夕食での報連相
夕食の席で、商業ギルドでの出来事を報告しました。
「ふむ、確かに人手はいくらあっても良いかも知れぬな」
「住民が増えるなら、警備の事も考えた方がいいですね」
ブルースとアインの言葉に、コニーも続けます。
「現状トラブルは、ラブシーズンでのゴタゴタくらいだけど、生活が落ち着いてくれば、問題が起こる事も有るだろうしね。
冒険者とうちの城の兵士で賄ってるけど、そろそろキチンとした警備の兵士を育てる方が良いんじゃないの」
そうなんですよね、コニーの城から回してもらった兵士さんと、冒険者ギルドに依頼して、見回りをしてもらっていますけど、いつまでもそのままではいけませんよね。
「明日にでも冒険者ギルドへ行ってきます」
私が答えた後、他の報告が続きます。
「養鶏だけど、そろそろ卵の出荷が出来ると思う。
一般家庭には無理でも、食堂とか酒場などには卸せるかな」
まずはデイビッドの報告ですね。
現状では、我が家の食卓分は毎日確保されていますけど、まずは鶏を増やす事を優先していましたので、販売する余裕は無かったのです。
そろそろ鶏の数も増えてきたので、一般販売を、と言う事ですね。
「それならレシピが必要ですね。
商業ギルドに登録しておきましょう」
この世界で卵料理と言えば、目玉焼き、ゆで卵、スクランブルエッグの3種類です。
料理の素材として使う事は有っても、卵としての料理は無いです。
なのでうちで作る卵料理…と言いましても、卵焼き、オムレツ、オムライス、親子丼、煮卵、卵とじ、茶碗蒸しと私の好きな卵かけご飯くらいですかね。
でも生卵は怖いでしょうか。
一通り基本のレシピを登録して、後は好きにアレンジすれば、メニューが多少被っても大丈夫でしょう。
「ねえ父ちゃん」
こう言った話の時は、聞き流して会話に参加することのあまり無いシナトラが、珍しく話に入ってきました。
「どうしました?」
「町のじいちゃん達が言ってるんだけど、町の中に遊び場があった方が良いんじゃ無いかって」
「遊び場ですか?」
シナトラは、狩りに行く以外の時間、白雪の面倒を見てくれています。
生まれて8ヶ月を過ぎた白雪は、見た目5歳くらいまで成長しています。
今も一人でちゃんと椅子に座って、大人しく食事をしています。
「町の子供を遊ばせるのに、毎日町の外まで行ってるけど、これから暑くなると行き来だけでバテる子が出て来るから、町中に広場みたいなのが有れば良いねって言ってたよ」
確かに、町中に広場や公園みたいなものは何一つありませんね。
迂闊でした。
憩いの場が無いなんていけませんね。
公園が無いと噂に聞く【公園デビュー】も出来ないじゃないですか。
広場が無ければお祭りのメイン会場の場所も無いと言うことですよね。
屋台とか、盆踊り大会とかどこでするつもりだったんでしょう。
「あー…でも町の中は家が建ってしまってますね。
町の外に広場作ってもあまり意味がない様な気がしますし」
町の宅地は円形をしていまして、東西南北に各種農地が広がっています。
住人が増えた時のため、宅地用スペースにと、南東と北西の一部はスペースを空けていますけど、そこに公園や広場を作っても、反対側に住んでいる方には遠いですし、イメージ的に広場って町の中央だと思うのですよね。
「あ、そうだ、この場所を公園にしましょう」
「「「「え?」」」」
皆の視線が集まります。
「ほら、ここって町の中心じゃ無いですか。
それに四つも建物が建っているし、庭も広いので、立ち退けばなかなかのスペースが有ると思うんですよ」
増改築や、家庭菜園の為に、庭を広く取っていますので、そこそこの規模の公園になるでしょう。
「え?待って、じゃあオレ達どこに住むの?
野宿?それとも宿住まい?」
チャックが青い顔で聞いてきます。
「いえいえ、お引っ越しをするだけですよ。
そうですね、南東に住居と陽の木の家を建てて、北西にログハウス(リラックスルーム)とレンガの家(倉庫)を建てましょう。
移動はバスか私の移転ですれば良いですし」
問題解決と周りを見ると、呆れ顔を返されました。
「まだ一年も住んでいないのに引っ越しですか」
「町の主と言うのに、住人の憩いの場のために立ち退き」
「どうしょう、僕が余計な事を言ったから?」
「ワハハハハハ、考える事が変わっておるの」
「どーせこの家ごと魔法で動かすだけでしょう、好きにすれば良い。
オレを置いていかないんならね」
口々に皆が言いますけど、チャックの言う通りですね。
皆で一緒なら住む場所など、どこでも良いじゃないですか。
魔法で家を丸ごと動かせるのかは知りませんけど……。
「聞いて良いかな、公園って何するところ?
広場はわかるよ、町中の空いてる場所の事だろ」
デイビッドの問いに、色んな場所に訪れたことのあるブルースが答えます。
「公園とは木を植えて木陰を作ったり、池を作り涼をとったりと、住民の安息の場の事だな。
ただスペースを開けただけでなく、手を加えて過ごしやすくした場所だ」
得意顔ですけど、正解だと思います。
アインが頷いていますから。
私の中で公園といえば、椅子や遊具が有って、サラリーマンがサボっていたり、子供が遊ぶ場所と言うイメージですね。
そしてウロウロしている男性が職質を受ける場所……。
三十代の頃、休みの日に公園で楽しそうに遊ぶ子供達を眺めていたら、職質を受けてしまいました。
あの頃が一番子供が欲しかった頃ですから、ついつい子供を見入ってしまってたのですよね。
『子供が産めなくてごめんなさい』
と迎えに来た妻に泣かれてから、子供ウォッチングをやめましたけど。
しょっぱい思い出は置いといて、話を続けましょう。
白雪「ごちそうさまでした、お父さん白雪部屋に戻るね」
ジョニー「一人で大丈夫ですか?」
白雪「もう子供じゃないんだよ、一人で大丈夫」
アイン「話の邪魔をしない様に気を使えるなんて、白雪はお利口ですね」
白雪「えへへへへへ」
シナトラ「僕だって一人で部屋に帰れるよ!」
チャック「……お前は話に参加だ」
シナトラ「えー、だって難しい話わかんないもん」
ジョニー「シナトラは部屋に帰っても…………」
チャック「…………(ジロリと睨む)」
ジョニー、シナトラ「なんでもないです」