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おじさんは川で洗濯を

「チャックは人間に詳しいの?」

森の奥にいる鳥にしては、人間の生活を知っている様なので聞いてみました。


「オレのじいちゃんが元亜人なんだ。

無性の友達が別の大陸に行く時に、この森から離れたくないからって鳥に戻してもらったんだって」

「そうなんだ……、でも僕もこの森にはずっと居ないよ。

ひとまず人里目指そうと思っているんだけど、チャックはこの森を離れるのどう思う?

離れたくないなら鳥に戻る?」


私は人ですから、最終的には人の中で生活したいと思います。

まずはこの世界を知るために、旅をするつもりなのですけどね。

このままこの森で、末長く暮らすという考えはありません。

私の問いに、チャックは声のトーンを落とし答えます。


「オレ…この森に居たくないんだ」


ポツリポツリと告げる彼の話によれば、特殊な色の動物は、その色の示す魔法が使えるそうなのです。

紫色の彼の場合、状態異常が使えて、外敵から群れを守る戦士の役割が有るそうなのですが、彼は魔素を上手く取り入れる事ができず、魔法が使えないそうなのです。


体も小さく魔法も使えない彼は、群のリーダーから追い出されてしまったそうです。

群れから離れ彷徨っているうちに、不思議な魔力を感じて、その魔力を辿って私を見つけたのだとか。

そうして観察していたそうなのですけれど、寒さに弱い彼は焚き火の誘惑に勝てず、近寄って来たそうです。


観察していて余りにも情けない私に、ついつい食べ物を恵んでくれたという事ですね。


そして先程私の飲んでいた、魔法で出した水が、魔素を含んでいるのに気づいたので飲んでみたら、空気中の魔素を取り入れるより簡単に体内に取り入れる事ができて、魔力への変換もスムーズにできたそうです。


よくはわからないのですけれど、私の出した水で、彼の能力がパワーアップされた、という事ですかね?


そこで彼は、このまま私と居れば、魔素を手軽に取り入れる事ができると思いつき、私の家族になってくれることとなったそうです。


「決してあんたが心配だったとかじゃないからな!

情けないあんたの手助けをしようとかじゃないからな!

簡単魔力取り入れ要員として側に居てやる……居ることを許可しただけだからな!」


微笑ましいですねえ、私はうんうんと頷き話を聞きました。

わからない事はいくつかありましたけれど、まあいいでしょう。

大まかな事がわかればなんとかなりますよ。


「チャックは魔法が使えるんだね」

「毒魔法も含めた状態異常だよ…多分。

今はまだ使えないけど、このまま魔力を貯めてちゃんと循環させれば使えるよ」

「でも魔力の取り込みすぎは危険なんだよね」

「その辺りはちゃんとわかってるよ。

だからさっきもほどほどで飲むのやめただろ」

「成る程、ちゃんと考えていて偉いね」

思わず頭を撫でてしまいます。


「子供扱いするな!」

顔を赤くして怒鳴りながらも、その場から逃げません。 

彼の態度は世に聞く『第二反抗期』という時期の態度なのでしょうか。

可愛いですねえ。


「では森を出ることに依存はないですね」

確認すると頷きました。

「ただ人の住む場所がどこかはわからないからで、適当に移動するつもりなのだけど…」

「オレわかる!

このままあっちに行くと人が住んでる場所が増えてくよ」

あっちと言われたのは、陽が登る方向ですから、東ですかね。

「どれくらい歩けば着くのかな」

「オレ歩いたことないからわかんない。

飛んで行くと10回お日様が昇るくらいかな?」


オカメインコが一日どれくらい飛距離を稼げるかがわかりません。

でも人が道無き道を歩くより、一日に進む距離はあるでしょう。

随分とまあ森の奥で目覚めたものですね。


川のこちら側は、最初にいた川向こうより、草の背丈も高いですし、サクサクと進む事は難しいと思われます。

私の胸の辺り、チャックの背丈と同じくらいの草むらですからね。


私が考え込んでいると、

「仕方ないから、オレが飛んで上から歩きやすい道を教えてあげるよ。

全く世話が焼けるよね」

やれやれという感じにチャックが言いますけれど、ありがたい申し出です。

私は「よろしくお願いします」と頭を下げましたら、彼は真っ赤になってそっぽを向きました。

本当に可愛いですねえ。


そうと決まれば出発……の前に、川辺に居るうちに、汚れた服や手拭いを洗濯しておこうと思います。

しかしながら、洗濯機は有りませんし、手洗いですが、雑巾を洗った事くらいは流石に有りますが、服を雑巾の様に洗うのは、なかぬか困難です。

そこで思い出したのが、以前外国の旅番組を見ていた時に、ご婦人が川原で洗濯物を足で踏んでいる光景です。


私は汚れ物を水に浸し、川原の少し大きな岩の上に纏めて、それを素足で踏みます。

フミフミフミフミ………いつまで踏めばいいのでしょう?

これくらいでいいですかね?


踏んだ洗濯物をもう一度濯ぎ、絞って……さて、どうしましょう。

大きな岩に張り付けて乾かすか、木の枝に引っ掛けるか……熱風を出して乾かせませんかねえ。

暖かい風をイメージして……


「ドライヤー」


……風は出ましたけれど、ドライヤーと呼ぶには生温い風ですね。

真夏の炎天下の風くらいですか?

これではいつまでかかってしまうのか分かりませんね、範囲も狭いですし。

洗濯物を乾かすのなら、やはりこちらですかねえ。

家に有った家電をしっかりイメージして……


「乾燥機!………あ……」

「はあ〜〜⁈」


洗濯物はぐるぐると回りながら勢いよく、空高く飛んで行きました。


名前の付け方が、昭和臭なのは、そういう年代なんです。

主人公……と作者が


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