トラブル発生です
「あまり時間もないですので、本題に入らさせていただきます」
メイドさんがお茶を出し、部屋から出ると、アインが話しはじめました。
前もって今回の訪問の目的は伝えているので、私の紹介と、私たちの関係を軽く説明しました。
そして町をつくる事、その場所の候補地を伝えます。
「町ができたら私と東山の王の分裂体である彼もそちらに住むこととなります。
どちらの候補地に決まりましても、これまでより距離が近くなります。
何かあればお互い手を貸し合うことができれば良いですね」
ご近所付き合いは大事ですからね。
「いつも助けていただいてばかりなのですから、我々の力で宜しければいくらでもお使い下さい」
頭を下げる王様に、コニーが話しかけます。
「町をつくるにあたって、人手が必要になるかもしれぬ。
その時はよろしく頼む」
「勿論です」
「それと、身内だけでは町を営むのも難しいからな。
移住したい者が居れば、条件次第では受け入れる予定だ」
これも話し合った事です。
勿論家族だけで暮らしていければ良いのですけど、現実的に無理でしょう。
畑もやりたいですし、チャックの為にも、果物の樹をたくさん植えたいですし、米も作りたい、味噌醤油以外の調味料を作ったり、呑兵衛達のために日本酒を造ったり、町ができたらやりたい事は沢山あります。
その為には人でも要りますし、家を建てるのではなく、町をつくるのですから、家族だけと言うわけにはいかないでしょう。
なので、いくつか条件を決めて、その条件をクリアした人は、年齢、性別、種族も関係なく住人として迎え入れる事に決めた事も伝えます。
「後はそうですね、彼は冒険者ギルドに登録していますけど、どちらかと言えば商人として、色々な品を流通させています。
この国とも交易をすると思いますので、一応伝えておきます」
人族の国には何か特産品など有るのでしょうか。
特産品でなくとも、何か珍しい物などが有れば良いですね。
東の品を広げるだけでも良いんですけど。
などと考えていたんですけど、正面からの圧が高すぎて、無視できないレベルです
「あの、何か?」
愛想笑いを貼りつけルストーグ王子に話しかけると、スッゴイ目で睨まれました。
「たかが商人が私に話しかけるなど不敬である!」
あー、はいはい、すみませんね。
王族などと関わりのない人生を歩んで来ましたから、上下関係には疎いでしょう。
でも私は一般人ですけど、西と東の王のアイン達の連れですよ?
あなたの父親と同じ位の客人の連れですよ?
口を挟まず居たのにガン飛ばし……睨み付けて来るから、ひとこと問いかけただけですよ?
その態度はいかがなものでしょうね。
「ルーグ!」
ほら王様真っ青ですよ。
「王よ、なぜ貴方が下手に出るのです!
西の王だ、東の王だと言っても、所詮辺境の地の魔族では無いですか!
この商人も見た目からして亜人でしょう?
我々王族の前にいる事自体不敬では無いですか!」
何言ってんの、コイツ?
確かに東洋人丸出しの俺の顔は、この世界では浮いてるだろうが、俺も人間だぞ?
それにこの世界人口の半分は人族以外だろ?
人だと偉いとか無いだろ?
そう思ったのは私だけでは無い様です。
アインとコニーの凍りつく様な視線や、漏れ出す魔力の威圧感が凄いです。
それより何より、顔色が真っ白になった王様が立ち上がりました。
「何を言っておる!」
「王こそ何を怒るのですか、我ら人族が世界の理です。
人族が居てこその世界です。
亜人や魔族などは、所詮人族の模倣、人族の亜種ではないですか。
それなのにその人族の王である貴方が…」
「黙れ!!」
なんだか持論を語り出した王子の言葉を、王様の怒声が遮ります。
話を止められて不満顔の王子……もうガキでいいですかね。
「衛兵!この者を部屋から連れ出せ!」
扉に向かい声を上げる王様に、
「何を言うのですか、私は正論を述べただけですよ」
など言っていますけど、王様は視線も向けません。
「王子、こちらへ」
部屋に入って来た二人の兵士さんに腕を取られ立ち上がらせられると、
「何をする!この不埒者!
私を誰だと思っているのだ!」
怒鳴るガキに兵士さんの動きが止まりましたけど、王様の一言にガキが言葉を無くします。
「ソレを連れて行け。
ソレは廃嫡の後処罰する。
ソレに連なる者も処罰の対象だ」
「な……!
父上!何を仰るのですか!
私は皇太子ですよ⁉︎
この国の次期国王ですよ⁉︎
私が人族の為により良い国を作る事を、周りから期待されているのですよ!
廃嫡などあり得ない!」
顔色を変えたガキに、王様は冷たく告げます。
「お前の教育を王妃や部下に任せた私の失態だな。
お前の様な世間知らずに国を任せるわけにはいかん。
詳しい沙汰は追って伝える。
部屋に閉じ込めておけ」
「はっ!」
最後は兵士さんに向けての一言です。
ガキは何か喚いていますけど、誰も耳を貸しません。
扉が閉じられ、喚き声が遠く聞こえなくなったところで、王様がアインの前で膝をつきました。
ちょっとだけ後味の悪い話になってしまい、すみません。
最初王子は転生者で、会合の後にジョニーと盛り上がると言う流れになるはずだったんですけど、なぜか『バカ様』になってしまいました。
通常(?)
人族 >>>>>>>>>亜人>>>>魔族(逆も然り)
と言う設定がよく見られますけど、この世界では
魔族 >>一部の亜人 >>>>>>>亜人、人族
と言う感覚です。
魔力が豊富で、多様な魔法を使え、戦力もあり、寿命も長い、そんな魔族が最強です。
一部亜人は、王様トカゲなどの強者です。