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港の………

ベッドの陰へ戻り、ホットミルクを飲む男性に声をかけます。


「私とぶつかって倒れたのは覚えていますか?」

再びベッドの陰から顔を覗かせた男性は、小さく頷く。


「転んだ時にどこか痛めていませんか?」

「大丈夫です」

「痛いところはございませんか?」

「問題ありません」


痩せ細り、ホームレスの様に見えるのに、受け答えは随分と丁寧で、チグハグな印象ですね。


「没落した位持ちか?」

「何かから逃げているとか?」

ブルースとアインが話している声が届いたのか、男性の体がビクッと震えました。

どちらにせよ何か問題があるのでしょう。


「あ…あの、わたし、もう行きますね。

ご迷惑をおかけ致しました」

立ち上がり、ふらつく足でドアに向かう男性の肩に手を置き、視線を合わせ問いかけます。


「どこか行く場所か、戻る場所があるんですか?」

揺れた視線を伏せ、小さな声で「はい」と返事をしましたけど、嘘ですね。


「急ぐ用事がないのなら、体をしっかり休めてから移動した方が良いと思いますよ」

「いえ…大丈夫です………。

えっと……あの…………急ぎますから、失礼します。

お世話になりました」


目を剃らせたまま、男性は部屋から出ようとしますけど、ブルースがドアの前に立ち、出入り口を塞ぎます。


「そんなにフラフラで出て行ってどうする。

また倒れるだけではないか。

言いたくなければ理由は聞かぬ、このお節介の前で倒れたのが不運だと諦めて、体を癒せ」

ブルースの言葉にアインも

「そうですね、話したくないのなら詮索もしません。

ただ、このまま行かれると、彼が…私達もいつまでも心配です」

「規格外ばかりのお節介集団だから、逆らわない方が良いかもね」


チャックはお節介集団だと言いますけど、別に私はお節介では無いですよ。

アインが言うように、このまま別れると、私がいつまでも気になるだけです。

だから私情です。


「でも…ご迷惑を……かけると思いますので………」

「行く先が有るのなら、そこまで送らせて下さい。

そうすれば私も安心ですから」

そう言うと、男性は視線を揺らし、返事に詰まりました。


「……もし、何かから逃げているのでしたら、私達はここの住人では無いですので、すぐに遠くへ行きますから、途中まででも一緒に行きますか?」


一見ホームレスに見える男性ですけど、言葉遣いや所作から、有る程度の教育を受けている様に見受けられます。

なら、何かから、どこかから逃げて来たのでは?と思い問いかけると、男性は驚いた様にこちらを見てきました。


「話したくないのなら何から逃げて来たのかは聞きません」

「でも……もしかすると…わたしは犯罪者かもしれませんよ」

「あなたがそうだとは思えません」

「えっと……あの……とても大きなものに追われてる…のかもしれませんよ」

「大丈夫ですよ。

私達、わりと強いんです」


私が男性の言葉に返事を返している後ろで、ブルースが「わりとどころではないわ、規格外が」とか失礼なこと言っていますけど、無視です。


「それに万が一あなたが悪人だとしても、それは私の見る目がなかっただけの事です。

だから安心して私を騙してください」

絶対に悪人だと思わないですし、悪い事を考えていたとしても、私以外の家族が気付きます。

アインもブルースも何も言わないと言うことは、彼らも悪人だと思わないと言うことですから。

もし私達全員を謀る事ができたのなら、それはそれであっぱれですよね。


「…………わたしは東から逃げて来ました。

もしかすると追っ手がかかっているかもしれません………。

……それでも……連れて行ってもらえますか?…………」

目に涙を浮かべて問いかけて来ます。


東から逃げて来たのでしたら、余程のことがない限り、山脈や海を越えてまで追ってこないとは思いますけど、私達は内陸部へ向かうのですから、この広い国内でそうそう見つかることはないでしょう。


何から逃げているのかは分かりませんけど、詳しくは彼が話したくなった時にでも聞けば良いと思います。

私はアイン達に振り返り

「そう言うわけなんですけど、彼を同行させて良いですか?」

と、尋ねます。


「連れて行くと決めておるのだろ?

我は別に構わん」

「悪い事をして逃げているのかもしれませんけど、彼が悪人だとは思えませんので、私も構いませんよ」

「……何かあってもうちの家族ならどうとでもできるだろうし、ジョニーが連れていきないのならいいんじゃない」

反対意見は出ませんので、彼を同行させる事に決めました。


「あ、そうだ、私達は私以外亜人なのですけど、あなたは人族ですよね?」

「はい……親は亜人と人族ですけど、私は人族です」


人族と亜人との間に子供ができると、どちらかの種族になるそうです。

亜人の能力を持った人族、人族の寿命の亜人、と言った感じのハーフになる事はあっても、種族的なハーフにはならないそうです。


「そうだ、自己紹介が遅れましたね。

私の名前はジョニー、人族です。

あちらが魔族のアインと亜人のブルース、同じく亜人でチャックです」

私が簡単に種族と名前だけ伝えると、彼も名前を教えてくれました。


「私の名前は、ヨーコーです」


……………港で出会った髪の長いヨーコ?

ヨコハ●ですか?ヨコス●ですか?

あ、男性ですね。

ヨーコーですね。

ダメだ、頭の中でエンドレスで曲が流れています。

停止スイッチはどこだーー!




ブルース「逃走して来た奴隷か?」

チャック「奴隷制度は禁止されてるんじゃ無いの?」

アイン「この地域では禁止されていますけど、他所では普通に居ますね」

ブルース「まあ、奴隷にせよ、没落者にせよ、悪い気はしていないから大丈夫だろう」

アイン「そうですね」

チャック「そんなの分かるものなの?鑑定?

まあ、ジョニーに害がないならなんでも良いけど」

アイン「鑑定などしなくても、滲み出るもので分かる様になりますよ。

色んなものをよく観察して、経験を積めば見る目は養われます」

チャック「………わかった……………ありがとう」

アイン「どう致しまして」

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