後編
僕とソフィアは、黙ったまま、湖のほとりの木々の間に細く延びる、舗装されていない坂道をしばらく上って行った。
湖を臨む場所にある、白い石で造られた十字架と、同じ石で造られた長方形の前で膝を折ると、ソフィアは長方形の石の中央にそっと彼女の作った花冠を置いた。
「ベルナルド様…。最近は、会いに行けてもおりませんわ。また、あの場所に行けば、お会い出来るのでしょうか…」
すすり泣く彼女の肩を、僕はそっと抱いた。彼女の肩は細かく震えていた。
ぽたぽたと、彼女の涙が兄さんの名前を刻んだ石の上に落ちる。
そう。今日は兄さんの命日だった。…5年前、この湖で溺れた僕を助けるために、亡くなった兄さんの。
***
あの日、兄さんと僕は、別荘近くの湖で泳いでいた。
ソフィアは湖のほとりでウッドチェアに腰掛けて、僕たちが泳ぐのを見ていた。
僕は、互いを思いやって笑い合う、兄さんとソフィアが羨ましかった。…いや、ソフィアと婚約している兄さんが羨ましかった。彼女の緑がかった澄んだ美しい碧眼に、兄さんが映っているのを見ていると、胸がちりちりと焼けつくようだった。僕とソフィアの関係を考えたら、兄さんの婚約者であり、将来は義理の姉になるはずの彼女を、僕はお姉様とでも呼ぶべきだったのかもしれない。でも、僕は年上である彼女のことを、あえてソフィアと呼び捨てにした。兄さんは少し眉根を寄せたものの、ソフィア本人が気にせずにこにこと微笑むものだから、僕はそのままソフィアと呼んだ。
生まれつき身体が弱いソフィアは、自分も痛みを抱えているからだろうか、繊細で優しく、人の痛みには人一倍敏感なところがあった。
僕は兄さんのことが好きだったし、心から尊敬していたけれど、兄さんはあらゆる分野で僕よりずっと優秀だった。努力しても敵わないだけの差があった。ちょうどあの時は学業面での悩みを抱えている時で、家族は別に僕たちを比較はしなかったけれど、つい兄と自分を見比べた時の劣等感に、僕はじわじわと蝕まれていたようだ。そんな僕の暗い表情に気付いたらしいソフィアは、ある時、僕を手招きした。
彼女は僕ににこりと笑った。
「ルイス。あなたは、笑った顔の方が可愛いわよ。…いったい、どうしたの?」
僕は、兄さんには何も敵うところがない。ぽつりとそう呟くと、ソフィアは、真剣な眼差しで僕を見つめた。
「人と自分を比べても、意味なんてないわ。自分は自分よ、ルイス。自分の持っているものを、どんな風に活かすのか。それが問題なんだと、私は思うわ。…あなたは優しくて、思いやりがあるし、人のことをよく見ている。自分の力を他人のために使うことが出来る。それはあなたの素晴らしい才能だと思うわ。
…それにね。あなたは、少なくとも私よりずっと頭の回転が早いわよ」
ふふと笑ったソフィアにとっては単なる励ましかもしれなかったけれど、僕にとっては、すごく、嬉しかった。前から仄かな憧れは抱いていたけれど、兄さんだけでなく、僕のことも意外と見てくれていたソフィアのことを、さらに熱のこもった視線で見つめるようになった。…もちろん、兄さんとの婚約を邪魔しようなどとまでは、思わなかったけれど。
そんな気持ちもあって、ソフィアに少しでもいいところを見せたいと思った僕は、少年らしい浅はかさで、湖の一気に水深が増すところまで勢いよく泳いでいった。その日は天気も良くて、風もなかった。何も問題ないように思われたけれど、急に僕の足がつり、身体が湖面の下に沈んだ。
慌てて兄さんが僕を助けに泳いで来た。でも、僕は岸から結構離れたところまで泳ぎ出ていたから、兄さんが来るまでに随分と水を飲み、何度も水面下に顔を沈めていた。ソフィアは短い叫び声を上げて、助けを呼びに走って行った。
