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異世界は動物の色も不思議ですね

「信じられない!

何考えてんだよ!」

飛んで行った洗濯物は、チャックが回収して来てくれました。

いや、失敗しましたね。

今度は箱が何かに入れてから試してみましょう。

今日は生温いドライヤーで、気長に乾かすしかないですね。


少しずつ乾かしていって、なんとかなったのは昼過ぎです。

干して乾かすよりは早かった……のでしょうか?

気を取り直して出発ですよ。


空を飛ぶチャックの先導で、道無き道を進みます。

しかしながら、背丈の高い草を木刀ならぬ木の枝で、払いながらの道行は、思ったほど進みません。

もっと森の奥深くに入れば、陽が届かないので下草もそんなに生えていないでしょう。

森の端辺りは木がまばらなので、草がとても元気です。

何とか日暮れまでには草の背丈が低い場所へ辿り着きたいですね。

でないと焚き火もできません。


それにしてもチャックは物知りですね。

「あ、その白い草の下に甘い実がなってるはずだよ、下の方を見て」

「その茶色い葉っぱは甘くて美味しいよ」

甘いものばかりですが、食べ物はありがたいです。

しかし道草を食ったお陰で、背丈の低い草のエリアに入ったのは、すっかり陽が落ちてからでした。


ずっと飛び続けて疲れたチャックは、今は私の背中です。

私がチャックを背負い、リュックはチャックが背負っています。

このまま横になれば『親亀の背中に子亀を乗せて〜』みたいですね、ふふふ。


木の繁っているこのエリアは、太い樹々が多いですね。

両手を広げたより直径の方が長い木が、沢山生えています。


焚き木をする為に、土魔法である程度の範囲の地面を攪拌し、火事を起こさない対策としました。

草を刈るより手っ取り早かったからの撹拌でしたけど、地面が湿っぽくなってしまい、チャックの視線が冷たいです。


焚き火にあたりながら、採取して来た草や実を食べ、タブレットを確認します。

地図などがないかと思い、画面に【地図表示】と書き込もうとしたら、画面真ん中の下に緑色の丸が点滅していました。

何かと思い押してみると


【ポイントが貯まりました 交換可能です】

と出ています。

その右には

【交換品の表示】

と有りましたので、それを押して画面を開いた時、



  ズザザザザーーー

 ベキベキベキ


奥の方から大きな音が響いて来ました。

何か重い物が落ちる音です。

このまま音の元を確かめないのも怖いので、私達は音のした場所へ行ってみることにしました。


音のした場所には不思議な形の樹が生えていました。

一本の樹なのでしょう、王冠の様に等間隔で太い幹が、円を描くように真っ直ぐに伸び、中央が窪んでいます。

木の枝葉は上部にしかなく、外から見ると蓋をするように、中央へ向かい伸びていて、遠くから見ると東屋の様に見えます。


その中央の窪みに、大きなスイカ……ではなく、緑色をした虎がこちらに背を向け丸まっていました。


私達が近づくと、顔を上げこみらを見ながらグルグルと、唸り声を上げましたけれど、立ち去る気配がありません。


「血の匂いがするよ」

シャツの裾を引っ張り、背後に隠れているチャックが私に告げます。

怪我をしているのでしょうか?

離れていても血の匂いがするほどの怪我なら大変です。

私はタブレットを開き、先ほどちらりと見かけた景品の、【回復】のボタンを押しました。

これで回復魔法が使えるようになった筈です。


「君怪我をしているんだよね?

僕は回復の魔法を使える筈だから、怪我を治してあげたいんだけど、近づいていいかな。

怪我を治す以外何もしないから」

話しかけますけど、警戒を解いてくれません。


「血が出る様な傷だと、バイキンが傷口から入って、破傷風にでもなったら歩けなくなるよ。

木の上から落ちたんだよね?

木の破片が入ってても大変だし、治療させてくれないかな」


なるべく優しい声で話しかけながら、じわじわと近づいて行きます。

威嚇の鳴き声は徐々に小さくなっていったので、きっと通じたのでしょう。

驚かせない様に、ゆっくりと近づきました。

近づくと、頭上の枝から、手のひらサイズのウリのような実が稔っているのが見えます。

あの実を食べるのに幹を登り、落ちたのでしょうか。


以前テレビでヒョウやチーターが、木に登っている映像を見た覚えがあります。

虎も木を登るのですね。


側まで寄り覗いてみると、右前脚が20センチ程切り裂かれて、肉が見えています。

落ちる時に枝に引っかけたのでしょう、とても痛そうです。

切り傷ですか…まずは傷口を洗い流して消毒しないといけませんね。


「傷口をきれいにしますから、染みるかもしれませんけど、我慢して下さいね」

水遣りで優しく傷口を流します。

それから消毒、イメージは、子供の頃からお世話になった、シュッとやってあわあわな消毒薬……


「マキ●ン」


傷口にあわあわが立ちます。

……どこから来ているのでしょうね?

大変染みる様で、虎はグルグル唸っています。


次は傷を塞ぐですか…縫合は無理ですし、そうですねえ、傷口をピタリとくっつけて、上に絆創膏を貼りそのまま時間が経って塞がる……というイメージはどうでしょう?

名付けるなら……


「傷パッチ」


唱えておいてなんですが、何と申しましょうか、若者言葉で「これじゃない感がスゲー」とでも言うのでしょうか。


まあ、傷口はイメージ通りに塞がっているようですから、気にしないでおきましょう。

ただ、手当てを受けている虎が、傷口と私を何度も見比べていますし、背中に張り付いているチャックが、

「ホント、何なんだよ、わかんないよこの人の魔法、普通ヒールとかハイヒールじゃない?

単純に回復とか、治癒とかじゃないの?

訳わかんないよ、ホント」

怒った口調でぶつぶつ言っていますけれど、聞こえなかったことにしましょう。


だって魔法はイメージが大切なのですよね?

回復や治癒は言葉の意味はわかりますけれど、イメージができません。

回復で治ったイメージはできても、どうやって回復するかが大切なのだと思うのですよ。


それに、悪役ヒールでなぜ治るのですか?

女性用靴ハイヒールでどうやって傷が塞がるのですか?

余計に怪我しますよ、アレは一種の武器ですからね。


傷を塞ぐならやっぱり傷パッチですよね。

それなら塞がるところまでイメージできますから。

なのでこれからも私は傷パッチ派です。


魔法を使える動物が特殊な色であって、普通の色の動物も居るのですけど、まだ見ていないだけですよ。



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