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薬師ギルドからの客……客?

手配していた薬師ギルドから、ギルド長へ就任される方が挨拶に来ました。

今回は、一度も携わった事のないギルドですので、アインが同席してくれています。


「失礼します」

ノックの後に入って来たのは、四十代くらいの人族の男性と、三十歳前後の…瞳からして多分爬虫類の男性です。

印象は、室内から出ずに研究やディスクワークをしていると言いますか、ヒョロッとしていて少し猫背で、顔色は青白く、目だけギョロギョロしている感じ……正直な感想は、苦手な感じですね。


対面に腰掛けた二人にお茶を出し、私もソファーに腰掛けます。

「初めまして、ジョニーです」

「アインです」

軽く頭を下げて名乗りますけど、二人の男性は、

「ああ、どうも」

と、応えるだけです。


「今回は、この町に我々のギルドを設立したいと言う話ですね」

「ええ、そうです。

事前に説明していた様に、町の近くに薬草ダンジョンが有りまして、質の良い薬草が手に入りますので、冒険者ギルドの長から、薬師ギルドを誘致した方が良いと言われましたので」


私が説明していると、若い方の男性が、

「冒険者ギルドね」

と、鼻で笑いました。

なんなのでしょう、この人達。


「我々のギルドは、城下町などの大きな都市に支部を置くものです。

町に、ましてや出来て間もない町に支部を置くなど、どの大陸でも聞いたことがありませんよ」

年配の男性が腕を組み、眉間に皺を寄せて言います。

隣の若い方の男性はニヤニヤしています。

なんなのでしょうか、この二人。


「今回は、この大陸の総支部長から任命されてしまったので、一応こんな辺鄙な町まで来ましたけど、わざわざギルドを置く必要はないでしょう。

町一つなのですから、薬師を一名派遣すれば十分でしょう」

「そうですね、ダンジョンの方は、我がギルドで管理しますよ。

冒険者など薬草の取り扱いを任すなんて、良質の薬草で有っても、質が落ちてしまうでしょうからね」

なんなんだ、コイツら…。


「ええ、ええ大丈夫ですよ。

管理費などは私が上に相談して、最低限に収めて差し上げましょう。

出来上がった薬は、優先的にお売りしても宜しいですよ」

「勿論我々が管理しますから、外部の方は立ち入り禁止とさせていただきます。

必要な薬草が有れば、多少安くお分けする事も考えておきましょう」


「……………………………」

「……………(コクリ)」


「辺鄙な町の辺鄙なダンジョンですからね、我々がわざわざ出向いて来てあげたのですから、話は早く終わらせましょう」

「上層部へは我らが報告しますから、権利の譲渡と、ダンジョンの側にギルドの建設をお願いしますよ」


ソファーの背もたれにふんぞり返る二人に、ハッキリと言ってやりました。


「お引き取り願います」


二人が凄い表情でこちらを睨みつけて、唾を飛ばしながら怒鳴ってきました。

「何を言ってる、この若造が!

我々が必要だと言って来たのはお前らだろう!」

「町長さん、下の者の躾がなってないんじゃあないですか?

大体この場になんで関係のない者が居るんです?」


ああ、どうやらアインが町の代表だと思っている様ですね。

まあ、見た目が若いですから、貫禄なんてないですもんね。


「私は同席しているだけです。

長はこちらのジョニーですよ」

アインが言うと、二人の男性は眉間の皺を深くしました。


「は?出来立ての町だとは言え、トップがこんな若造?