その時、不思議な感覚があった。
僕は、湖の上から、溺れている僕自身を眺めていた。客観的に、まるで自分の魂が身体から離脱でもしたように、中空に浮いたところから、自分が湖に沈む様子が見えて、兄さんが僕に手を差し伸べるのが他人事のように見えた。…ああ、僕は死ぬんだな。そう思った。
そこまでで意識は途切れ、僕が目を開いた時には、僕はなぜかベッドの上で生きていて、兄さんの方が僕を助けて力尽きていた。起こったことが信じられず、世界が突然ひっくり返り、真っ暗になったようだった。
それは、ソフィアも同じだったようだ。兄さんが亡くなった日、呆けたような焦点の合わない表情で、服のまま湖に入って行った彼女は、肩から上だけ出ているところを目撃され、慌てて止められて事なきを得た。誰も気付かなかったら、そのまま兄さんの後を追っていただろう。元々身体が弱かった彼女はそのまま高熱を出し、何日か意識が戻らなかった。
彼女の意識が戻ったと聞いて、急いで彼女を見舞いに行った時、彼女はまだ熱に浮かされていたようだった。
彼女は僕の姿を見つけると、その大きな両目をじっと見開いて、声を震わせながら、少し上擦った声で僕に言ったのだ。
「ベルナルド様に、会ったの」と。
彼女の言葉に耳を傾けると、どうやら、彼女は意識をなくして寝込んでいる間、水のゆっくり流れる川のようなところを下る夢を見ていたらしい。水の流れる先に温かな光が見えて、そちらに進んで行こうとしたら、彼女を遮る人影があって、それが兄さんだったのだという。
兄さんに手を伸ばしたけれど、手を取って貰えなかった、と彼女は悲しそうだった。
僕は、彼女の言葉を否定せずに、ただ聞いていた。変わった夢でも見たのだろうと思ったのが本音だったけれど、彼女の言葉が真実だったと程なく知ることになる。それは、兄さんが僕に会いに来たからだ。
誰かがいる気配を感じて振り返ると、そこに兄さんがいた。驚いたけれど、怖くはなかった。兄さんの後ろの景色が兄さんを通して透ける中、兄さんは僕に微笑み掛けた。
僕が言葉を失っていると、兄さんは口を開くなり、こう言った。
「ソフィアは、泣いてはいなかった?彼女が僕のところに来たんだ」と。
兄さんから聞いた話は、ソフィアから聞いた光景と重なるものだった。
どうやら、ソフィアが向かおうとしていた光の先は、この世の向こう側に繋がっているらしい。兄さんは、慌ててソフィアを止めたのだという。
「ソフィアは、兄さんのところに行きたがってた…」
思わず僕が呟くと、兄さんは寂しそうに首を横に振った。彼女は今死ぬべき運命ではない、授かった本来の運命を曲げてはならない、と。
そして、そのまま僕の前から姿を消した。
…僕は、兄さんにお礼も何も言うことができなかった。
僕は、兄さんを見て、僕が溺れたあの日、遠くから見えた自分の姿を思い出していた。あの時、死ぬはずだった僕の魂を、僕の代わりにどうにか助けた兄さんと僕との間には、2人だけの説明のつかない繋がりが出来たのだろう。そう、すとんと心に落ちて来た。
ソフィアは、誰か家族にも兄さんの出てきた夢のことを話したようだったけれど、家族は彼女が愛する婚約者を亡くしたショックでうわ言を言っていると思ったようだ。気が触れたとでも思われたかしら、と影の差す表情で溢しながらも、僕が彼女の言うことを信じたからか、僕には兄さんのことを話してくれた。
…そして、僕は彼女から兄さんのことを聞く度、背筋が冷えた。なぜなら、それはいつも、彼女が死に掛けた後に決まって兄さんの話を聞いたからだ。
彼女は、どうやら命に危険が差し迫った時に兄さんを見るらしい。死を間近に臨んだ時、とでも言うのだろうか。僕自身もそんな不思議な体験には覚えがあるから、それは妙に腑に落ちた。
