雨季の合間に
雨季が終わるまで、町づくりは一旦中止中です。
一番初めに建てた私の家は内装も終わり、後は家具を入れればいつでも住み始める事ができます。
家具は一部オーダーメイドにしました。
テーブルやソファー食器棚や多目的棚などは殆どが既製品ですけど、椅子は食事用と仕事用、リラックス用でオーダーメイドです。
別に椅子フェチなどでは無いのですが、こちらの世界では、座り心地の考慮は無く、座面の高さ、大きさの違いしか無いので、何とか説明して、背もたれの角度や座面の奥行きなどを指定して作ってもらっている最中です。
勿論ロッキングチェアもオーダーしていますよ。
小型の冷蔵庫もどきもオーダーしました。
ミニバーに置く小さな物…ホテルなどでよく見かける、小さいワンドアの大きさです。
二重になった鉄の箱の上部に棚を作り、氷魔法を閉じ込めた魔石を置く事で、魔法が切れるまでの十日ほど、冷やす事ができる、と言う物です。
鉄の箱だと見た目が無骨なので、木で箱を作り、その中に入れる事で三重構造になり、一層冷えが長持ちします。
氷魔法を閉じ込めた魔石は一般に流通していなく、私が魔力を込めて作る事になっています。
ヨーコーの店がオープンするときには、小型の2ドア冷蔵庫くらいの大きさの物をプレゼントする予定です。
後は一部の窓にガラスを……と考えたのですけど、ガラスの作り方など知りません。
材料が手に入れば作れるよ、とティちゃんが言いますけど、この世界にあるのかもわかりません。
私が知っていることと言えば、はるか昔に核戦争が有ったのでは?と言う考察で、高熱によるガラス層が出て来たとか、ミステリ特番で見たことありますけど、その辺の土を高熱で焼いてもガラスは出来ないでしょう。
ガラスは諦めますか。
代替え品として、透明な水晶を薄く加工して、ガラス代わりに窓に嵌め込む事を考えました。
問題なのは、水晶って貨幣なのですよ。
0.2グラムで一万円程の価値なのですよ。
それを窓ガラス代わりに…………無茶です。
なのでそちらも諦めました。
人間諦めが肝心です。
窓一枚に何百万なんて、アホですよね。
郷に入れば郷に従え、ですね。
代わりに窓にはレースのカーテンを付けて、中を覗かれにくくして採光するようにしようかと思います。
しかしこれがまた高価なんですよ。
レースはあくまでドレスなどの飾りや、リボンが常識で、カーテンになる程…と言っても窓の大きさは大きくて1メートル四方程ですが、そんなに大きなレースは今まで作った事が無いと、何人もの職人さんに断られました。
なんとか受けてくれる方を見つけましたけど………うん、ビックリした。
見積もり価格で陽の樹の家が一軒建ちます。
これも諦めました。
無茶です。
それと後は遊戯台をオーダーで……と考えたこともありました。
結果的にオーダーしていません。
先ずはビリアード。
台は出来ますよ、でも表面に貼るフェルト?が無いですし、同じ大きさの綺麗な球体を作るのが難しいですし、キューも難しくて断念。
次に卓球台。
台は出来ますよ、でもピンポン玉とラケットが。
そう、この世界ガラスだけでなく、ゴムもない。
卓球は断念。
出来た遊び道具は、卓球の代わりに羽子板、ビリアードは無理だけど、ボーリングモドキとカード台ですね。
碁や将棋やチェスなどはルールを知りません。
麻雀なら知ってるけど、牌を作るのが………。
思わずアイン達に
「この世界には娯楽がないのか」
と聞いてみると、
「酒だ」
と答えられてしまいました。
女性は趣味と実益を兼ねて、刺繍や裁縫、編み物をするそうです。
男性は酒か木彫り細工や石細工や革細工。
見た目の可愛い動物や、魔除けの小物、革を編んだり模様を彫ったり………って、それって趣味じゃなくて内職じゃん!
と突っ込んだ私は間違っていないと思います。
町ができたらやろうと思っている祭りは【遊戯祭り】ですね。
この世界に遊びを広げますよ、私は。
自分の家を建てて、町の家も建てて、椅子をオーダーメイドして、冷蔵庫も作ってもらって………お財布がピンチです。
雨季が明けて工事再開する迄に、ギルドで依頼を受けたり、依頼以外でも狩りで手にした魔石や素材を売り、収入を確保します。
それに並行してバスに乗って各地を廻り、入居希望者の面談も行います。
行った先のギルドで依頼を受け、その場に希望者を集めてもらい面談。
面談が終わったら次の町のギルドへ。
コニーの城を出て雨季が明けるまでの30日ほどかけ、行ける範囲の町を廻りました。
ギルドで声かけしてもらっていたので、多い所では20人程集まっていましたけど、複数の街を回って移住を受け入れる事にしたのは89家族です。
「以外に絞れたね」
「あの魔道具凄かったね」
「まあ、こいつの町に変な輩を住まわせたくないから、少しばかり慎重にならざる得ないだろう」
アインからギルドにお願い(………?)をしてもらい、犯罪歴が判る魔道具を貸し出ししていただきました。
……………と言うのは表向きで、実際には魔道具で判定しているフリで、鑑定したのです。
アインに指導していただき、ティちゃんに調整してもらい、軽犯罪が判る様になりました。
【差別や盗み、ゆすりやタカリなどをするのを一切禁止です】
と告げた時の反応が、体から発せられている魔素の色で分かる様に、鑑定を改築しました。
差別、と言う言葉で一番反応したのが人族です。
恐怖の色でしたから、獣人の方が怖いのかもしれません。
盗みに反応する人が多かったのにはビックリです。
「隣の家の庭から、木の実を一つ拝借など、気軽に手を出す奴は多いからな」
「目の前を歩く人が落としたものを拾ったら、それはもう自分の物だ、とか言うのも盗みになるからね」
「あ、僕隣のテーブルの人がトイレに立った時に酒を盗んで飲んだって話聞いたことあるよ」
……どうやらこの世界、他人の物に簡単に手を出す方が多い様です。
『ちょっともらっただけだろ、細かい事を大袈裟に言うな』
と言う考えの方が多いそうです。
『万引きなんてゲームだろ』
とかほざいてたクソが居た元の世界もどうかと思いますけど、窃盗は窃盗です。
そんな方達は私の町にいりません。
…………ってよそ様のお嬢さんを掻っ攫った私が言う事じゃないですかね。
シナトラ「父ちゃんって椅子に拘りが強いんだね」
ジョニー「別にそれ程でも無いですけど……」
ブルース「いや、目的別の椅子など初めて聞いたぞ」
チャック「椅子なんて座れれば良くない?」
ジョニー「(出来上がってからの反応が楽しみですね」」