閑話 その頃他の家族達は
「人に頼るのも良いけれど、頼りきりなのはどうかと思います。
自力で何とかする様にもしましょ
う」
ロスフォータに戻った時、アインが告げた言葉に、ジョニーは少し考えて答えました。
「一度自分で考えて行動してから、問題が起これば相談すると言う形にしようと思います」
よくよく考えると、子供でも無いのにいつまでも自分で考えず、人に道を示して貰うのはどうなのだろう。
そう思い、一人で行動する事が増えてきた。
そうやってジョニーが一人で行動している時、他の家族は何をしていたのかと言うと………
シナトラの場合
体を動かす事が好きなシナトラは、毎朝狩りへ出掛けて、食料調達をしている。
冒険者ギルドでの依頼はジョニーから、
「私達が討伐依頼を受けると、他の冒険者の仕事を奪う事になりますから、討伐依頼は受けない様にして下さいね」
と言われたので、自分達の食べる分だけ狩る様にしている。
町に冒険者は集まって来ているけれど、ランク的にも実力的にも、ジョニー達には及ばない者ばかりだ。
モリオオネコのシナトラや、王様トカゲのブルースが本気を出すと、近辺から獲物が居なくなるのは想像できる。
そうすると冒険者の収入源が減ることになるので、自分達の食べる量以上狩るのを止められているのだ。
毎日その日食べる分だけ狩るにしているのですぐに終わってしまい、後は暇を持て余す事となる。
ブルースの気が向けば手合わせをしてくれるけれど、それも短い時間でしか無い。
余りにも暇なので、アインに相談したところ、子供達の体力作りをしてやってくれと頼まれた。
つまり、子供達と体を使ってガッツリ遊べ、と。
遊び方は、ジョニーからいくつか教わった。
鬼ごっこ、かくれんぼ、つまみ食いはダメだぞ(達磨さんが転んだ)チャンバラ、かごめかごめ、けんけんパー、影踏み……etc etc…………。
「走って捕まえて、隠れて気配を消して、背後から不意をつく、狩の訓練にもなりますね」
アインが言うと、
「……いや、そんな事考えた訳じゃあ無いんですけど…………」
ジョニーは苦笑する。
「体を動かす事で、子供達の寝付きが良くなると親達が喜んでおるぞ」
町で聞いた話をするブルース。
「白雪も友達が出来て楽しそうだよ」
「うん、お友達できたの!」
チャックの膝の上でおやつを食べてる白雪もニコニコだ。
「でも一番楽しんでるのはシナトラかもね」
ソファーで居眠りをしているシナトラに、毛布をかけながらデイビッドが笑う。
「デイビッドのところに子供が出来ても、子守は任せられるんじゃない」
コニーのからかいに赤くなりながらも、
「シナトラだけじゃなく、皆さんの手も当てにしてますからね」
言われるだけじゃ無いデイビッド。
笑うジョニー達の声が聞こえるのか、眠っているシナトラは微笑んでいた。
白雪の場合(+シナトラ)
町が出来て住民が少しずつ増えて来ると、ジョニー達は忙しくなってきた。
だからと言って誰かしら家には居るのだが、稀に皆が出払う事もある。
まだ一人で留守番の出来ない白雪は、どうしても人手のない時はヨーコーの食堂へ預けられる事になる。
「よう、その子兄ちゃんの子かい?
それにしては大きいか?」
毎日来店してくれる常連の冒険者が、調理場から見える位置に置いてあるソファーに座る白雪の頬を突きながら聞いてくる。
「いえ、大切な方から預かっているのです。
どうしても人手が無く、かと言って一人で家に置いておけないからと」
出来上がった料理を運びながら答えるヨーコー。
「大人しい子だけど、こんなとこにずっと居たら退屈だろ?
俺の泊まっている宿の娘がこの子よりちょっと大きいくらいだから、遊んでもらったら良いんじゃないの?」
「でもボクが頼まれたのだし、宿屋さんに迷惑かけるといけませんから」
「大丈夫だ、そこでは元々近所のガキどもが集まって遊んでるからな。兄ちゃん仕事してるんだし、目を離すくらいなら、子供同士で遊ばせてた方がこの子も楽しいと思うぞ」
確かに、小さな店といえど、一人で切り盛りしているヨーコーでは目が行き届かない。
白雪も大人しく座っているだけでは、退屈を通り越して苦痛かもしれない。
「一度保護者の方に聞いてみます。
それでもし宜しければ、宿屋のお子さんと繋ぎを取っていただいて良いですか?」
「そんな固っ苦しく考えんなよ、紹介くらい問題無いから。
子供は子供同士で遊ばせるのが一番なんだぞ」
「なんならうちの子は少し大きいけど、小さい子の面倒くらいみれると思うから、一緒に遊ばせれば良い。
子供は子供でコミュニティがあるからな。
近い年齢の子から色々学ぶ事もあるし。
大人の中に置いとくより良いぞ」
パーティメンバーなのか、よく一緒に来る別の冒険者も話に混じって来る。
冒険者達の言葉に納得できるものも有るので、その日迎えに来たジョニーに、子供同士で遊ばせる話が出ていると告げた。
「それは良いですね、友達作りは大事ですよ。
ぜひ紹介をお願いしたいですね」
早速翌日、ジョニーと手の空いていたシナトラが、冒険者の紹介で宿屋へ向かう。
宿屋の庭では年齢がバラバラの6人の子供が石投げをして遊んでいる。
「こんにちはー、ニルルさんの泊まっている宿屋だよね?
ニルルさんから聞いていると思うけど、この子白雪って言うんだ。
一緒に遊んでくれるかな?」
「こんにちや、しやゆきれす」
「こんにちは、シナトラです」
挨拶をする白雪、何故かシナトラも挨拶をする。
「えー、父ちゃんから小さい子って聞いてたけど、この兄ちゃんも一緒なの?」
少し年嵩の少年がシナトラを見て言う。
「ニルルさんのパーティのリスモンテさんの息子さんかな?」
「おう!おれはミツレテ、よろしくな!
仕方ないからそっちの兄ちゃんも一緒に遊んでやるよ」
「わーい、遊ぼ、遊ぼ!」
シナトラは無邪気に喜んでいた。
集まっている中で一番背が高いとは言え、生まれてまだ一年半弱のシナトラの中身はまだまだ子供である。
本人は子供達と楽しんで遊んでいても、側から見ると【大人の保護者がいる】様に見えるので、子供だけで遊んでいても安心である。
ジョニーからいつくもの遊びを教えてもらった子供達は、どんどん遊び相手を増やしていき、大所帯となる。
子供の人数が増えると、中には危ない事をしたり、喧嘩をする子供達も出て来るので、時間のある御老人達が【見守り隊】として、安全に遊べる様に様子を見てくれる様になった。
いつしか町中の子供達が集まる様になり、暇を持て余していたシナトラは、体力の限り子供達と遊び、白雪も沢山の友達が出来た。
そして見守り隊の御老人から、広場が欲しいと意見が出るのであった。
長くなった!
でも続きます、すみません。