彼女から兄さんのことを聞いた後には、たいてい僕の元に兄さんも現れた。時には、ソフィアがぽつりぽつりと兄さんのことを話している最中に、彼女のベッドの側に現れたこともあったけれど、彼女は気付かなかった。どうやら、僕にだけ兄さんが見えているらしい。
ソフィアは、会いに行く度に兄さんが冷たくなると、目を潤ませて悲しそうにしていた。もう二度と来るな、しつこい、そんな言葉を受けて、彼女は酷く傷付いていた。
僕は、何を言うべきか迷った。
…兄さんは、君に生きていて欲しいから、まだ君に自分の元に来て欲しくはないんだろう。だから、君を愛しているからこそ、突き放すように冷たくしているんだと思う。そう言えば、彼女は困惑したようにぼろぼろと泣き崩れてしまった。だって、彼は一言もそんなことを言ってはくれないもの、と。
その後、また兄さんが姿を見せた。彼の瞳は不安に揺れて、そして僕の記憶にある兄さんよりも随分やつれた顔をして見えた。
「ルイス、お願いがあるんだ。…ソフィアを、この世界に引き留めてくれ。そのために、お前が彼女を支えてやってくれ。このままでは、俺は彼女を止め切れない」
確かにそうだった。ソフィアは、自覚があるのかないのかわからないけれど、死に掛けるような行動を平気で…あるいはわざとのように…することがあった。兄さんにただ会いたいのか、その後を追いたいのか。その度に、兄さんが水際で彼女を追い返しているようだ。
兄さんも、ずっとそれを続けてはいられないことは認識しているようだった。けれど、兄さんがこんなにも辛そうな顔をしているのは、ソフィアをこの世に留めるために、冷たい言葉をあえて彼女に掛けることで、傷付く彼女を見て結局兄さん自身がその心を痛めているからだということに気付いているのかは、わからなかった。あれほど兄さんが愛し慈しんでいたソフィアに対して、心の底では望んでなどいない、彼女に嫌われるための言葉ばかりを口に出すことは、元来優しい兄さんにとって、どれほど苦痛だったことだろう。
この前兄さんの姿を見た時…もう時間がないと言っていた時、兄さんの姿はかなり薄くなっていて、景色に溶けてしまいそうだった。
この夏が、多分最後だろう。
僕は何となく、そんな気がした。
***
兄さんの5年目の命日の夜、僕はソフィアを誘い、庭に寝転んで2人で夜空を見上げていた。
それは、兄さんが亡くなる前日に、兄さんとソフィアと僕の3人で寝転がって見ていた夜空とよく似ていた。…真っ黒なキャンバスに星屑を無遠慮にまぶしたような、見渡す限り満天の輝くような星空だった。
ソフィアが徐に口を開いた。
「5年前の、ベルナルド様が亡くなった日の前日。同じような夜空を見ていたこと、覚えてる?」
「…ああ、覚えてるよ」
ソフィアも同じことを考えていたようだ。
「あの日、見たベルナルド様の顔が忘れられないの。私が横を向いた時、目が合って。本当に美しかったわ。私のことを見て、優しく微笑んでいた」
「…うん」
僕が夜空を見上げたまま頷くと、夜空を一筋の流れ星が通り過ぎて行った。
「これも、あの日と同じね。…流れ星」
ソフィアが呟くように言った。
僕は、重い口をようやく開いた。
「僕は、あの時、流れ星に願ったことを、心の底から後悔してるんだ」
「…どういうこと?」
僕は少し声が震えたけれど、そのまま続けた。
「僕は、あの時もう既に、ソフィアに惹かれていた。ソフィアの側にいつもいて、将来は君を手にする兄さんが、ひどく羨ましかった。
僕は、こんな浅ましいことを願ったんだ。…ソフィアと僕だけの時間が、思い出が欲しい、って」
ソフィアは黙っていた。彼女の表情はわからなかった。
