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甘酸っぱいですね

そんなある意味長閑な時間を壊したのは、子牛サイズの野犬…いえ、多分あれは狼ですね。

私とアインが魔法を使おうとしたんですけど、場所取りが悪い。


狼が現れたのは、ヨーコーの向こう側の藪の中、私やアインが居て焚き火が有って、その向こうに居るヨーコー、その後ろの薮から狼。

つまり、魔法を使うとヨーコーを巻き込んでしまいかねないのです。


魔獣ならアインの索敵で接近される前にわかりますけど、動物は対象外で索敵に引っかかりません。

普通の動物ならうちの家族なら瞬殺ですか近付いて来ませんからね。


今は力と瞬発力を持つブルースとシナトラが居ませんし、状態異常魔法で動きを止めるチャックも居ません。

上空から威嚇できるディビッドも居ません。

アインと私の魔法は、巻き込む恐れがあるので使えません。

しかもアインの腕の中には白雪が居るので、瞬時に動けません。


何か方法は…と考えた一瞬後、狼は空を飛んでいました………。


「あ、しまった!

ぶっ飛ばさずに食べればよかったわ!」

ヨーコーのすぐそばに居たルシーのアッパーカットが炸裂しました。

いやー、見事に飛んでいきましたよ。


「あ…、あの……ありがとう、ございます」

「ん?どういたしまして?」

ルシーさん、何故疑問系?

「別にありがとなんて良いのに。

ちょーどイライラしてたから、思いっきりぶっ飛ばしたらスッキリしたからね」

八つ当たりも入ったアッパーカットでしたか。


「二人とも怪我はありませんか?」

「はい、大丈夫です」

「あんなの一匹くらい、元の姿なら鼻息一つで吹っ飛ばせるわよ」

鼻息………まあ、王様トカゲですからね……。

でもせめて吐息一つとかにして欲しかった。


それにしても……

「先程の狼……犬?はどうしてこちらに来たのでしょうね。

いつもなら野宿をしていても、王様トカゲのブルースやルシーが居ると、近づいてこないんですけど…」


「魔獣ですと、気配を察知しますから近づきませんね。

今のは普通の動物でしたから、気配察知ができてないのか、それとも……」

言いながら、アインが先程狼が現れた薮の方へ視線を流します。

すると……


「灰色犬が来なかったか?

我を見てこちらの方へ逃げたのだが。

まああんな小物、お前達なら危険は無かろうが」

狼…灰色犬を追ってブルースがやって来ました。


「ブルースの撃ち漏らしですね。

王様トカゲの気配に当てられて、逃げた所がここだった、と」

「ふむ、逃げ出したから追うつもりは無かったが、こちらへ向かったから一応来てみたが、問題無いな」


もう少し身体を動かしてくると、ブルースは藪の向こうへ消えました。

「狩りをする時に、オーラ……気配?を抑える事はしないんですかねぇ」

でないと獲物が逃げるのでは?

と思ったのですが、

「ある程度の獲物を狩る時には気配を抑えるでしょうけど、大物狙いの時は、逆に微量に気配を漏らすのですよ。

そうすると、テリトリーを荒らされたと大物は寄って来ますからね」


成る程、自分を餌にしているのですね。

オーラ全開ですと全ての獲物は逃げるかも知れませんが、調節すれば大物が釣れるんですね。

その調節されたオーラでさえ逃げ出した先程の狼……灰色犬はブルースが言うように小物なんでしょう。


そんな話をアインとしながらルシー達の方を見ると、スッキリした顔で再び紐結びに挑戦しているルシーと、そのルシーをチラチラと見ているヨーコーの姿が。


おや〜?



ブルース達の狩って来た獲物を調理し、夕食を食べている時の事、

「これ、先程のお礼…です」

ヨーコーが熊っぽい獲物の串焼きを、ルシーへ差し出しました。


「え?あんなの気にしなくて良いのよ。

それにまだお肉は沢山あるんだから、それはあなたが食べなさいよ」

ルシーに断られて、差し出した串焼きを引っ込めるヨーコー。


実際に、ブルース達の狩って来た獲物はいつものように大量です。

皆でお腹いっぱい食べても、肉ストックが貯まる程です。

なのでルシーとしては、人の食べ物まで手を出さなくても、欲しければ焼けばいいと思ったのでしょう。


「うん……そうですね………」

シュンとして、引っ込めた串焼きを口にするヨーコー。


おや〜?



「ヨーコーはもしかして、ルシーの事が気になるんですか?」

雑魚寝する時に、ヨーコーの近くを陣取った私は、小声でヨーコーに尋ねてみましたら、彼の肩がビクッとと跳ねて、赤い顔をし、視線をウロウロさせながら答えました。


「気になる…とかよくわかりません……。

彼女は…わたしを守ってくれました…。

今までわたしに優しくしてくれたのは……ここに居る皆さんが初め…てです。

わたしの周りに居た女性は……怖かった………です」


訥々と話しながら、何かを思い出したのか、小さく身震いしています。


「皆さん…優しい……彼女も優しい………でも、彼女は皆さんと…何か違う…感じがするのです………。

彼女……優しくて強い。

……そんな彼女を見ると………この辺がムズムズします……」


そう言って胸を押さえるヨーコー。

恋、なのでしょうか、なんだか甘酸っぱい感じです。


「そうですか。

何か聞きたいことやわからない事があれば、聞いて下さいね」

人生の先輩として、淡い恋心を応援しますけど、茶化す事も嘴を挟むこともしません。

でも聞かれればなんでも答えますよ。

なんてったって私と妻は、生涯ラブラブの夫婦でしたからね。


ふふふふふ。




チャック「……ジョニーが凄く楽しそうなんだけど…」

アイン「小声で話していますけど、こんな近くに私達がいるのに、デリケートな話をするのは如何なものでしょう」

ブルース「先程のは求愛給餌か?」

アイン「そこまでは考えてなかったでしょう。

沢山食べる彼女に喜んでもらいたかった…くらいの考えだと思いますよ」

ブルース「断られてたがな」

アイン「取り敢えず見守りましょう」

チャック「余計な口を挟まない様にシナトラに言っとくよ」

シナトラ、ルシー「ZZZZZZZ……」

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