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規格外のブルース

自分の体をしみじみと見ながら「懐かしいな」と呟いたブルースですが、ふと、何か気になる事が有るのでしょうか、私に視線を向けて来ました。


「お前、我に【真名】を付けたな」

「え?名前を付けるのは許可されましたよね?」

寧ろ名前を付けるように仰ったのでは?

「名付けをしろとは言ったが、【真名】を付けろとは言っていないが」


そもそもの話、【マナ】とは何なのでしょう?

首を傾げる私にため息を吐きながら、ブルースが説明してくれました。


「【真名】は……あーっと………その者をその者と知らしめるもの…?だったか?

とにかくそれを良くないものに知られると、操られたり命を取られたりする、大変厄介なものだ」

少しあやふやですが、厄介なものの様です。

よくわかりませんが。


「私は普通に名前を考えてつけただけですが…」

よくわかっていない私に、上手く説明ができず、少し苛立ったのでしょうか、ブルースが近付いて来て、いきなり私の前で背中を向けてしゃがみました。

なんなのでしゃうか?


「上手く説明できぬ故、説明上手な奴の所へ行く。

背中に乗れ」

背中に……オンブという事でしょうか?

え?私を背負って走って行くのですか?


私が戸惑っていると、「いいから早く乗れ」とせかして来ます。

どうも拒否できそうにないので、恐る恐る背負われる事に。


「良いか、しっかり掴まっているのだぞ」

私が返事もしないうちに、ブルースの体がジワジワと変質していきます。

気づけば青年の背中に負われていたはずが、王様トカゲの背中にしがみついていました。


驚いたのは私だけでありません。

下の方からチャック達の叫び声が聞こえて来ます。

「あり得ないんだけど⁈

なんで亜人化したのに、元の姿に戻れるの⁉︎」

「え?名前もらって亜人になっても、元に戻れるの?」

「あり得ないから!

名前を返して契約解除しないと元に戻らないから、普通!」

「じゃあこのお兄さん名前返したの?」

「返してないじゃん!

今のやりとりちゃんと見てたの?」


私は今の状況も忘れて、「チャックは大変だなぁ、血管切れないと良いけど」など考えてしまいました。


『では行くぞ、風の膜で保護はするが、なるべく体を低くしてしっかり掴まっておけ』

言いながら2、3回羽ばたくと、巨体がふわりと浮き上がりました。


「ちょ!!

待てよ!ジョニーをどこに連れて行くんだよ!」

『だから説明上手な奴の所へ行くと言うておる。

お前らは足にでも掴まっていろ』

「簡単に言うなーーー!!」


何と言いましょうか、一番幼い見た目のチャックが、一番苦労性の様ですね。

「チャック、頑張って」

「お前も流され過ぎーー!!」


人生は譲れない時以外は、流れに身を任せるのが最良ですよ。

転がる石…そう、ローリングストーンですよ。

まあ、少しばかり不憫ですので、夕食は彼の好きな物を作りましょうかね。



空の旅を楽しもうと思いましたけれど、思いのほか目的地には早く着いたようです。

ブルースが降りた場所は、小高い山の頂上部にある石造りの建物、ギリシャの神殿のような建物の前庭でした。


私を降ろしたブルースが、「名前を呼んでくれ」と言うので、呼んでみると、彼の体は縮んでいき、再び人の姿となりました。

私も驚きましたけれど、私以上にチャックが、

「あり得なさすぎるだろ!

非常識にも程がある!」

と、大騒ぎです。


「我は王様だからな、不可能を可能にするのだ。

ワハハハハハハ」

ブルースは軽くいなしていますね。

私は現実味がなさ過ぎるのと、チャックが私の考えていることを叫んでくれたので、落ち着きを取り戻しましたよ。


「なんだ、煩いと思えば貴方ですか」

建物の方から声がするので見てみると、入り口に真っ白な物体が……。

いえ、白尽くめの白い男性が立っていました。


「おお、久しぶりだな、2年ぶりくらいか?」

ブルースが片手を上げて、白尽くめの男性に歩み寄ります。

「相変わらずいい加減な。

最後に会ってから30年は経ちますよ」


白い……なんて言うのでしょうか、ワンピースの長い……いえ、アラブの人が来ているような?感じの服に、地面に付きそうな長さの長い白髪はくはつ、人の肌の色とは思えない程の白い肌。

アルビノの方ですかねえ。

瞳の色は薄茶色と灰色?

金銀のオッドアイと言うんですかね、猫にたまに見られる色違いの瞳ですね。

他人の容姿には関心のない方なのですが、ここまで異質な美しさだと感心してしまいます。


「貴方、また人になったのですか?」

「ああ、面白そうだったからな、コイツの仲間になる事にした」

腕を掴まれ、白い方とブルースの間に立たされた私は、とりあえず挨拶をすれば良いですかねえ。


「初めまして、地球の日本と言う国から来ました、後藤 丈二です。

この世界ではジョニーと名乗っています」

いつもの挨拶をして頭を下げた後、そう言えば先程名乗るなと言われた事を思い出しました。

挨拶で名乗るのは条件反射ですよね。


「よその世界から来られた方ですか。

不思議な気配だと思いましたが、納得ですね。

それで?新しい仲間を自慢でもしに来たのですか?」

前半は私に、後半はブルースに向かって言っています。

「いやいや、そうではない。

コイツがあまりにも物知らずだから、お前の知恵を借りようと思うてな」


……はて?そういう話でしたかねえ。

確か名前を付ける時に私が【真名】という物をつけてしまったので、その【真名】に付いての詳しい説明が出来る方に会いに行く………ではなかったですか?

それに私にはタブレットが有りますから、後から調べれば分かる事なのですが、それは言わない方がいいようですね。


白い方は、ふぅと息を吐き、「どうぞ」と告げて建物の中へ入って行かれました。

後ろを振り返りましたら、チャックは諦めたような顔をして頷き、シナトラは…話を聞いていなかったようですね、地面に座り込みウトウトとしています。

その頭をチャックがはたき、立ち上がらせて、私達は建物の中へ入っていきました。

チャック「色々あり得ないんだけど?」

ブルース「王様だからな」

ジョニー(きっと日本だと『ドラゴンだからな』になるのでしょうね)

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