「それが、翌日にあんなことになって、僕の願い事は、叶ってしまった。あんな形で叶えたかった訳じゃ、決してなかったはずなのに。僕は自分のことを呪いたくなった。…僕があんなことを考えたせいで、兄さんは僕の代わりにいなくなったんじゃないかって。
…ソフィアだって、僕じゃなくて、兄さんが生きていた方が良かったでしょう?」
ソフィアは驚いたように僕を見つめた。
彼女はゆっくりと首を振った。
「いいえ。
…もちろん、ベルナルド様が生きてきてくれたら、とは何度も何度も、思ったけれど。
ルイス、あなたも私にとって大切な存在よ。あなたがいなくなって、代わりにベルナルド様が生きていたら、なんて、考えたこともなかったわ。
…あの夜に、ね」
彼女は夜空に視線を戻し、軽く溜息を吐いた。
「あの時、私も流れ星に願い事をしたの」
「…流れ星がすぐに消えて、願い事が間に合わなかった、って言ってなかった?」
「…よく覚えてるわね」
彼女が微かに笑った。
「恥ずかしくて、言えなくて誤魔化しただけで、私もあの時、星に願っていたの。
…私は、ベルナルド様とは想い合っていると感じていたわ。でも、私たちは婚約者ではあったけれど、彼は一度も口に出して私に好きだと言ってくれたことはなかったし、私もあれほど彼を愛していたのに、それを言葉に出したことはなかった。
…私は、彼に好きだと言ってもらいたかった、彼に愛情を示して口付けて欲しかった。私も彼を好きだと、そう伝えたかった。
でも、私の気持ちすら伝えられないままに、彼はいなくなってしまった。…あの時、せめて自分の気持ちを伝えておけば良かったと、幾度も後悔したわ」
彼女の頬には、涙が伝っていた。
「それから、あなたには何度も聞いてもらったけれど。私が遠い意識の中で、ベルナルド様とお会いする時。彼はいつも、凄く私に冷たいの。でも、私にはわかる。彼は、本物のベルナルド様だって。
…彼は、本当は、私を好きなんかじゃなかったのかしら?婚約者だったから親切にしてくれていただけで、本当は疎ましく思っていたのかしら?
…私には…わからないの」
僕は震える手で、彼女の髪をそっと撫でた。
ぼろぼろと涙を溢し嗚咽を漏らす彼女に、僕の言葉が慰めにならないことはわかっていた。
「さっきの流れ星には、何か願った?」
ようやく僕はソフィアにそれだけを聞いた。
そしてその時、僕の横に微かな、しかし確かな気配を感じた。
泣きながら、彼女は切れ切れに、少し掠れた声で答えた。
「あと一度だけでいいから、ベルナルド様の笑う姿が見たい。ベルナルド様に触れたい。それだけを祈ったわ。
…彼がいなくなってから、どうにかして彼に会いに行っても、どちらか一つだって叶わないの」
その時、僕は兄さんの声を聞いた。
「ルイス、お前の身体を借りるぞ」
その声は、なぜかソフィアにも聞こえたみたいで、彼女は驚いた様子で、兄さんの声に耳を澄ましているように見えた。
***
「ルイス、お前の身体を借りるぞ」
どこからか確かに聞こえた、ベルナルド様の声。私が聞き間違えるはずもない。
彼の声を少しでも耳に留めておきたくて、必死に耳を澄ました。
…いつも遠い夢の中で聞くベルナルド様の冷たい声よりも、ずっと穏やかな、懐かしい声だった。
「ソフィア」
私の隣にいたはずのルイスから、ベルナルド様の声が聞こえる。
上半身を持ち上げ、私を覗き込んだ彼の顔には、星明かりの中、澄んだアイスブルーの瞳が輝いていた。
私は目を瞠る。…5年前のあの日と同じ、私が思わず見惚れたのと同じ姿で、ベルナルド様が確かにそこにいた。
彼は、私がベルナルド様の存在を確かめるのを待ってから、そっと私を抱き寄せた。
