お金がない
はっきり言ってお金が無いです。
土地を整地したり、町づくりに必要な木材やらの資材調達は、魔法を駆使して何とかしました。
しかし人手は魔法でどうにもなりませんし、タダでは有りません。
アインやコニーの国から雇い入れたのですが、職人さん達は当初、
「王様から頼まれたんだから、給金は要らないよ。
寝泊まりする所と飯は出してくれるって聞いてるから、それだけで良いさ」
などと言っていましたけど、そんなわけにはいきません。
彼らだって生活があるのです。
家なんて一日で建つものでは無いのです。
しかも一軒では無いのですし、長期間縛って無給なんて、ブラック企業も真っ青ですよ。
アイン達も交えて話し合った結果、給金は受け取ってもらえる事になりました。
それでもかなり引き下げられ、
「これ以上払うなら、この仕事を断る!」
などと逆にキレられてしまうと言う、不思議な事態になりました。
食事は勿論頑張って作りましたよ。
ブルース達に狩りを頑張ってもらい、ヨーコーと手分けして、職人さん達の腹を満たしました。
肉や魚、ハーブや果物などは現地調達ですけど、米や小麦や野菜、一部の調味料は買ってこないといけません。
夜は食事だけでなく酒も出します。
職人さん達は飲む量が凄い。保管していたお酒だけでは足りず、これも購入。
つまりお金が無いのです。
冒険者としての仕事はさしてしていませんけど、商人としての収入がかなり有ったんです。
だって使うこと…と言いますか、使う場所がないので、日本円に換算した時に、そっと見ない事にしたくらい有った貯蓄が、日本で『もし今ムカつく上司に辞表を叩きつけたら二、三ヶ月で露頭に迷うな』と言うくらいの金額まで減ってしまいましたよ。
しかも雨季を除く町づくりの間は【おさんどん係】でしたから、収入は、転送魔法を使った取引のみ。
しかもしかも、町が完成した今、職人さん達への給金は支払い完了となっても、新たに雇い入れた人員の給料が………。
新しい町での私の仕事は、町の管理は当然として、サーベラス商会の店舗を構え、そこで東の品々を販売することにしました。
カカルの民の乳製品や織物、ダイズスキーの調味料や加工食品、ハスカヌさんからの海産物など。
それらは町の住民には少しお安く販売することにしました。
福利厚生の一部ですね。
治安維持の兵士は、朝昼晩の三交代制、各時間3人ずつで一つの班、それが三班と、隊長、副隊長で29名。
町中だけではなく、農地も見廻ってもらいます。
町の運営に、経理と事務をこなせる人は、二期前に港街の管理をしていた人族の方で、名前を ドーディーさん。
この方は任期を終えても国には戻りたくないと、そのまま港街で暮らしていたそうです。
この春にご結婚予定で、心機一転新しい地で新婚生活を始めたいと、移住して来た方です。
後は町に住む主婦の方々が、男所帯のうちを見かねて、交代で掃除や洗濯などをしてくれています。
その方々へ、大した額ではないですけど、気持ち程度の給金をお渡ししています。
商会の店員、兵士、経理、ご婦人方、今のところだけでもこれだけの方に給金をお支払いしなければいけないのです。
だからますますお金が無い!
ギルドは稼働していますけど、自分の町で出た依頼を、トップである自分が受けるのは、自作自演と言いますか、マッチポンプみたいじゃ無いですか。
なので冒険者ギルドの依頼は受けせません。
紹介の売り上げだけでは焼け石に水なので、行商へ出ることにしました。
ジョニー「お金が減って行くのはドキドキしますね」
コニー「だからお金出すって言ってんじゃん」
ジョニー「それは違う気がします。
私が作る私の町なよですから、私がお金を出さないと」
アイン「気持ちはわかりました。では手伝えることは何でも仰って下さいね」
ジョニー「いつもいつもすみません」
ブルース「何を言っておる、家族なのだから手を貸すのは当たり前だろ」
ジョニー「………ありがとうございます」
話の区切りで今回は短くてすみません。