ギルドへ報告
ダンジョンへ行った翌日、アインに付き添ってもらい、冒険者ギルドへ。
ギルド長室へ通されれば、ギルド長のマリリンさんと、副長のガルガスさん、それとラルーセンさんが居ます。
マリリンさんの向かいに腰を下ろすと、ガルガスさんが皆にお茶を配り、マリリンさんの隣の椅子に腰掛けました。
「ラルーセンから話は聞いたけど、薬草ダンジョンの権利をギルドへと言う事で良いんだな」
言葉遣いがラフになったガルガスさんが問いかけてきます。
「ええそうです。
自分達で管理ができるとは思いませんし、折角役立つ物が有るのですから、大いに役立てる為にもギルドへ権利を譲りたいです」
私が答えると、ガルガスさんが契約書を差し出して来ます。
内容は、ギルドに権利を譲る事、それによりダンジョンでの事故等の責任はギルドが請け負う様になる事、ダンジョンの利益はギルドの物になる事、等が書かれていました。
それともう一つ、
「え?こんなに頂けるのですか?」
権利を譲る事によって私が頂ける金額が、想像以上に高額で少し驚きました。
「とても有益なダンジョンですから、コレくらい当たり前ですの」
マリリンさんが笑顔で言いますけど、次の瞬間真顔になって言葉を続けます。
「ただ、冒険者ギルドとして、薬草ばかり買い取りは難しいですの。
買い取り後の保存や卸先を考えると、薬師ギルドが有ると良いと思うんですの」
マリリンさんが言うには、現状だと、リーガルリリーの冒険者ギルドで買い取った薬草を一旦保管、それを薬師ギルドの有る町へ転送、転送先の冒険者ギルドで、薬師ギルドの買取を待つ。
つまり、他の町の冒険者ギルドを挟む事になるので、その分マージンが取られると。
しかも保管庫に時間停止の機能が付いてたとしても、転送の間または、転送先で納品チェックの間に鮮度が落ちてしまい、薬草としての品質が下がり、販売価格も下がる、と。
「折角効能の高い薬草なのだから、質を落とすのは勿体ないですの。
だから薬師ギルドを誘致するのがお勧めですの」
マリリンさんの提案に、アインが答えます。
「それに関しては、昨夜話をしていました。
人喰い花の件も有りますし。
あれは冒険者ギルドを通すより、薬師ギルドへ直接必要な分量を渡す方が、色々な面で安全かと」
「あー、噂には聞いたこと有るけど、そんな幻の薬草なんかは、うちで対処するのは面倒事が起こりそうだな」
「ガルガスの言う通りですの。
専門家でも無いワタシ達が間に入るより、専門家へ直接の方がいいと思いますの」
餅は餅屋ですね。
やはり薬師ギルドを誘致しないといけませんね。
誘致に関しては、アインがどうにかしてくれるそうです。
さすが万能アインですね。
「それでもう一つのダンジョンは、自分達で管理する、で良いのです?」
聞かれたので、自分達の鍛錬用に使いたいと答えると、
「ダンジョンを個人的な鍛錬場にするなんて聞いたことない」
と、ガルガスさんが呟いていました。
ダンジョン内なら魔法を思いっきり放っても、ダンジョンの核が魔素(魔法)を吸収するので崩れる心配もなく、色々試したり出来るそうなので、新しい魔法を試したり、ブルース達の狩りや、冒険に出ないアインやコニーが体を動かす用ですね。
「それでしたら、他の冒険者が立ち入らない様に、出入り口を閉じた方が良いと思うんですの」
「あー、そうですね、暴れている時に他の方が入って来て、うっかり巻き込まれると困った事になりかねませんよね」
巻き込まれ事故などが起こったら大変です。
出入り口に扉でも付けて、鍵を家族に配れば良いですかねえ。
などと考えていると、アインが、
「それでしたら隠蔽魔法と結界魔法で他者が入り込まない様に対処するつもりです」
と、サラッと答えました。
