四人会議 その2
「それで、町の決まりはどうするのだ?」
募集する住人の方向性がざっくりと決まったところで、法律…とまではいきませんけど、町の決まり事を考える事にしました。
「先ず絶対なのは、【人種差別をしない】です」
人族の国での出来事が頭の中に残っているのもあります。
人間って、自分と異なるものを否定するところが有りますよね。
わかりますけど、理解はしません。
私の家族は皆亜人さんなのですから、亜人を差別する人はお断りですよ。
「後は【人を殺さない】…というのは、この世界でもアリですか?
私の暮らしていた国では、人殺しはたとえ事故でも重い罪でした」
戦争時でもない限り、人殺しは絶対にダメだと思うのですけど。
世界が変われば常識も変わるでしょうから、確認を…。
「場合によりけり、ですかね」
アインの返答に、やはりかと思いました。
だって、対人戦をギルドで教えてもらったのは、つい最近ですからね。
「盗賊などに襲われた時などは、殺らなけれな殺られますからね。
決闘で亡くなる事もありますし、滅多にない事ですけど、【魔堕ち】する人族や亜人も出てきます。
【魔堕ち】した人を見つけたら、すぐさま対処しなければ、被害は甚大なものになりますからね」
「【魔堕ち】?」
魔素を取り込み過ぎると動物が魔獣になる様に、人も魔人になるそうです。
理性がなくなり、破壊衝動のまま行動してしまうと。
一度魔堕ちすると、助かることはなく、見つけ次第殺さなければならないのは、全世界で決まっているそうです。
……例えそれが親兄弟や、愛する人であっても……………。
「特殊な場合を除き、人を殺めないでどうでしょう」
「喧嘩でうっかり死なせちゃう事もあるよ」
コニーの国も、多種多様な種族の方々が居ますので、素手で殴っただけでも、種族によっては亡くなる事もあるのだとか。
「喧嘩はしない、ですかね」
「それは無理だろ」
「無理ですね」
「無理だと思うよ」
「………ですよねー」
喧嘩をしないと言うのは無茶なので、【暴力を奮わない】くらいなら守れるのではないかと、落とし所にしました。
「二、三日に一度はシャワーを浴びるか風呂に入る」
「なぜに?」
コニーが不思議そうにしてますけど…臭いがね……。
おかげで風魔法の熟練度が上がりまくりですよ。
「あー、人族はクリーンの魔法使えない奴が殆どですからね」
「だから家にシャワーなど付けたりしたのか」
ブルースが納得顔です。
「臭いもなんですけど、清潔にしておくだけで、防げる病気が有るんですよ……確か」
以前そんな事を聞いたような聞かなかったような。
「でも、獣人の中には体に水が付くのが苦手な種族も居るよ?」
「その方々はクリーンでもいいと思いますけど、できればシャワー浴びて欲しいですね」
まぁ、その辺りは臨機応変で。
「盗みはしない」
これに関してはあっさり通りました。
後は…なんでしょう。
司法国家から来たはずですけど、法律なんて知りません。
パッと浮かぶのは、道路交通法とか労働基準法とか、この世界には関係のない事ですからね。
目を閉じ眉間に皺を寄せて唸っていると、
「取り敢えずその3つで良いのでは?」
とアインが言ってきました。
「え?こんなので良いのですか?
もっと色々決まりを作らなきゃダメなのでは?」
だって六法全書とか凶器かってくらい厚みがあるよ。
こんな簡単な3つの決まり事だけで良いわけ?
「そうだな、あまり色々決めても皆覚えないだろう」
いや、それ侮りすぎるのでは?
「働いて、ご飯食べて、健康で、家族や周辺の者と仲良く、美味しいお酒を飲んで長生きすれば良いんじゃない?
ついでに税金納めてくれれば何かあった時に対処できるよね」
川に橋作ったり、飢饉の時用に備蓄を蓄えたり、町の整備に使ったり。
コニーの言葉に、アインとブルースが頷きます。
「大まかな決まり事だけで大丈夫ですよ」
アインの言葉もあって、決まり事は取り敢えずこの3つと言う事に。
税金に関しては、成人以上に人頭税と所得税の二つに。
人頭税は種族により成人年齢が変わりますので、種族ごとに幾つになれば税金がかかってくるのかが変わります。
この辺りは役場などを作って、住民票を作らなければならないですかねぇ。
税金はね、安くて種類が少ないのが良いよ、うん。
税金ではないけど、家賃はいただきます。
格安ですけどね。
ひとまず賃貸で、家の種類、広さなどに応じて詳しい金額はアインに決めてもらいましょう。
「んー……」
「どうしました?」
唸る私にアインが尋ねてきます。
「いえ、私が町の人から税金を集めて、それをどこに納めれば良いのですか?」
確定申告なんてないでしょうけど、税金って国に納めるものですよね。
でも私の町は、との国に属するのでしょう?
私の質問に、3人は顔を見合わせた後、
「町の人から集めた税は、町を発展させるために、ジョニーが預かっておけば良いですよ」
「そうだな、一先ず預かるつもりで、何かあった時のために置いておけ」
「アインとブルースの言う通りで良いと思うよ」
一先ず私が預かる事となりました。
……え?良いんですかそれで?
その頃のデイビッド+白雪
デイビッド「俺はいつになれば大事な話し合いに入れてもらえるんだろう」
白雪「う?」
デイビッド「確かに町づくりの話し合いなんて、何にも意見なんて出せないかもしれないけど」
白雪「ん〜」
デイビッド「信用度が足りないのか、知識が足りないのか……両方なのかな」
白雪「んぅー」
デイビッド「でも何を学べば良いんだ?信用される為には何をすれば良いんだ?」
白雪「煩くて眠れないよ〜」
デイビッド「あ、ごめん」