そんな町すぐに廃れるわ」

鼻で笑いながら吐き捨てる様に年配の男性が言うと、若い方の男性が隠すつもりもないのか、応えます。

「これは関わると我らの足を引っ張りそうですね」

「大体儂は西の国の副ギルド長だったのだぞ。

新しく出来るギルド長へとの辞令だったのに、まさかこんな辺鄙な地の町だとは聞いておらん」


なんかウダウダ言ってますねぇ…。

「……大体ダンジョンの権利って、冒険者ギルドへ渡していますし、それによってギルドから譲渡に対する報酬も頂いています。

もし薬師ギルドに権利を渡したなら、こちらがお金を支払わなければならなかったのですか?」

権利を譲る事によって、それ以降の利益はギルドへ移るのですから、権利を譲って、利益も相手方でさらに管理費まで払えって、どう考えても変だろう。


「それは…冒険者ギルドと我々では色々な事が異なるのは当然だろう」

チラリとアインに視線をやると、首を振っている。


「それならあなた方でなく、総支部長と話し合いで決めます」

俺がキッパリと言うと、二人の顔色が悪くなった。

「そ、そそんな事は我々がやる」

「そうだとも、第一総支部長は大変お忙しい方ですから、些細な事でお手を煩わすのは良くないですからな」

焦り出した二人からして、独断だなとアタリをつけ、アインに話を振る。


「アイン、総支部長の居る場所はご存知ですか?」

「おおよその場所は分かりますけど、ヨルゼルが直通の連絡手段を持っていますよ」

アインの答えに、年配の男の顔色がさらに悪くなる。


「ヨ…ヨルゼルとは…東の大森林の支配者か?」

ああ、西側の国から見ると、西の森は東になるんだよな。

しかし、支配者?

大量に汗をかき出す年配の男…そう言ゃあコイツら名乗っても無いよな?


「あ、あの…今回の事は “我々が” キチンと報告するから……いえ、しますから、どうぞ今日の事はお忘れ下さい」

年配の男の態度に疑問を感じた若い男が「どうしたんですか?」と聞いている。

それに「後で説明するから黙ってろ」と返す年配の男。


「ああ、そうだ、何か手違いが有ったみたいですので、今回はここまでと言う事で……。

お手を煩わすといけませんから、上の報告もこちらでしますから、今日の事はお忘れ願いたい。

我々は来なかったと言う事でお願いします」


下げられた年配の男の後頭部に向かい、ハッキリと言ってやったぜ。


「報告は大切ですからね、しっかりとさせていただきます」




「いやー、私がこの世界に来てから一年以上経ちますけど、あんな小悪党初めて出会いましたねえ」

人族の王子とはまた違った小悪党でしたね。

「そうですね、ロスフォータであそこまであからさまな方はそうそう居ませんね」

そうですよね、基本良い方ばかりなんですよね、ロスフォータって。


「やはり他の国には悪意を持った方や金銭に執着を持った方は居るんですよね」

お金や地位に執着する者、他者を見下し優越感に浸る者、妬みから足を引っ張る者、自己顕示欲の強い者、自己愛の強い者……悪意には色々な形が有りますよね。


「悪意が有るのは普通だと思いますよ。

考え方や受け取り方は人によって千差万別なのですから」

ですよね、人それぞれですからね。


「でも、出来るなら悪意は身近に少ない方が良いですからね。

このロスフォータに住まう方々が心穏やかに過ごせる様に、我々が居るのですから」


小さな悪意、無意識な悪意は有るでしょう。

ラルーセンさんが拠点に居づらくなった様に、又はチャックが迫害された様に、私が知らないところでも小さな諍いは有るでしょうけど、至って平穏だと思います。

それはアイン…ヨルゼル氏や東の山の魔王、マークスさんやファナさんが尽力しているのでしょう。


平和に暮らせる国に来られてよかったと思います。

この地に送ってくれた黒服さん達に感謝ですね。


………しかしアインと言いますか、ヨルゼル氏って一体……………。




アイン「………と言うわけですから、後はお任せ致します」

ヨルゼル「ふふふ、任せて下さい。キッチリと話し合いをしましょう」

アイン「ヨルゼルの名を知っていてあの行動とは、理解できかねますね」

ヨルゼル「この城から遠い場所にアインが居ると思わなかったのでしょう」

アイン「次はちゃんとした方を派遣してくれる様にして下さいよ」

ヨルゼル「ふふふ、当たり前です。

どう言った考えなのか、ちゃーんと吐かせますよ、ふふふふふ」

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