪の毛のチャックと言う男の子と、可愛い巻毛の男の子以外は、今の私達の外見より年上に見えました。

聞くと一つ屋根の下で一緒に暮らす事になる様です。

私達は中身はいい歳だとしても、見た目が二十歳そこそこですから、悪い評判がたつのでは無いのでしょうか。


私の心配事を、旦那様は「大丈夫だよ」と笑って答えました。


「この世界では……口で言うより、見てもらった方が分かりやすいかな?」

言いながら旦那様は、両手の掌を合わせる様に繋ぎました。


「今から一つ魔法を使うね。

この世界の事、それから、皆との出会いを伝えるから、ビックリしないでね……目を閉じて」


言われたままに目を閉じると、頭の中に色々な光景が浮かんで来ました。


そうなのね、この世界の方々は見た目通りの年齢では無いのね。

あの背の高い方はドラゴンで、白い髪の方と巻毛の男の子は魔王?

緑の髪の男性は2歳?

紫色の男の子と、細身の男の人の背中に付いていたのは、装飾品ではなくて、本物の翼?


とてもたくさんの情報で、少しクラクラします。

それより何より……旦那様の名前のセンスって……………。


「今私はジョニーと呼ばれています。

だから百合江もジョニーと呼んで下さいね。

それと、百合江の事も『リリー』と呼びますから、慣れて下さいね」 

「あらあら、今更リリーと呼ばれるのは、少し恥ずかしいわね」


恥ずかしく思いますけど、この世界のシステム?本名を伝えてはいけないのでしたら、従うべきね。


「それにしても、あなたのその見た目で、『私』と言うのは少し違和感があるのね。

その年頃ですと、『俺』って言ってましたから」

私が言うと、旦那様…ジョニーは少し顔を赤くして、

「まあ、見た目はこうでも、中身はオジサンですからね。

でも、最近少しばかり、若い頃の私が顔を出す事が増えた気がします」

「まあ、そうなの?」

「……主に怒った時とかですけどね」

顔を横に向けるジョニーの姿に、少し笑えてしまいました。


「元々あなたって喧嘩っ早い所が有りましたよね。

歳を重ねて抑える事を覚えましたけど、内心でキレる事は、割としょっちゅう有ったじゃないですか」

「気付いて……」

驚いた顔でこちらを見るので、笑ってしまいました。


「うふふふふ、気付きますよ。

何年一緒に過ごしたと思うのです?」

恥ずかしい時に顔を見られたくなくて、片手で覆うクセも変わらないですね…片手で隠れるわけないのに。


ああ、変わらないあなたと、これから第二の人生を一緒に歩いていけるなんて、なんて素晴らしい事でしょう。


「あなた……ジョニー、喚んでくれてありがとう。

それと……先に逝ってしまってごめんなさい」


置いていく事になってしまい、とても傷つけた事でしょう。

最後に告げたかった言葉を伝えると、彼は涙を流しました。




次回からはジョニー視点に戻ります。

奥さんの現状は次回に。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