ちびっこ、くのいちトリオの怪しいお食事会
ここはくのいち学校──
お昼ご飯の時間になり、ろく、なな、はちの三人は、食堂へとやって来ました。
しかし、食堂のおばさんは忙しそうにしていて、いつものように、ろく、なな、はち達と一緒に過ごしてくれないことが寂しいようです。
「おばしゃん、『いしょがちい』っていってまちゅ」
「こねこねしてるでしゅ」
「くるくるしてましゅ」
三人の会話が、おばさんの耳に届いてあることを思いつきました。
(ふふっ、ちょっと意地悪しちゃおうかしら?)
食堂のおばさんが、何やら思いついたようです。
そして、三人の様子を、ななちゃんのお姉ちゃんで、くのいち学校の先生でもあるかなちゃんに見てもらおうと……。
「節さん。こっそりかなちゃんを食堂へ呼んできてくれる?」
もう一人の食堂担当の節さんは、こっそり抜け出すと、かなちゃんを呼びに向かいました。
しばらくして、そっと戻ってきた節さんの後ろに、隠れるように入って来たかなちゃん。おばさんがふたりに目配せをしました。
忍者食の「兵糧丸」をみんなに知ってもらおうと、食堂のおばさんが先生達と考えて、食事の時に食べてもらおうと作ったものです。
それを、食欲旺盛なこの子達に食べさせて反応を見てみようと、おばさんのいたずら心が止まらなかったのでした。
忍者食である兵糧丸は、高栄養の物をすりつぶして、にぎっただけのものなので味は美味しくないのです。栄養面だけを考えた忍者食なのです。
出来上がった兵糧丸をみっつお皿の上にのせ、食卓ではなく低い台の上にのせました。
ななちゃんを先頭に、はちちゃん、ろくちゃんと続きます。
そして、お皿の上にのった見たこともない物に興味津々な様子。
その様子を調理室から覗いている食堂のおばさんが、予想していた通りの展開をしているのが楽しくて、くすくすと笑っています。
「おいちいの、においちないでちゅ」
ななちゃんの言葉に、はちちゃんとろくちゃんがうなずきます。そして輪っかになりしゃがみこんで会議が始まりました。
「なにでしゅ?」
「こわいのことでちゅ!」
見たこともない忍者食の兵糧丸を怪しい眼差しで見つめる三人の様子に笑いが止まらなくなったおばさんは……。
「兵糧丸という忍者食だよ。食べてごらん」
と伝えました。
「いたらきまちゅ」
お手手を合わせ、いただきますをして兵糧丸を恐る恐る小さなお口で食べる、ろくちゃん。大きなお口で食べる好奇心旺盛な、ななちゃんとはちちゃん。
「!?」
「おいちぃのあじ、ちないでちゅ」
三人のお口は止まってしまいました。飲み込むことができず、怖いお顔になっている三人にかなちゃんが……。
「ぺっしても良いよ」
声をかけてあげました。でも大好きな食堂のおばさんが作った食べ物を粗末にすることができない、ろくちゃんは瞳に涙を溜めながら、ごっくんと飲み込みました。
「ごめんくだちゃい」
ななちゃんは、謝りながらかなちゃんに手伝ってもらって、ぺってしました。はちちゃんは、お水をもらって頑張ってごっくんしました。
三人は、輪っかになってしゃがみ込むと……。
「あやちぃ、おだんごしゃんでちゅ」
「もう、たべないでしゅ」
「こわいのことでしゅ」
三人は兵糧丸を、怪しい食べ物として認識したようです──
家紋 武範さま、素敵な企画に参加の許可をくださり、ありがとうございました。