「なら大丈夫だろうけど、一応トラブル防止の為に、ダンジョンに名前を付けて登録はしないとな」
「名前…ですか?」
「『薬草ダンジョン』みたいに名前を付けて登録しておかないと、何も知らない冒険者が『自分が発見者だ』とか言ってきて、名前を付けて登録すると、登録した奴に権利が発生するからな。
トラブル防止の為にも、名前と登録が必要なんだ」
『薬草ダンジョン』はダンジョン名なのですか、分かりやすいですけど、何の捻りもなくそのままですね。
しかし名前ですか……『遊び場』『訓練所』『食糧庫』『ストレス発散場』………リーガルリリーの住民は使用可能にしたいですから、『リーガルリリーダンジョン』…長いですね。
「決めました、私達の所有するダンジョンは『リリー牧場』でお願いします」
あ、3人がドン引きですね。
隣のアインもため息を吐いています。
「牧場……確かにダンジョン内には魔獣が居て、そいつを食うんだろうけど……」
「町の方なら利用可能にするつもりですので、町のダンジョン、狩った獲物はその方の食糧になるのですから、コレなら覚えやすいですし、的を得てるかな、と」
「…………………」
「…………………………………」
「彼はこう言う方なのです」
「……あ…ああ…………」
「そうですね、覚えやすいですものね?」
ギルドの二人はさておき、私はアインに考えている事を相談しました。
私達がいつもダンジョンへ行く訳では無いですし、食糧が手に入るのですから、腕に覚えのある町の住人なら利用しても良いのでは?と。
勿論どれくらいの魔獣が出るか確認してからですけど、弱い魔獣しか出ない辺りなら、食糧確保に使えるのでは無いかな、と思いまして。
ラルーセンさんに聞いてみました。
「ダンジョン内の魔獣はどのくらいの強さなんですか?」
口を挟まず成り行きを他人事として見ていたラルーセンさんは、声をかけられてビクッとしました。
完全に不意をつかれた状態ですね。
「あ、ああ…、一階に出るのはネズミとウサギやトカゲなんかの小型だな。
二階は猫や犬も出る。
三階は熊や夜目鳥や大型の魔獣がうろついてる。
四階は地底湖が有って先に進めなかったな。
三階以降は行かない方が身のためだが、一階なら普通の狩人や木こりなんかの力自慢なら問題ないと思うぞ」
地底湖ですか、ワクワクしますね。
まあそれはまた後でとして、一階なら住民に開放しても問題なさそうですね。
「一階を町の住人に開放して、狩った獲物は自由にして良しとしましょう。
ダンジョン内に留まれる時間を決めて、野営などは禁止。
二階以降は私達の遊び……訓練所として、一般の方は立ち入り禁止、結界魔法で塞いでおく。
そんな感じですどうでしょう?」
「そうですね、ダンジョン入り口に結界を張るとして、内部に入るには結界を通り抜けるアイテムを貸し出ししましょう。
町でアイテムの受け渡しをする事により、入場を管理する事になりますからね」
私のふわっとした考えに、アインが現実的な案を出してくれます。
結界を通れるアイテムが無ければダンジョンに入る事は出来ないし、誰に貸したか、いくつ貸したかで、ダンジョン内に居る方や人数を確認できる。
そうする事によって、ダンジョン入り口でチェックをしなくても、管理ができるって訳ですね。
さすがアイン、私達家族のプルーン…プレーン?ですね。
リリー牧場の件も併せて、細かい事を決め、私達はギルドを出ました。
ティちゃん〈プレーンって何だよ!オムレツかよ! 〉
ジョニー「あれ?違いましたっけ?」
区切りまでと思ったら少し長くなりました。
リリー牧場は、マザ○牧場や●K牧場のノリです。
わ…私のセンスがおかしい訳じゃ無いからね!ジョニーのセンスが悪いんがからね!
……などとツンデレぶってみる(色々違う)。