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閑話 飲んだり食べられたり

   デイビッドの場合


デイビッドは狩り鳥…日本で言うところ、大型猛禽類の白頭鷲である。

パーティとして動く時は、良い目を生かして索敵なども行う。


彼は冒険者として活動していない時、養鶏場で働いている。

まだ規模は大きくないが、「卵を食べたい」と言うジョニーの言葉に応えるために、頑張って働いている。


この町で扱っている鶏は、ブロイラーなどでは無く、野生で生息していた鶏…軍鶏の様な獰猛な鶏である。

しかも地球の軍鶏より二回り程デカイ。


養鶏場の主人は小狩り鳥のセルグと言う男で、娘のヴィリナと二人で鶏の世話をしている。

猛禽類と言えど小型の鳥の亜人なので、親娘揃って小柄であり、鶏達に舐められていた。


卵を取ろうとすると、威嚇され、突かれ、蹴られ……。

卵を受け取りに行ったデイビッドが見かねて手伝う様になったのだ。


セルグと同じく猛禽類と言えど、大型の大狩り鳥(白頭鷲)のデイビッドには、鶏達は逆らう事なく従順だ。


頼りになるデイビッドに、ヴィリナが惹かれるのに時間はかからなかったのだが、チャックと変わらない見た目のヴィリナは、実際年齢がいくつも上だと言えど、デイビッドの恋愛対象外であった。


だからと言って大人しく引き下がらなかったヴィリナ。

小型と言えど猛禽類、狙った獲物は逃しません。


デイビッドは秘密にしているが、実は盛られ、乗られ、逃げられなくなったのだ。

鳥の中で強者な大狩り鳥は、小型の狩り鳥に狩られてしまいましたとさ。




   ブルースの場合


彼は自由気ままに日々を楽しんでいる。


長く生きてきた中、長期間寝ていた事もあるし、人と連れ立って行動していた事もあるが、一人でフラフラしていた時期が一番長い。

行きたい所へ行き、したい事をして、酒を飲み、他人と笑い合う。

気の向くまま、日々を過ごしていた。


彼はジョニーの家族としての生活を気に入っている。

異世界から来た男は、この世界の型にハマらず、想定外で規格外なことをしてくれるので、見ているだけで毎日楽しく過ごせているのだ。


今はアインの提案の元、独り立ちをすべく、個人行動を取ることが多いのだが、だからと言って退屈ではない。

彼の理想の町を作る為、協力を惜しまないのは、彼に名付けられた者の共通の考えだ。


押し付けられたわけではなく、各々が町の為、彼の為に行動をしている。


ブルースは、町中を巡る。

「あ、ブルースさんだ」

声をかけてきたのは、顔見知りの行商人だ。


「久しいのう。

今回はどんな物を持ってきたのだ」

「今回は他国から入ってきた綺麗な実を付ける白い花を仕入れてきました。

町長ジョニーさんが町に緑を増やしたいと話していましたから、他国の珍しい花なら、町の名物にもなるのではと思いまして」


これですと、荷台から取り出したのは、円錐型の艶めく赤と緑の実の付いた植物だ。


「つやつやして綺麗だな」

「ただしこれは観賞用ですから、実は口にしない様にと伝え聞いております。

試しに食べた方がいる様で、非常に不味く、腹も下すそうです。

毒があるのかもしれませんが、その分虫除けにもなるそうで、穀物の袋に入れると良いとも聞きました」

「ほう、虫除けか。

ジョニーにも見せよう。

一先ず一株頂いておくとするか。

いくらだ?」

ブルースが懐から金の入った巾着を取り出すと、行商人は笑顔で首を振る。


「そちらは見本としてお持ち下さい。

町長さんに渡す為に持って来たのです。

このまま持ち歩いても荷が嵩むだけですし、珍しい物のお好きな町長さんはきっと仕入れを考えてくださるでしょうから、先行投資です」


確かにジョニーは珍しい物が好きだ。

珍しい上に虫除けとして実用性もあるのなら、町に植える事を考えるであろう。

町に植えるとしたら、数も大量に必要となるだろうから、一株見本として渡しても、元は取れると思える。


「ならこれは頂いておく。

今夜にでもあいつに見せておくから、返答を待て」

よろしくお願いしますと頭を下げる行商人。


「ところで、この後ご予定はありますか?」

今日の予定としては、町中にトラブルがないか見回りをするつもりであるが、やらなければならないと言う物ではない。


「特に用はないが、まだ何か話でもあるのか?」

ブルースが尋ねる。

「私達行商人は、必要な物を必要な方へ届けるのが仕事です。

必要な物を知る為には情報が不可欠です。

よろしければ、ここ最近の町の様子を教えて頂ければ幸いなのですが。

場所といたしましては、わたくし少々喉が渇きましたので、あちらの店でお話いただければ有難いです」


行商人の答えは要するに、酒を飲もうとの誘いだ。


「うむ、夕餉にはまだ時間もあるし、喉が渇いたのなら水分を取らないとな。

この町にはまだまだ不足の物があるゆえ、お主らの働きも必要だ。

ゆっくり話をしようぞ、喉を潤しながらな」


行商人の肩を叩きながら、二人は陽の高いうちから酒を酌み交わすこととなる。


勿論バレないわけはない。

ほろ酔い気分で家に戻ると、迎えた冷たいアインの視線に酔いが一気に覚めた。


「情報交換するのに、酒を飲むと口が軽くなるだろ、交渉の場に酒は必要だ」

「相手の口だけではなく、こちらの口も軽くなるのではないですか?」

「我は酒に強い、そんな不手際はやらかさぬ」

「本人が気づいていないだけだと思いますがね」


言い合う二人の隣では、

「鷹の爪ーー!!」

と喜びくるくる回るジョニーの姿が有った。





ジョニーは唐辛子をゲットした。

勿論大量に仕入れて栽培し、唐辛子として使い方とともに広げることとなる。

一番最初に販売したのはダイズスキーであった。


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