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飲んで 飲んで 飲まれて〜飲んで

北の国の住人は、老若男女問わず酒呑みなのだそうです。

目覚めの一杯 食後に一杯 風呂入って一杯 そいでまたベッドで一杯って懐かしい曲が替え歌として浮かんで来ますよ。


勿論美味しくお酒を飲むために、仕事はキチンとやって、酔っ払って暴れたりせずに楽しいお酒を飲むのが決まり事というか、暗黙の了解だそうです。


酔って暴れたり絡んだりすると、周りで飲んでいる方々に取り押さえられるとか。

そして罰則として、禁酒期間が申し付けられるそうです。

罰金なんかより、禁酒を言い渡される方がこの国の人には効くそうですから。


そんな国ですから、口実があれば飲む、無ければこじつけても飲む。

来訪の要件が済んだ今飲まずにどうする?的に押し切られ只今宴会中です。


予定外の宴会に、一泊する事となり、ブルースを人化させ合流、チャック達にはコニーから城へ

『帰りは明日になる』

との伝言を入れてもらい、宴会の真っ最中です。


「…………あのぉ…とても大人数なのは何故でしょう?」

木製のジョッキを片手に、宴会場を見回せば、見知らぬ男性や着飾った女性、それに城の中を案内してくださった騎士さんや、入り口にいた門番さんも居ますよね?


「確かあの辺りの集団は、この国の位持ちだったと思うよ。

一緒に居るのはそれぞれの奥さんじゃないかな」

コニーが着飾った集団を見ながら言うと、

「あちらは服装からして、城に勤めている方々ではないですか?」

エプロンを着けた女性や、作業着っぽいものを着た男性が集まっている集団を指さすアイン。


私のイメージでは、来た客を持て成す宴とは、来賓を囲んで挨拶や名刺交換、情報交換など、ビジネスライクっぽい感じなのですけど…。


この場に連れて来られて、

「んじゃ好きに飲んで良いからな」

と一言有っただけで、後は放置です。

お酒やおつまみが次々と運び込まれて、この国の味に興味も有りますので、飲み比べたり、色々と摘んでいると、気づけば沢山の人が会場に居たのです。


挨拶も、乾杯も、紹介も何もなく、ただお酒の匂いを嗅ぎつけて集まった、って感じですね。

私がそう言うと、

「その通りだと思いますよ。

お酒を飲む場が有るので、飲んでいるのでしょう。

何のための宴で、誰が居るかなど関係ないのがこの国の人達です」

「仕事の話さえ終わっていれば、誰が来て飲もうと関係ないと言うのがこの国だね」


確かに仕事の話は終わりましたけど、何となくモヤっとするものが…。

「この場に私達要らなくないですか?」


話どころか挨拶もしないのに、わざわざ一泊してまで宴会に付き合う事は無かったのではないでしょうか。


「それだと口実が無くなるから、居る事が大事なんじゃない?」

コニーの言葉にアインも続けます。

「近くに新しい町をつくるためにやって来た方々を持て成す宴、そう言った口実があれば、勤務中でも堂々と飲めますからね」


「難しい事を考えても仕方ないぞ。

この国はこんな国だと思わないと付き合ってゆけぬ。

さあ、お前も飲め飲め」

ブルースが肩を叩きながら笑っています。


…そうですね、歓迎の宴だとか、仕事後の会食だとか、そんな前世の記憶がチラつくからモヤっとするのでしょう。

気持ちを切り替えて、私も楽しみましょうか。

頭の中で酒呑み音頭でも歌いながら、飲みます。


酒を飲んでいない間は近付いて来なかった方々が、酒を飲み始めると、徐々に集まって来たので、挨拶をしようとしたのですけど、


「硬っ苦しい事は置いといて、飲んだ飲んだ」

「え?名前?『そこの親父ザル』とでも呼べば良い」

「おい、それじゃあ同じ親父ザルの俺と区別がつかないぞ」

「じゃあ俺の事はニヒルな親父ザルだ」

「なら俺はクールな親父ザルだな」

「「ワハハハハハハハハ!!」」

私の両肩をバンバンと叩きながら、親父ザル…ゴリラの獣人が大笑いしています。


後でアインが教えてくれたのですけど、財位(財務省的な?)のトップと、軍位のトップだそうです。

軍位は納得だけど、財位はゴリラに向いていない気が……偏見ですかね。


その後も、メイドさんらしきネズミの獣人さんや、コックの牛の獣人さんなど、色んな人から酒を勧められて、勧められるままに飲んでいたら………日が暮れる前に早々に潰れました。


たくさん飲んだのですから、当然翌朝は二日酔いとなりました。

起き上がれずにいると、ブルースがため息一つで回復魔法をかけてくれました。


二日酔いって状態異常なんですね。

ドリンク剤飲むより効きましたよ。

因みに私以外は皆さん、ケロッとしていました。

マークスさんは夜(勤務時間)になったら仕事に戻ったそうです。

私より全然飲んでいたのに、キチンと仕事に戻れるって凄いと素直に感心します。


この国は嫌いではないですけど、私は住めないと思いますね。

肝臓壊しそうだし、完全に開き直る事ができないと思いますから。


シナトラはこの国好きそうですね。

もしシナトラがこの国に生まれていて、この国で出会ったとしたら……家族になってもらえなかったでしょうね。

うん、この国には絶対にシナトラを連れて来ないようにしましょう。


王様トカゲ姿のブルースの背中の上で、密かに決意をしていた私に、コニーが声をかけて来ました。


「ほら、この下辺りが町をつくる予定地だよ」


おお、地図で見るのと、こうして実物を見るのと、全然違いますね。


まっすぐ前を見ると山脈、左手から後方は大森林、右手側には湖と小高い山。

森が点在していて、地面は微妙に起伏しているようですね。


町をつくるには整地から始めないといけないようです。

でも、こうして実際に予定地を目にすると、本当に町をつくるのだと言う思いが、ひしひしと浮かんで来て、ワクワクして来ます。


ふふふふふ、楽しみですね。





ジョニー「……………(バタンと倒れる)」

コニー「!!!!!アイン、どうしょう!ジョニーが!」

ブルース「なんだ、毒でも盛…!!」

(アインに足を踏まれ言葉が途切れる)

アイン「いえ、多分ですが、大量にお酒を飲んだからだと思います」

コニー「え?酒を飲んだだけだよね?」

アイン「この国の方々や私達と一緒にしてはいけません。

アルコールは摂りすぎると害になることの方が多いですからね」

ブルース「流石若年よ………!!!」

(踏んだ足をグリグリするアイン)

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