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「まーた泣いてんの?」
「きゃっ!」
首に絡み付く腕と重みに思わず声が出てしまう。
「ノア!変態!セクハラで訴えるよ!」
「せく……?そんな鼻水垂らしながら言われてもなあ」
イネスの双子の弟ノアは同じく金髪にエメラルドの瞳、髪を肩上で切り揃え整った顔つきでこちらの様子を伺ってくる。
というより近い!美しすぎて目がやられる!お前は紫外線が何かか!?という眩しさに思わず目を細める。
「ぶっさいくな顔してるけど、元気そうなら何より」
そう言って腕に回していた手をほどき、すっかり涙が引っ込んでしまった目元を手で優しく撫でる。
姉のイネスもそうだが弟のノアもこういう所が色んな意味で宜しくない。
この子達は天然タラシな部分があるので、美麗な人々に未だ慣れていない私にとっては心がとても震える、というか興奮する。
私も変態だった。
「そういや明日の卒業舞踏会、もうペアは決まってるのか?」
「え、決めてないけど?」
私たちは明日この国随一の学園であるアストレイヌ学園の中等部を卒業し、来月の頭には高等部としてエレベーター式に入学する。
その際に昔の貴族の名残りとして、代々アストレイヌ学園では卒業の日の夜に中高同時に舞踏会を行うのが伝統行事となっている。
舞踏会なんて厳かな名前がついているが、現代で言う卒業パーティーみたいなもので、大半は踊らずに食べて話してをする交流の場の様なもの。
「別に1人で行っても問題ないし、私は1人で参加する予定だよ」
「えー!なんだよ、俺とお前の仲だろ?」
「そんな深い仲は身に覚えがないですねぇ……?」
「んー、でも私はアンジュと一緒に舞踏会行きたいな?」
前世で1人回転寿司や1人遊園地を制覇した私にとって、1人舞踏会は屁でもないが仲の良い見目麗しい2人に誘われてしまうとどうも断れない。
「え、えー、でも迷惑じゃない?」
「そんな事ないよ、なんなら迎えにいくし、ねえノア?」
「そうだな、迎えにいくからペアとして着飾っとけよ?」
「勝手にペアにしないで、そんなこと言うと超貴婦人並みに派手に着飾っちゃおうかな!」
「「香水臭そう」」
「ひどいん……」
そんなたわいもない会話をしながら私が送り迎えされることが決定し、ノアとペアで舞踏会に参加することになった。