「愛しているよ、ソフィア。君のことを、心から。態度には出していたつもりだったけれど、…照れ臭くて、口に出せないままになってしまった」
「ベルナルド様…!」
私も、ベルナルド様に回した震える両手にぎゅっと力を込めた。
「私、も…。ずっと、ずっと、ベルナルド様が大好きでした…」
彼は、懐かしい優しい手付きで私の髪を撫でてから、私の顎を持ち上げて、私の目をじっと見つめた。
…忘れようもない、何度も何度も思い返したベルナルド様の美しい顔が、そのアイスブルーの瞳が私を見ている。
私の目元をその指先でそっと拭ってから、彼は優しく私の唇に彼の唇を重ねた。
私は目を閉じて、一瞬にも永遠にも感じられる今を心に刻もうとした。
どのくらい、そうしていただろうか。
彼の唇が私から離れた時、彼がもうここから去ろうとしていることを感じた。
私は彼の身体に、思わずぎゅっとしがみ付いた。
「ベルナルド様…!どうか私も一緒に、連れて行ってください…!」
「…それは、できない」
苦しそうな顔で、ベルナルド様は言う。
「君がこの世を去った僕に会いに来た時、冷たい言葉を吐き、突き放すような態度を取ってしまって、本当にすまなかった。ああでもして、君に僕を嫌いになってもらわなければ、君に帰ってはもらえないと思ったんだ。
…もし君が、無理矢理に君の運命を曲げ、僕についてきてしまったら。君が見た、あの光の先は、道が2つに分たれているんだ。そうしたら、僕と君とは別の道を進むことになり、永遠に会えなくなってしまう。
あちら側の世界に比べれば、この世などはほんの一瞬だ。…だから。
僕は、1つ、君に約束しよう。君がこの世界で天寿を全うしたその時には、僕が必ず君を迎えに行くから。だから、どうかその時まで僕を待っていておくれ。
…君のこの世での幸せを、心から願っているよ」
ベルナルド様は愛おしむように私に笑いかけてから、淡く輝いて、ルイスの身体からすうっと分かれ出た。
ルイスも驚いたようにベルナルド様を見つめてから、少し頬を染め、涙でくしゃりと顔を歪めた。
「兄さん。ずっと、兄さんに伝えたかった。
…あの時、僕を助けてくれて、ありがとう。僕は、兄さんの弟に生まれてきてよかった」
ベルナルド様はふわりと微笑んだ。
「ルイス、ソフィアを頼んだぞ。ソフィアも、ルイスをよろしく頼む」
少し戸惑いを浮かべたルイスの耳元に、ベルナルド様が何かを囁いた。
「…お前が思うよりももっと、ソフィアの心はもうお前のところにあるよ」
私の耳には彼の言葉は届かなかったけれど、ルイスがはっとしたように目を見開いたのはわかった。
私は、ルイスと一緒に、ベルナルド様が天に昇っていく姿を、ただじっと見つめていた。
***
その後も献身的にソフィアを支えたルイスは、ソフィアの心を溶かし、彼らはやがて結婚する。
多くの子や孫に恵まれて、幸せな人生を送った彼らだったけれど、先にルイスが旅立った。家族皆に囲まれて、満ち足りた表情で。
そして、ソフィアが旅立つ時。子供や孫たちに看取られながら、彼女は穏やかに息を引き取った。
息を引き取る直前、彼女は両手を上に伸ばすような仕草を見せて、幸せそうに微笑んだ。
彼女を囲んでいた幾人かは見たそうだ。そこには、それぞれ彼女の右手と左手を取る2人の美しい天使のような男性がいて、1人はアイスブルーの瞳、もう1人は菫色の瞳に、それぞれ温かい色を湛えていたという。
最後までお付き合いくださり、どうもありがとうございました!
ここまで読んでくださった皆さまならばお気付きでしょうか。この小説のタイトルには、2つの意味がありました。
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